研究課題/領域番号 |
22KJ3091
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補助金の研究課題番号 |
21J00316 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
行方 宏介 国立天文台, アルマプロジェクト, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 太陽・恒星 / 黒点 / フレア / コロナ質量放出 / X線・紫外線放射 / せいめい望遠鏡 / TESS衛星 / NICER / 恒星 / 太陽 / Kepler衛星 / ALMA |
研究開始時の研究の概要 |
太陽・恒星フレアは、X線や紫外線の照射・太陽風擾乱といった形で地球・惑星環境に影響を及ぼしており、特に大規模なスーパーフレアの理解は、生命誕生の理解や人類文明の保全にとって非常に重要である。本研究では、多波長での観測により、恒星スーパーフレアの性質に切り込む。まず、地上・宇宙望遠鏡の観測により、活動領域の見え方の違いから黒点の複雑さ及び恒星スーパーフレアの発生条件を明らかにする。次に、多波長でのスーパーフレアの観測や数値計算から、恒星スーパーフレアのエネルギー分配則を明らかにし、惑星環境に与える影響を評価する基礎的な情報を得る。また、分光観測により、噴出現象現象の有無・性質を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、(A)恒星フレアの発生条件、(B)エネルギー分配則、そして、(C)噴出現象の有無・性質を明らかにすることである。そのために、研究実施計画に記したように、京都大学3.8mせいめい望遠鏡、西はりま2mなゆた望遠鏡、X線衛星NICER等を用いて、活動的な太陽型星EK DraとV889 Herを徹底的にモニタ観測し、さらに太陽観測データ解析を通した恒星現象の解明も実施した。 特に研究(A)は大きな進展があった。まず、太陽放射と太陽磁場の対応関係を恒星へ外挿し、恒星の観測スペクトルが再現できるかを検証した。その結果、本来衛星観測を必要とする恒星のX線・紫外線のスペクトルが、地上観測だけから推定できる可能性を提示した。これは、恒星の系外惑星大気への影響の評価をより安価に行うことを可能にしたという点で意義深く、将来的に系外惑星が生命居住可能かどうかを調べる基盤になると期待される。加えて、電波への拡張の研究も行い、ALMAアーカイブデータを用いたミリ波放射の特徴づけを開始した。 研究(B)に関しては、数件の恒星フレアのX線・可視光等の多波長同時観測に成功した。その成果の一例として、低温度M型星のスーパーフレアの加熱機構が、太陽フレアと共通しており、その加熱率は極めて高いことが観測から示唆された。この加熱率の高さは、本課題において最終的に明らかにしたい「エネルギー分配」を物理的に理解するための根拠になるため重要である。 研究(C)に関しては、特に太陽フレア・プラズマ噴出の解析を通して、これまで取得された恒星フレア・噴出現象を理解するという研究を実施し、太陽で起きている現象の一部が恒星でも共通して見られることを示した。これは、太陽という限られた星から我々が学んできた描像が、他の恒星にも拡張可能であることを示し、宇宙の他の恒星圏の普遍的理解において重要な役割を果たす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は3つ(A~C)あった。【研究A: 恒星フレアの発生条件】昨年度に引き続き、可視光において多くのデータを収集できており、最低目標は達成できている。また、太陽の磁場と放射強度の関係を恒星に外挿し、恒星の観測と比較することで、恒星の定常大気の状態を調べることに成功し、The Astrophysical Jornalに主著論文1件、The Astrophysical Jornal Supplementに共著論文を1件刊行した。このことから、研究(A)は想定通りに順調に進んでいると言える。 【研究B: 恒星フレアのエネルギー分配】本年度は、可視光・X線の同時観測に成功し、エネルギー分配則を直接的に導出する基盤が整った。これに関しては、現在論文を執筆中であり、順調に目的達成に近づいている。さらに、エネルギー分配の理解の基盤となる、恒星フレアの加熱機構の研究も行い、自身が代表で取得したデータを用いて、第二著者として論文を刊行した。ALMAを用いたフレア研究はプロポーザルの不採択により実施していないが、代わりに太陽のアーカイブを用いた研究Aの発展の可能性を見つけ、論文を執筆中である。このように、思わぬ方向に発展する研究もあり、全体として研究Bも順調であると言える。 【研究C: 噴出現象の有無・性質】本年度は、昨年度に大きく進展した成果を、太陽のデータを用いて解釈する研究が進展し、The Astrophysical Jornalに筆頭論文1件、共著論文1件を出版した。 これらの研究結果に関して、8件の国際学会発表(内招待講演4件)と2件の国内学会発表を行い、さらに多数の国内研究会で報告した。このように、査読論文6本(内主著2本)の出版に加え、国際学会でも大きな存在感を発揮し、当初予定していた通りに研究は進み、当初の目的の多くを達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は該当課題の最終年度にあたるため、3年間の本研究の総まとめを行う。ただし、長期的な研究発展の視点に立ち、1・2年目に行ってきた観測をさらに発展させ、可視光分光観測望遠鏡、X線衛星、電波望遠鏡でデータ取得も継続する。すでに本年度の京都大学せいめい望遠鏡の観測時間を確保している。共同研究者V. Airapetian氏(NASA)と共同でX線衛星NICERと電波望遠鏡ATCAの観測時間も確保している。また、3年間で得られた成果を、国内外の学会で積極的に報告し、意見を収集する。 【研究A】 昨年度の研究を継続し、ALMAや野辺山の電波観測のアーカイブデータを用いて、太陽のSun-as-a-star観測による太陽の自転変動を調べる。これを、アルファケンタウリなどの既にALMAで観測がある太陽型星と比較し、電波観測から恒星の活動領域の状態の調査を行う。また、昨年度に得た太陽・太陽型星の放射・磁場の関係性がM型星などの別の種類の星に適用できるかを、共同研究者であるAirapetian氏(NASA)や野津氏(コロラド大)と共同で検証する。 【研究B】昨年度までで得られたデータを解析し、数例のスーパーフレアにおいて、X線・可視光のエネルギー分配を観測的に明らかにする。これを太陽フレア観測(Namekata et al. 2017,ApJ)と比較し、普遍的な経験則の提案を行う。 【研究C】 研究Cは想定より順調に進展しており、昨年度まででスーパーフレアに伴う噴出現象の検出に成功し、その質量や運動エネルギーを含んだ内容を論文にまとめた。本年度は、共同研究者のV. Airapetian氏が所属するNASA/GSFCに滞在し、噴出のモデルに着手する。既に昨年までで、観測と理論を比較するためのデータは取得済みであり、今年度は数値計算との比較を行う好機である。最終的に、これらの内容を論文化する。
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