研究課題/領域番号 |
22KJ2975
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補助金の研究課題番号 |
22J01638 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 公益財団法人日本モンキーセンター (2023) 中部大学 (2022) |
研究代表者 |
豊田 有 公益財団法人日本モンキーセンター, 学術部, 特別研究員(CPD) (30838165)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 霊長類額 / 社会生態学 / 社会交渉 / 霊長類学 / ベニガオザル / 繁殖生態 |
研究開始時の研究の概要 |
ベニガオザルの集団社会において、アカンボウは和解行動やケンカ仲裁など社会の円滑化をもたらす役割を担うなど、オトナ間の関係における「鎹」として機能している。そこで本研究は、ベニガオザルのアカンボウが白い毛色で産まれてくる進化的基盤を解明するため、「子は鎹(かすがい)」仮説を行動観察、生理学実験および野外認知実験によって検証する。そこで本研究では、 乳児特有の白い毛が視覚シグナルとして他個体の行動・内分泌系に作用するかどうかや、 他個体の緊張状態やストレスの緩和、攻撃性の抑制といった機能を果たすかどうか、といった課題を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ベニガオザルの乳児が白い毛色で産まれてくる進化的基盤を解明するため、「子は鎹(かすがい)」仮説を検証する。この仮説は、ベニガオザルの集団社会において、乳児特有の白い毛がシグナルとして他個体の行動・内分泌系に作用し、他個体の緊張状態やストレスの緩和、攻撃性の抑制、ケンカ仲裁・社会の円滑化をもたらす挨拶行動の仲介役としての役割を担い、オトナ間の関係における「鎹」として機能する結果、社会が寛容化し、副次的に乳児の生存率が高まることによって白い毛という非適応的形質の進化が促されたとする仮説である。 当該年度は、野外調査による行動データの収集を実施した。個体識別情報を随時アップデートしながら、集団内に存在するメスの数や赤ん坊の出産の記録の蓄積段階である。また、難航している認知課題に代わって、赤ん坊の社会的役割に関する別視点での研究を構想し、現在カメラトラップとマイクロフォンアレイを用いた研究の予備データ収集を行なっている。 これらの研究に加え、調査中に観察される稀な行動に関する知見も集積し、随時論文化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は4月10日から主要渡航を開始し、タイ王国での本格的な研究活動を開始した。野外調査のうち、個体識別の再整理から、群れの個体数の把握、遊動域の記録、行動データの収集等については、当初の予定通りに進行中である。一方で、タイ当局から得られる予定であった調査許可の発行が大幅に遅れた影響で、野外調査のうち、生物由来試料を採取することについては開始が遅れたことにより、ホルモン分析作業は遅れている。また、野外認知実験に関しても、当初購入を予定していた業者からの連絡が途絶えているため、代替案を考えなければならない。現在、野外認知実験については、既製品の購入を断念し、自前の装置開発に移行している。加えて、野外認知実験と同様の課題を解決できるような他のデータ収集手法(マイクロホンアレイやカメラトラップを用いた代替案)にも取り組み、予備的なデータの収集を実施しているところである。 成果としては、当該年度内の出版は叶わなかったが、本報告書作成日時点で受理の通達が届いている。ほか、和文論文は2編、著書1件(共著)、国際学会発表1件、国内学会発表3件のほか、国際シンポジウムでの招待講演1件、国際セミナーでの招待講演1件、一般講演が3件、寄稿・出版物が6件の成果があり、全体的には「概ね順調」であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して長期調査を実施し、特に赤ん坊の社会交渉に関するデータの蓄積を進める。また、糞サンプルなどの生体由来試料の収集にも着手し、ホルモン分析の予備分析まで進めたい。本研究とは別に、現在調査地で顕在化し始めている、調査地周辺の農地への猿害問題への対処が求められている。この問題は、調査地のサル達の長期的なマネジメントという保全のみならず、調査地の研究拠点としての持続可能性に関わる深刻な問題であり、調査によって得られるデータの質に大きく影響を与える問題でもあるので、本研究と並行して取り組んでいく予定である。
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