研究課題/領域番号 |
22KJ2980
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補助金の研究課題番号 |
22J00864 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
森 智基 名城大学, 農学(系), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ツキノワグマ / 軋轢 / GPS首輪 / バイオロギング / 食性 / 集落利用 / 採食戦略 / 個体レベル |
研究開始時の研究の概要 |
近年、ツキノワグマの市街地への棲息域の侵入・拡大が国際的な問題となっている。クマは、時に重篤な人身事故が発生するため、クマ類との共存が問われている。 本研究では、バイオロギング技術と野外での内分泌学的手法を組み合わせ、集落を利用する個体の特徴を警戒心の強さ、性や齢などの属性、採食戦略、栄養状態から明らかにする。また、それらがエサ資源量によって受ける影響を明らかとすることを目的とする。こうして得た知見をもとに、警戒心が低い問題グマをのみを選択的に駆除し、警戒心の高いクマを個体群内に浸透させる新たな個体レベルでのクマの個体群管理手法を提案することを最終目的とする。
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研究実績の概要 |
近年、ツキノワグマをはじめとする大型野生動物の市街地への棲息域の侵入・拡大が国際的な問題となっている。本研究は、バイオロギング技術と野外での内分泌学的手法を組み合わせ、集落を利用するツキノワグマの特徴を警戒心の強さ、性や齢などの属性、採食戦略、栄養状態から明らかにすることを目的としている。 昨年度に引き続き、長野県上伊那地域において計8頭のツキノワグマにGPS首輪を装着し、追跡個体の行動調査と糞収集を行った。GPS首輪によって得られた追跡個体の位置情報と糞内容物をもとに、集落近辺を利用するツキノワグマの属性ごと(性・体重・齢)の食性の特徴について解析をおこなった。これらの成果を国際誌に投稿しており、今年度中には出版される見込みである。さらに、集落を利用するクマと利用しないクマ(山中で活動するクマ)での滞在点の調査から、集落近辺を利用すると利用しないクマはいずれも人間の活動を避けて植生のカバーが濃い場所を利用することを明らかとした。 捕獲時の栄養状態(Body condition index)による違いからは、集落を利用しているクマと利用していないクマとで明確な栄養状態に違いは見られなかった。ただし、集落を利用しているクマのなかで農作物を利用している個体は、それ以外の個体と比較して栄養状態が良好であることが示された。これは、集落近辺を利用する個体のなかには、農作物や人間由来の食料を主な食物源としているクマが存在し、これらの食物源が高い栄養価を提供していることが示唆される。また、集落において農作物に依存している個体はオスが多く、また体サイズ(体重) が大きいことが明らかとなった。一方で、集落を利用している個体のなかで栄養状態が良好でない個体は農作物を利用しておらず、これらの個体は集落周辺になる自然由来の食物や、採食以外の要因が集落利用に関連している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、長野県上伊那地域で8頭のツキノワグマにGPS首輪を装着し、追跡個体の行動調査と糞の収集を行った。GPSデータと糞内容物の分析から、集落近辺を利用するツキノワグマの個々の食性の特徴を解析した。GPS首輪によって得られた追跡個体の位置情報と糞内容物をもとに、集落近辺を利用するツキノワグマの属性ごと(性・体重・齢)の食性の特徴について解析をおこなった。これらの成果を国際誌に投稿しており、今年度中には出版される見込みである。 集落を利用するクマとそうでないクマの行動を比較した結果、両グループともに人間の活動を避け、植生の濃い場所を選好していることが確認された。このことから、集落近辺と山中のクマ間で人間に対する警戒心に顕著な差がないことが示された。また、クマの警戒心に性別による差がないことも明らかになった。 捕獲時の栄養状態(Body condition index)を分析した結果、集落を利用しているクマとそうでないクマ間での栄養状態に大きな差は見られなかったが、農作物を利用しているクマは他のクマよりも栄養状態が良いことが判明した。これは集落近辺を利用するクマの中には、農作物や人間由来の食物を主食としている個体がおり、これらが高い栄養価を提供していることを示している。また、農作物に依存するクマは主にオスであり、体サイズが大きい傾向にあることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、糞中ホルモン分析などの内分泌的視点から、集落近辺でのクマの警戒心について定量化を進める予定である。その上で、これまでに得られたデータを統合的に分析し、集落を利用する傾向が強い(人間との軋轢を引き起こすおそれのある)個体の特徴を明らかにする。
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