研究課題/領域番号 |
22KJ2915
|
補助金の研究課題番号 |
22J10298 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
赤穗 龍一郎 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | ニュートリノ / 原始中性子星 / 超新星爆発 |
研究開始時の研究の概要 |
ブラックホールは大質量星などの重力崩壊後に形成されると考えられているが、複雑さゆえその過程には多くの不明点が残されている。また、地球で実現不可能な超高エネルギー環境であるため極限物理のプローブとしても興味深い。 ブラックホール形成ダイナミクスはニュートリノによって支配されており、理論モデルの構築にも当然不可欠である。しかし現状、近似的なニュートリノ輸送法が広く用いられている。そしてその結果同士が食い違うことも少なくなく、理論モデルの不定性の一因となっている。一方、本研究ではボルツマン方程式を直接解く輸送計算を行い、ブラックホール形成ダイナミクスの正確な理解、及び観測シグナルの予測を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究の目標は一般相対論的ボルツマン輻射流体コードを開発し、大質量星の重力崩壊からコンパクト天体に至る過程を理解することである。2022年度には、重力崩壊後に形成される原始中性子星に関して2つの観点から研究を行なった。 一つ目は、原始中性子星の対流である。原始中性子星の後期進化計算は一次元球対称を課した先行研究が数多いが、実際には対流などの多次元効果が重要である。コアバウンス後2秒の原始中性子星に関して空間二次元でシミュレーションを行った。エントロピー勾配が正であってもレプトン数勾配が負であることにより対流が発生することが示された。さらに対流によって高温物質が浚渫されニュートリノ球における温度が上昇するため、ニュートリノ光度・エネルギーを上昇させることが判明した。 二つ目は、原始中性子星への質量降着がニュートリノ放射へ及ぼす影響である。原始中性子星の後期進化計算に関する先行研究では質量降着が無視されてきていたが、実際には質量降着が発生することが見込まれる。本研究では冷却後期の原始中性子星へ質量降着をパラメトリックに与えてシミュレーションを行った。現実的な値の質量降着でも、原始中性子星の後期熱的放射によるエネルギー光度・エネルギーを大幅に上回りうることが判明した。また、熱的放射の場合と異なり重レプトン型ニュートリノの光度が低いため、その観測によってニュートリノ質量階層性へ強い制限を与えられる可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原始中性子星対流計算の結果は国際論文誌に掲載された。質量降着によるニュートリノ放出の結果は論文にまとめ、国際論文誌に投稿して現在査読中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は重力崩壊の段階からシミュレーションを行い、超新星爆発およびその後のコンパクト天体形成まで首尾一貫した計算を行う。数値計算コードについては準備が完了しており、年度初期すぐに計算開始可能である。 空間二次元を仮定して計算を行い、超新星ダイナミクスの解析、および形成したコンパクト天体がブラックホールか中性子星であるか、そしてその質量、などを調べる。また、得られたニュートリノ運動量空間分布からニュートリノ集団振動の発生の有無を調査し、共同研究者とともにその漸近的な振る舞いを量子運動論的に予測する。
|