研究課題/領域番号 |
22KJ2954
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補助金の研究課題番号 |
22J21564 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤井 愛実 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 超音速・極超音速インテーク / バズ / 衝撃波 / モデル構築 / インテーク / ラムジェット / スクラムジェット / モデル化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,極超音速航空機用ジェットエンジンの空気取り組み口(インテーク)に着目した研究を行う.インテーク周りの流れは,衝撃波/境界層干渉により流れが複雑である上,飛行速度や機体の姿勢によってインテーク性能が著しく変化する.しかし,あらゆる飛行条件を想定して実験や数値解析を行うことはコスト的に不可能である.そこで本研究では,最小限の実験/解析データからインテーク性能を評価する数理モデルの構築を目指す.さらに,インテークで起こるバズ現象について,そのメカニズムを解明する.
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研究実績の概要 |
本研究は,少ないCFD解析結果から超音速/極超音速エンジンの空気取り込み口(インテーク)の性能を予測する,インテーク性能評価モデルを構築することを目的としている.本年度はバズと呼ばれる衝撃波の自励振動現象に着目した. インテークの背圧上昇はエンジンの推力向上をもたらすが,過度にインテーク背圧を上昇させるとバズが発生することが知られている.バズはエンジン内部に激しい圧力振動を発生させるため,バズが発生するとエンジン/機体の破損を招く恐れがある.そのため,安全な極超音速エンジンの実現のためには,破損防止のため,バズの周波数や静圧波形を把握したうえでエンジンを設計することが重要である.そこで今年度は,バズ1周期のうち特に静圧上昇期間に着目して,非定常CFD解析を必要としないバズの静圧波形予測モデルの構築に取り組んだ. まず,昨年度行った研究の結果を踏まえ,静圧上昇期間の前半に対して移動衝撃波の支配方程式,後半に対して質量保存則を実際に適用し,インテーク背圧の時間変化を推算した.その結果,CFD解析結果と静圧波形が良く一致したことから,これら2つの理論を適用することで,①静圧上昇期間における,物理メカニズムに基づく静圧波形予測モデルを構築できた. 続いて,本モデルへの入力値のモデル化に取り組んだ.具体的には,②エネルギー保存則をインテーク全体へ適用することによる,インテーク内部の平均静温の時間変化の予測モデル,および,③定常作動状態における最大静圧分布から,静圧上昇期間の最大静圧分布を予測するモデルの2つを構築し,CFD解析結果との比較により妥当性と汎用性を確認した. これらの成果を,国際学会1回および国内学会3回において報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題により,バズ1周期のうち特に静圧上昇期間では,その前半と後半で,移動衝撃波の支配方程式と質量保存則という異なるメカニズムによりインテーク背圧波形が決定されていることが示唆された.そこで,これら2つの理論を実際に適用し,静圧上昇期間の背圧波形を予測するモデルを構築したところ,モデル出力の背圧波形がCFD解析結果とよく一致した.そのため,現象がこれら2つのメカニズムによって支配されていることを証明できた. さらに,本モデルへ入力として与える必要のある,インテーク内部の平均静温の時間変化の予測手法も検討した.その結果,インテーク内部の運動エネルギーは内部エネルギーと比較して十分に小さく,エネルギー保存則をインテーク全体へ適用することによりインテーク内部の平均静温の時間変化を予測できることを明らかにし,平均静温予測モデルを構築した. また,静圧上昇期間における最大静圧分布の予測モデルの構築も行った.本項目では,静圧上昇期間におけるインテーク内部の物理量の分布を定常作動状態と比較し,現象の非定常性が及ぼす影響を調査した.その結果,密度分布および全温分布には現象の非定常性の影響が強く出る一方で,静圧上昇期間後半の静圧分布は定常作動状態とおおむね一致することが分かった.そこでこの特性を利用することで,静圧上昇期間における最大静圧分布を,定常作動状態における最大静圧分布から予測する手法を構築し,妥当性を確認した. 以上の内容から,達成度はおおむね順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,バズ1周期のうち静圧上昇期間は,前半と後半で衝撃波の移動メカニズムが異なることを明らかにした.そこで最終年度はまず,メカニズムの変化が生じる要因を検討する.具体的には,定常作動状態における背圧変化に伴う衝撃波の移動と,静圧上昇期間における時間変化に伴う衝撃波の移動を比較する.これにより,メカニズム変化の要因を明確にし,本研究で構築している,2つの現象メカニズムに基づいた静圧波形予測モデルの適用範囲を示す. さらに,本研究の結果,静圧上昇期間後半の静圧分布は定常作動状態と概ね一致する一方で,全温分布および密度分布は,現象の非定常性の影響により定常作動状態と一致しないことが明らかになっている.そこで最終年度では,静圧上昇期間後半の密度分布に対して現象の非定常性が与える影響を,インテーク内部の流量バランスと流速の観点から考察を行う.これにより,静圧上昇期間後半における密度分布の変化のメカニズムを明らかにする. さらに,静圧低下期間に関するモデル化手法を検討する.具体的には,先行研究で提案されているヘルムホルツの共鳴器の周波数モデルの適用や,インテークスロート/ノズルスロートにおけるチョーク流量を利用した流量バランスによるモデル化を試みる. 以上により,バズのメカニズム解明を進めるとともに,少ないCFD解析結果からバズの周波数や静圧波形を再現できるバズモデルを構築する. 本課題で得られた成果を論文や学会にて発表するとともに,博士学位論文にまとめる.
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