研究課題/領域番号 |
22KJ3022
|
補助金の研究課題番号 |
22J01026 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
西尾 善太 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | フィリピン / マニラ / 都市 / インフラ / 公共性 / ギグワーカー / インフォーマル性 / 東南アジア労働者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フィリピン・マニラ首都圏においてコロナ禍を経て急増した配車アプリやフードデリバリーの労働者を対象として、かれらの社会的かつ政治的なアソシエーションの実態を明らかにする。こうした労働者は、デジタル・プラットフォーム上の管理と非雇用者として非常に脆弱な立場に置かれながらも、インフォーマルにSNS上でかれらの扶助や情報共有のアソシエーションを形成している。従来の交通機関に関する研究とあわせ、こうした新しい労働形態に基礎づけられた人びとがいかに多種のアソシエーションをうみ出し、その連鎖から生じる開かれた公共性を生成しているのかを解明する。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、通勤者やジープニーセクターの連帯とネットワークについての調査を集中して実施し、8月と3月にそれぞれ三週間程度のフィールドワークを行なった。そのため、研究課題の達成に向けて着実に進んでいるといえる。 8月と3月のフィールド調査の内容を概観すると、前者ではコロナ禍でのジープニーセクター内部の再編についてインタビューを実施、後者では通勤者などの多様なアクター間での連帯についてのインタビューを行った。この二つのフィールドワークによって草の根の公共性がコロナ禍によるジープニーセクターの内的な変化と、通勤者の経験が交差するなかで生じてきたことが明らかとなった。とりわけ、150以上の団体での連帯が設立した経緯を聞くことで、通勤者が政治的アクターへと変化しながら、ジープニーの廃止と近代化に対して共鳴と連帯を示した背景を理解することができた。パンデミックにより政府は全ての公共交通機関を停止する措置を行い、通勤者とジープニーセクターは共に甚大な影響を被った。これまでジープニーのストライキは通勤者にとって不便を強いるため、両者は敵対関係と位置付けられてきた。しかし、政府の近代化事業が新型車両へと刷新する場合、運賃の大幅な上昇などが予想されており、MoveAsOneの創設メンバーの一人は「私たちは同じ船に乗っている」と状況を説明した。このような連帯は、通勤者とジープニーセクターが政府の提供する「近代化」に共に抗しながら、自分たちの望むインフラをつくりだそうとする可能性を切り開いている。本研究の課題である「草の根の公共性」とは、従来であれば別様なセクターとして分離されてきた組織や集団間の連帯を解き明かすことにあった。そのため、コロナ禍で生じた新たな政治的アクターである通勤者、そして通勤者によるジープニーセクターとの共闘は、この課題を検討する上で重要な事例を提供しているといえるだろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、フィリピンにおいて2回のフィールド調査を実施し、新型コロナ禍でのジープニーセクターの再編や、ジープニーセクターと通勤者との連帯の可能性を明らかにし、順調に研究をおこなっている。これらの成果は、投稿論文として結果を待っている状況にある。 また、シンガポール国立大学社会学部教授で世界的に著名な社会理論家、サイエド・ファリード・アラタスへのインタビュー記事を公刊し、ブックレビューを海外学術誌するなど、研究成果を公刊しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、これまでの研究成果を整理し、出版物として公開する予定である。調査としては、1ヶ月程度のフィールドワークを予定しており、その内容も英語論文として投稿する。 また、2024年11月にフロリダ州で開催予定のAmrican Anthropological Associationに参加し、研究成果の公表に努めると共に、学際的なネットワークの構築に尽力する。
|