研究課題/領域番号 |
22KJ2956
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補助金の研究課題番号 |
22J22076 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
秋元 瑞穂 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 睡眠 / 寝室 / 室内環境 / 温熱環境 / 換気 / 二酸化炭素 / 湿度 / 着衣熱抵抗 / 寝室内環境 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、睡眠の質の低下は免疫力や日中の知的生産性に悪影響を及ぼすことが報告されており、良質な睡眠の確保は現代社会を生きる人々にとって非常に重要である。しかし、寝室内環境が睡眠に与える影響を総合的に評価した研究は少なく、未だ普遍的な結論が出ていない。 本研究の目的は、就寝時の人体を取り巻く様々な環境要素に対して、睡眠の質および翌日の知的生産性に与える影響を明らかにすることである。オンラインアンケート調査および自宅寝室内実測調査により個人の睡眠環境が睡眠の質に与える影響に関して明らかにし、得られた知見をもとに睡眠の質の予測に特化したモデルの開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、就寝時の人体を取り巻く様々な環境要素に対して、睡眠の質および翌日の知的生産性に与える影響を明らかにすることである。当該年度において研究遂行を目的とした海外渡航を行い、デンマークにおける睡眠実測調査およびアンケート調査の分析に取り組んだ。 睡眠実測に関して、低湿度環境が睡眠の質に与える影響を把握することを目的として、睡眠に関する被験者実験を実施した。規則的な睡眠習慣をもつ健康な大学生男女12名を対象に、人工気候室にて三晩の睡眠測定を依頼した。実験参加者には普段通りの生活を送ってもらい、相対湿度40%RHの標準条件、10%RHの低湿度条件下で睡眠させた。初夜は全員共通で標準条件とし、残る二夜の条件の順番はランダムとした。また、普段の睡眠環境と比較する目的で自宅でも二晩の睡眠測定を依頼した。得られた知見を基に査読付きのジャーナル投稿に向けて論文執筆を進めている。アンケート調査に関して、COVID-19のパンデミック前後の行動変容が睡眠習慣および睡眠の質に与えた影響を把握する目的で、渡航先であるデンマーク首都圏の住民を対象に実施されたオンラインアンケート調査の分析を行った。 さらに、当初計画していた実測・分析に加えて、臥位人体における姿勢および寝具の組み合わせが着衣熱抵抗(保温性)に与える影響を調査する目的で、人体形状をした発熱体であるサーマルマネキンを用いた実測を行った。サーマルマネキンは衣服の熱抵抗測定のために作られたものであり、人間の着衣状態における衣服の温熱特性を再現させるためのダミーである。寝姿勢、使用する着衣や寝具の組み合わせを変えて、裸体時および寝具使用時の総合熱伝達率・着衣熱抵抗を算出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における実測調査およびアンケート調査は、地域差を考慮して高温多湿な地域(日本)と年間を通して乾燥している地域(デンマーク)の2つの気候帯で実施し、比較分析を行うことが当初より計画されていた。当該年度において、デンマークにおける睡眠実測およびアンケート調査の分析に取り組み、研究を遂行した。また、前年度に取り組んだ日本の自宅寝室内睡眠実測に関して、就寝時における寝室の窓およびドアの開閉状況が寝室内環境に与える影響について分析を進め、関連する国際会議にて口頭発表を行った。 さらに、前年度から継続して、寝室内環境が睡眠に与える影響について文献調査・研究課題の整理を進め、特に寝室内換気と睡眠に関する文献サマリーの作成を行った。寝室内換気および睡眠の質の実測調査を報告する先行研究について文献レビューを行い、サマリーとして睡眠の質に悪影響を及ぼす可能性がある二酸化炭素濃度範囲を可視化した。 現在に至るまで、寝室内環境が睡眠に与える影響に着目し、オンラインアンケート調査を用いた行動変容と睡眠に関する分析、自宅寝室における睡眠実測、人工気候室を用いた睡眠実測、サーマルマネキンを用いた寝具着衣熱抵抗の実測という複数の異なる手法を用いて多角的に研究課題について取り組んできた。睡眠モデル開発の一助となる測定・データベースの作成が達成できたといえる。以上の理由から、本研究課題の進捗状況についておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目的は、個人の睡眠環境が睡眠の質に与える影響を明らかにし、得られた知見をもとに睡眠の質の予測に特化したモデルを開発することである。これまでの研究では、寝室内環境のうち特に温熱環境が睡眠に及ぼす影響について実験、考察を行った。当初予定していた寝室内の温熱環境・音環境・光環境・空気質を総合的に評価する指標の提案については、その測定・導出過程に課題が山積しており、方法論から個別に検討する必要があり、設計手法の確立を目指す本研究の目的から逸れてしまう。そのため、本研究においては寝室の温熱環境や人体からの吸放熱、寝具の保温性能によって構築される寝床内環境が睡眠の質に与える影響を定量化することに主眼を置くこととする。また、近年、寝室内換気が睡眠に与える影響に注目が集まりつつあるが、住まいの地域や換気方式によっては騒音の増加や熱的快適性を阻害する可能性があることが報告されている。寝室内環境の適切な空調制御・運用のためには、寝室内換気と温熱環境は同時に評価する必要があるといえる。 2024年度は個人の睡眠環境が睡眠の質に与える影響を明らかにし、得られた知見をもとに睡眠の質の予測に特化したモデルの開発を行うために、実測調査に加えてサーマルマネキンを使用した実験結果の分析を行う予定である。人体からの発熱や人体形状を考慮した体感温度の指標である「サーマルマネキンによる等価温度」を用いた分析を進めている。最終的に、人体熱負荷の詳細な導出を行うことで、個人の睡眠の質の予測につながるモデル開発の一助とする。
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