研究課題/領域番号 |
22KJ3033
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補助金の研究課題番号 |
22J23062 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
吉岡 大祐 立命館大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 半導体ナノ結晶 / 配位子 / 時間分解分光 / 電子移動 / ペリレンビスイミド / 電荷分離 / 過渡吸収 / 配位子脱離 |
研究開始時の研究の概要 |
有機分子の高励起状態は高い還元力を有しており、可視、近赤外光の照射や低電圧の印加によって容易に生成することができるため様々な分野で注目を浴びている。しかし、このように作り出された有機分子の高励起状態の寿命は極めて短く、触媒反応などの分子間反応に用いるには効率的ではない。本研究では、高励起状態の電子を無機ナノ結晶によって効率的に取り出し長寿命化することを目指す。また、抽出した電子を積極的に用いるための材料設計を検討し、一般的な分子系へと拡張する。
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研究実績の概要 |
本年度では研究課題を達成にするにあたり、半導体である硫化亜鉛のナノ結晶(ZnS NCs)と機能性有機分子であるペリレンビスイミド(PBI)間の電子移動過程の詳細な解明に取り組んだ。ZnS NCsとPBIの複合材料において、フェムト秒から数秒に渡るまでの幅広い時間分解分光測定(過渡吸収スペクトル、過渡共鳴ラマンスペクトル)と量子化学計算を組み合わせることで、光照射時に起こる特有の配位子脱離反応を見出し国際ジャーナルとしてまとめるに至った。また、この研究からPBIは光励起による脱離を起こしたのちにナノ結晶表面で会合体を形成していることが示唆されている。このようなPBIの脱離、表面での会合過程を踏まえることで、超短パルスレーザーを使用した段階的二光子吸収過程により生成したPBIの高励起状態から半導体ナノ結晶への電子移動過程を時間分解分光法を用いて詳細に解析した。その結果、会合体の形成前後どちらの場合においても高励起状態からの電子移動が起こることがわかり、半導体ナノ結晶中で最大のバンドギャップを有する硫化亜鉛ナノ結晶への電子注入に成功した。段階的二光子吸収過程では波長の異なる二つのパルス光を励起光に用いており、その励起光の間に幾分かの遅延時間を設けて測定を行うが、現状の設備で設定できない時間領域の測定を海外の研究者と協力して行っており、現在協議中である。さらに、これに関連してナノ結晶の形状に異方性を持たせたナノロッドや、バンド構造の異なるコアシェル型のナノ結晶を用いたところ光誘起配位子脱離反応の効率が大幅に上昇することを見出し、増大機構の詳細について現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体ナノ結晶に配位した機能性有機分子であるペリレンビスイミドが、光照射によって脱離することを見出しただけでなく、半導体ナノ結晶の構造をコアシェル型に変えることにより脱離効率が大幅に上昇することが検証段階であるがわかった。この成果は、昨年度計画していた、光誘起配位子脱離反応を用いた光触媒やリソグラフィー材料への応用に大きく貢献できると考えられる。また、ペリレンビスイミドの高励起状態から半導体の中で最も大きなバンドギャップを有する硫化亜鉛ナノ結晶への電子注入に成功し、さらにペリレンビスイミドの光誘起配位子脱離反応を踏まえたうえでその電子移動過程を分光学的に解析することができた。これらの知見は、有機分子と無機分子からなる複合材料における励起状態、高励起状態での電子的な相互作用を理解する上で重要な知見であると考えられる。そのためおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現状、超短パルスレーザーを用いた段階的二光子吸収過程によって光機能性有機分子の高励起状態から半導体中で最も高い伝導帯準位を有する硫化亜鉛への電子注入に成功している。今後はさらに高い伝導帯準位を有する酸化ジルコニウムや酸化ハフニウムなどの絶縁体材料への電子注入を目指し、より高励起状態の電子の挙動を解析および制御することを目指す。また、無機ナノ結晶と機能性有機分子間の光照射時における結合変化の挙動はこれらの物質間での電子移動過程にとって非常に重要な知見であると考えており、今後はさらに詳しく解析するべく、半導体ナノ結晶や有機分子の骨格を変えたものを合成する。具体的には、光誘起配位子脱離反応効率が増大したコアシェル構造に変更した材料や、有機分子と無機ナノ結晶間での結合の強さに関連する置換基を現状のカルボキシ基からアミノ基やチオール基などに変更することで比較検討を行うことを考えている。
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