研究課題/領域番号 |
22KJ2962
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補助金の研究課題番号 |
22J40193 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
菅原 通代 早稲田大学, 文学学術院, 次席研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 強化学習モデル / 計算論モデリング / 選好 / 固執性 / 期待 / 学習 / リッキング |
研究開始時の研究の概要 |
手に入りづらい対象をより好むという現象は、ヒトだけでなくハトやラットでも報告されている。しかし、この現象がどのような心理学的機構に由来するかについて、これまで一貫した答えは得られていない。Brehm(1956)は、選択することで対象への好みが変化するという現象を捉えた。この選択依存的な好みの変化を説明する仮説として、選択に伴う期待自体が肯定的な情動価を持ち(期待の効用)、選択の結果とは無関係に対象をより選好させるという考えがある。本研究課題では、期待依存的な学習機構こそ「手に入らないものを好きになる」という現象の心理学的機序であると考え、その心理・行動メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は、同一個体におけるモデルパラメータの継時的な安定性および変動性を検証した。 4匹のWistar/ST(17週)雄ラットを用いて、1日500試行を1セッションとした課題を40日間実施した。4匹中3匹は典型的な学習曲線を示したため、3個体について強化学習モデルを用いて解析を行った。各個体でパラメータに変動があるか確認するため、パラメータが40セッション(約20000試行)を通じて共通だと仮定するモデル(fixed effect model)と、1セッション(500試行)毎に異なると仮定するモデル(random effect model)を設定し、尤度比検定を行った。結果として、全ての個体でrandom effect modelの説明力が高く、パラメータに変動性があることが示された。 次に、6つのパラメータのうち、どのパラメータに変動性があるか検討するため、1つのパラメータのみが1セッション毎に異なると仮定するモデル(partial effect model)を、6つのパラメータそれぞれで設定し、尤度比検定を行った。3個体に共通して、正と負の学習率(α+,α-)および減衰率(τ)を変動させるpartial effect modelの説明力はfixed effect modelに比べて有意に高いが、他のパラメータを変動させても説明力は上がらなかった。正と負の学習率と減衰率はいずれも価値更新時の経験への重みを調整するパラメータである一方、逆温度と固執性は行動選択時の価値への重みである。したがって、更新時の重みは個体内の学習進度に依存し、選択時の重みは学習進度に依存しない個体特性であることが示唆される。 本研究の成果は、申請者がこれまでヒトを対象に重要視してきた固執性というパラメータが、個体差を説明する上で重要な時間的安定性を持つことを立証する重要な知見であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請課題で当初計画していた、古典的条件づけによる選好変化を示すことができなかった。古典的条件づけの学習効果自体が、リッキングという指標に反映されなかったため、期待依存的な価値を評価する実験系としては不十分であると判断した。そこで、強化学習課題をベースに期待による価値上昇を評価する実験系へと変更するため、強化学習課題を実施可能なオペラントボックスを製作し、モデル研究において重要となるパラメータの継時的変動性を明らかにすることに従事した。 その後、実験室の改修工事や想定外のトラブル等の状況から受入研究室での実験遂行が困難になったため、当初の計画を変更してヒトを対象とするオンライン実験も並行して実施する方針を考えている。これらの状況から、「やや遅れている」という自己評価を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
受入研究室での動物実験遂行が困難であるため、今後はヒトを対象としたオンライン実験に切り替えて本研究課題の仮説を立証する方針へ変更する計画である。今後は、過去に申請者が作成したアバター選択課題を改良し、期待を増減する操作を実験的に組み込むことで、「手に入らないものを好きになる」心理機構の検証を行う予定である。また、「手に入らないものを好きになる」現象が、対人場面に特異的かどうか、複合的報酬から単一的な金銭報酬に変更した場合にも起こりうるか、刺激をアバターから無意味なものに変更しても起こりうるかを明らかにし、今後の展開に繋げていきたいと考えている。 本申請課題に含まれる神経薬理学的研究は、ヒトを対象として実施するのが困難であるため、作成したオペラントボックスを動物実験が可能な共同研究先へ移動し、オンライン実験と並行して神経薬理実験を目指して実験の準備を進めている。
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