研究課題/領域番号 |
22KJ3070
|
補助金の研究課題番号 |
22J22198 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
神谷 祥之介 福岡大学, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2024年度: 200千円 (直接経費: 200千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2022年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
|
キーワード | 音変化 / 鹿児島方言 / 音声産出 / 音声知覚 / 促音 / 持続時間 / 言語変化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現在言語変化の過程にある鹿児島方言を対象として、高年層と若年層の話者に対する音声産出(話す)実験と知覚(聞く)実験を行い、言語変化のプロセスの一般化、および、音声産出と知覚が言語変化にどのように関わっているのかを解明することを目指す。具体的には、①鹿児島方言が他の日本語諸方言や日本語以外の言語とどのような相違点・共通点を持つのか?②鹿児島方言の話者には、高年層と若年層の間でどのような違いが観察されるのか?③高年層と若年層の鹿児島方言の話者にはそれぞれ音声産出と知覚の対応は見られるのか?④言語変化の過程では、音声産出と知覚のうち、どちらが先に変化し始めるのか?の4点を主に検証する。
|
研究実績の概要 |
本研究課題は、現在音変化の過程にある鹿児島方言に対して実験音声学的立場からの調査を行い、一般的な音変化のプロセスおよび、それに際する音声産出と知覚の役割の解明に貢献することを目指すものである。具体的には、鹿児島方言の高年層と若年層の話者を対象とした音声産出/知覚実験を行い、両者の音節の時間制御(とりわけ重子音の有無による母音持続時間の変化)の特徴を比較する。今年度は、本研究の核となるデータである若年層と高年層の鹿児島方言話者、および東京方言話者に対する音声産出実験と音声知覚実験の実施に注力した。その中でも特に、若年層の鹿児島方言話者への調査に大きな進展が見られ、その結果は現代の若年層の鹿児島方言話者では、音節の時間制御という点において従来の(伝統的な)特徴が失われつつある一方、従来の特徴を保持している部分もあることを示した。これは、現代の若年層の鹿児島方言話者における音声産出と音声知覚では変化が相当程度進行している部分と変化していない部分が混在しており、鹿児島方言が未だ変化の過程にあるということを示す。また、現代の鹿児島方言話者の音声産出実験と音声知覚実験の結果の比較から、鹿児島方言に起こる音変化では産出面よりも知覚面での変化が先に進行していることが示唆された。なお、これらの調査結果をまとめた研究論文は1件の論文として2024年3月に出版されている。これまでに得られた結果から示された可能性を詳細に検証するためには、今後高年層の鹿児島方言話者、および、鹿児島方言に生じる変化に大きく影響を与えているとされる東京方言の話者のデータを充実させる必要がある。今年度中にもこれらの話者に対する実験は並行して行っていたが、未だ十分な量のデータが採集できたとは言い切れない。この点を今後の課題として引き続き調査を進めていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度に行った予備実験の結果から、実験デザインに変更が生じたことや、実験に参加可能な鹿児島方言話者の募集が難航したことから、当初の予定よりも本研究課題の調査に少々の遅れが生じた。特に、高年層の鹿児島方言話者、および、東京方言の話者の募集がかなり難航したため、当該話者への調査に当初の計画から遅れが生じており、未だ十分なデータが採集できたとは言い切れない。しかし、今年度終盤に高年層の鹿児島方言話者、および、東京方言話者への実験にも進展が得られ始めており、このまま継続して調査を進めていくことで、ここまでに生じた遅れを取り戻すことは十分可能であると考えられる。これらを踏まえた上で、本研究課題の最終年度である令和6年度も引き続き調査を継続していく
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、引き続き鹿児島方言の若年層と高年層話者、および東京方言話者の音声産出・音声知覚のデータ収集・分析を行いながら、鹿児島方言に見られる音変化の詳細な検証を行う。特に、遅れが生じている高年層の鹿児島方言話者と東京方言話者に対しての実験実施に注力し、本研究の核となるデータをより充実させていく予定である。また、令和6年度は本研究課題の最終年度であることから、実験によって得られた結果を総合的に踏まえた上で、本研究課題、および、申請者の博士論文の最終的なまとめを行なっていきたい。
|