研究課題/領域番号 |
22KJ3115
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補助金の研究課題番号 |
22J01703 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
山上 晃央 (2023) 埼玉県環境科学国際センター, 温暖化対策担当, 技師
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特別研究員 |
山上 晃央 (2022) 埼玉県環境科学国際センター, 温暖化対策担当, 技師 (30850135)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 北極低気圧 / 大気海洋結合過程 / 中高緯度相互作用 / エアロゾル |
研究開始時の研究の概要 |
北極域における大気・海洋・海氷現象の理解と正確な予測は、科学的・社会的な要請が強い。本研究では、北極域の顕著現象である北極低気圧の発達・維持プロセスの理解を軸として、大気・海洋・海氷相互作用、極域と中緯度との相互作用、エネルギー・淡水・物質循環構造の変化などの理解を進め、数日から数ヶ月の予測精度向上を目指す。そのために、気象庁数値予報システムを用いた大気・海洋・海氷結合予測実験の結果および世界の気象機関が提供しているアンサンブル予報デ ータなどを組み合わせて、各時間スケールの予測可能性の要因の理解や大気・海洋・海氷結合プロセスなどについて調査し、北極大気の予測可能性向上に資する研究を行う。
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研究実績の概要 |
北極エアロゾル変動に関する研究については、衛星観測データに加えて地上観測データとの検証を追加することで、エアロゾル再解析の北極域エアロゾル変動の表現が妥当であることを追加で検証した。また、消散係数の鉛直断面を追加することで、北極低気圧に伴うエアロゾル輸送の3次元的な変動の構造を示した。前年度の結果と合わせて、北極低気圧が北極のエアロゾル変動に大きく寄与していることを示した。 また、複数解像度を用いた大気海洋結合予測を用いた北極大気の予測精度に対する大気海洋結合過程の影響の解析については、2018年9月に北大西洋から北極へ進入した北極低気圧に着目した解析を進めた。高解像度大気モデル(~10km)と高解像度海洋モデル(~10km)、低解像度海洋モデル(~100km)それぞれと結合した実験の比較では、北大西洋海流域の海洋前線上では、数時間予測では鉛直混合メカニズムが、1日後以降では圧力調節メカニズムが風速の予測の差をもたらしていることが示唆された。また、高解像度海洋結合モデルと結合した実験では、北大西洋上での低気圧発生時の下層の渦位が大きかった。境界層における顕熱および運動量フラックスに伴う渦位の生成・消滅は海洋モデルの解像度にはほとんど依存しないことが示唆された。一方、高解像度海洋モデルと結合した実験では北大西洋海流の海洋フロント上で非断熱加熱および凝結加熱が大きく、この違いが渦位の違いをもたらしたことが示唆された。さらに、アンサンブル予報を用いた感度解析によって、実験間に見られた北大西洋海流上の数日予報の違いが、1週間予報の北極大気の予測精度に影響することが示された。これらから、北大西洋上の海洋フロントに伴う大気海洋結合過程の表現が低気圧の発達に影響し、北極大気の予測に影響を与えたことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
北極低気圧に伴うエアロゾル変動の研究に関しては、ライフイベントや異動のタイミングと重なったため研究環境を構築するために時間を要し査読対応に想定よりも時間がかかったものの、論文として採択となった。それに伴って複数解像度の大気海洋結合実験の解析に着手するタイミングも遅れた。また、結合実験については一度結果をまとめて論文投稿を行ったが不採択となったため、査読者のコメントを受けて追加解析と本文修正を行なっている。これについては準備が出来次第再投稿予定であるが、より長い延長予報の解析についてはデータ取得を行ってきているが、解析への着手が遅れている。論文投稿後に着手予定である。
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今後の研究の推進方策 |
大気海洋結合実験を用いた北極低気圧の予測精度に関する研究については、査読者のコメントを受けた追加解析・改訂を行なっており、準備が完了次第再投稿する予定である。また、今回の解析は下層渦が支配的な構造を持つ北極低気圧事例の解析であり、上層渦が支配的な北極低気圧事例については調べられていない。上層渦が支配的ない北極低気圧は下層渦が支配的なものよりも持続期間が長いため、より長い時間スケールの予測に影響することが考えられる。現在、延長予報(2週間から2ヶ月)データを用いた解析のためのデータ取得を継続しており、解析に着手できる状態である。より長い時間スケールにおける北極低気圧の構造の違いによる予測可能性の違い、大気-海洋-海氷結合過程への影響についての解析を行う予定である。 また、最終年度であるため、本研究で得られた結果にをまとめるとともに、分かったことと今後の課題を整理する。
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