現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は、2021年度に検討したアニソール結晶の光熱効果で誘起される固有振動について、結晶の形状との関係を調べた。その結果、200-700 Hzで2-4°の共振固有振動が見られ、長く薄い結晶は大きく屈曲し、短く厚い結晶は高速で屈曲するという関係を見出した。このうち702 Hzで固有振動する結晶について、固有振動数の奇数分の1の周波数のパルス光を照射しても共振による屈曲の増幅が生じることがわかった。これらの共振固有振動について屈曲時の先端変位速度とエネルギー変換効率(光→運動)を算出したところ、既報のメカニカル結晶の中で最も高速(~0.6 m/s)かつ高エネルギー変換効率(~0.1 %)であることがわかった。本研究成果はハイインパクトジャーナルのNature Communicationsに掲載された(Nat. Commun., 2023, 14, 1354)。 次にメカニカル結晶のソフトロボットへの応用を目指して、2022年8月31日から2022年12月21日までの間、ドイツのマックス・プランク研究所のソフトロボットの世界的権威であるMetin Sitti教授グループにて研究滞在し、共同研究を実施した。当研究グループで紫外光による光熱屈曲を報告しているサリチリデンアニリン結晶(Mater. Adv., 2022, 3, 7098-7106)に、幅広い波長の光で光熱効果が生じる炭化チタン(ACS Nano, 2017, 11, 3752-3759)をコーティングした。その結果、紫外光(365 nm)だけでなく、可視光(455, 660 nm)や近赤外光(810 nm)で屈曲する結晶アクチュエータの開発に成功した。波長ごとの光熱変換効率と吸光度を考慮して熱伝導に基づく屈曲シミュレーションを行うことで、照射波長による屈曲挙動の違いを明らかにできた。
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