研究課題/領域番号 |
22KJ3104
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補助金の研究課題番号 |
22J40042 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
深海 菊絵 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ポリアモリー / 家族 / 子育て / 親密性 / ケア / パートナーシップ / 責任 / 倫理 / 米国 / 養育 / 社会規範 / 多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、米国のポリアモリー実践によって形成された「ポリファミリー」の実態を民族誌的に描き出すことである。その際、ポリファミリー内の多様な絆のあり方(生殖、性愛、法のつながりの有無等)に考慮しながら、彼らがそうした複雑な絡みあいのなかで交渉し、遂行的に「親」や「家族」となっていく過程を明らかにする。この作業を通して、現代米国における「家族」の意味を問い直すと同時に、家族・親族論そのものを再考する。 2023年度は、法や制度およびメディアとポリファミリーの関わりに注目した研究を進めていく。ここからポリファミリーを取り巻く権力の問題を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、①前年度に実施したフィールド調査で得られたデータを分析し、研究成果を二つのシンポジウムにてアウトプットし、②マサチューセッツ州でポリファミリー関するフィールド調査を行った。研究成果のアウトプットは、家族問題研究学会の大会シンポジウムにおける「個人主義とコミットメント:米国ソロ・ポリアモリーのケア関係を事例として」と題した発表(招待あり)と日本文化人類学シンポジウムにおける「つながりの実験:ポリアモリーにおける共生と技術」と題した発表(招待あり)である。前者の発表をもとに『家族年報(印刷仲)』を執筆すると同時に、研究成果の一部を組み入れた単著の執筆を進めた。 マサチューセッツ州におけるフィールド調査では、子育てやファミリー・ヒストリーの事例収集とボストン近郊におけるポリアモリーの状況についての情報収集を行った。子育てに関する聞き取りからは、家族成員がファミリーを維持運営するための共同性を確保するために他者との境界性を重視している点や互いの補完性が意識されている点が明らかになった。ここから差異と同一性に基づいたケアと責任を担う共同体という理論的課題が示唆された。また、ドメスティック・パートナーシップ法においてポリアモラスな関係を認めているサマービル、アーリントンおよびケンブリッジのあるマサチューセッツ州ではポリアモリーの認知が極めて高いことがわかった。ここからポリアモリーやポリファミリーの置かれた状況がアメリカの州や都市によって大きく異なっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の調査データの分析、考察および関連する文献研究に予想以上に時間を費やし、予定していた単著の刊行が叶わなかった。しかしシンポジウムや研究会での口頭発表を通じて他の学問領域の研究者から今後研究を深化させる際に必要な多くの示唆を得ることができ、またフィールド調査では期待以上の情報収集、事例収集を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2024年度は単著の刊行に向けて邁進すると同時に、2023年度の調査データをもとに査読論文を執筆し研究成果をアウトプットする。また、2023年度のフィールド調査からアメリカにおけるポリアモリーやポリファミリーの状況を把握する上で、地域性を考慮した比較分析を行う必要があると強く認識した。ポリファミリーを形成する人びとが当該地域において置かれた状況は、かれらの関係構築のあり方にも作用するからである。このような理由から、研究計画当初には予定していなかったアメリカ南部でのフィールド調査を追加する。具体的には、南部においてポリアモリー・グループが比較的多く散見されるフロリダ州で調査する。南部での調査はアメリカにおけるポリアモリーの状況について地域性やエスニシティの視点から洞察する上でも、南部におけるポリアモリーに関する先行研究が極めて少ないという状況を顧みても、意義があると考える。
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