研究課題/領域番号 |
22KJ3126
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補助金の研究課題番号 |
22J01147 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
愛甲 将司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ヒッグス / 高次摂動効果 / ALP |
研究開始時の研究の概要 |
素粒子の標準理論は、様々な高エネルギー実験の結果をよく説明できる優れた理論である。しかし、標準理論では説明することのできない現象がいくつか知られており、その一つに宇宙のバリオン数非対称性問題がある。この問題を解決する有力なシナリオとして、ヒッグスセクターの拡張を伴う電弱バリオン数生成のシナリオがある。本研究では、既存の実験データと整合し、かつ十分なバリオン数を生成することができる新しい電弱バリオン数生成のシナリオを探究し、将来実験による検証可能性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒッグスセクターの拡張を伴う電弱バリオン数生成のシナリオの構築、および将来実験による検証性を明らかにすることである。前年度は、ヒッグスセクターの拡張を伴って現れる付加的ヒッグス粒子の崩壊現象に関するこれまでの研究を統合し、自動計算プログラムH-COUP version3を公開した。本計算プログラムでは、ヒッグス二重項場を二つ含むTwo-Higgs doublet model、暗黒物質候補を含むInert doublet model、ヒッグス一重項場を含むHiggs singlet modelにおいて、2012年に発見された125 GeVヒッグス粒子と付加的ヒッグス粒子の崩壊分岐比を、高次摂動効果を含めて計算できる。特に、付加的ヒッグス粒子が125 GeVヒッグス粒子に崩壊する過程は、高次摂動効果によって摂動の最低次から理論予言が大きな変化を受けることを示し、125 GeVヒッグス粒子の精密測定だけでなく、付加的ヒッグス粒子の直接探索においても高次摂動効果が重要な役割を果たすことを示した。また、擬アクシオン粒子(ALP)と呼ばれるCP奇のスカラー粒子の一種が導入される模型について、特にALPが弱ゲージボソンと主に相互作用する場合に、ヒッグス粒子の崩壊分岐比の精密測定による間接的検証、およびLHC実験における直接検証の解析を実施し、現在および将来の高エネルギー加速器による検証可能性を包括的に調べた。我々は令和4年度の研究で、Wボソンの質量における標準理論の予言との不一致は、ALPが500GeV以上と比較的重ければ説明できることを明らかにした。しかし、前年度の研究の結果、そのようなシナリオは LHC Run2の結果で棄却されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた電弱バリオン数生成のシナリオの構築には着手できていないが、将来実験による検証性を明らかにする上で重要な高次摂動効果の研究に関して、これまでの研究を統合した自動計算プログラムH-COUP version3を公表した。また、前年度に引き続き、CP奇のスカラー粒子であるALPに関して、ヒッグス粒子の崩壊分岐比の精密測定による間接的検証、およびLHC実験における直接検証の解析を実施し、Wボソンの質量における標準理論の予言との不一致は、ALPが弱ゲージボソンと主に結合する模型では説明が困難であり、さらなる拡張が必要であることを明らかにした。以上の点から、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究してきたTwo-Higgs doublet modelにおいて電弱バリオン数生成のシナリオを構築する。令和五年度のヒッグス粒子の崩壊とLHC実験における新粒子の直接探索に関する研究を応用し、将来実験による検証可能性を明らかにする。
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