研究課題/領域番号 |
22KJ3168
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補助金の研究課題番号 |
22J01713 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
水野 隼斗 (2023) 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 特別研究員(PD)
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特別研究員 |
水野 隼斗 (2022) 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 高分子ミセル / SHH型髄芽腫 / Gli2 / 小児脳腫瘍 / アンチセンスオリゴヌクレオチド |
研究開始時の研究の概要 |
CRISPR/Cas9による発生期の小脳における体細胞ゲノム編集技術を用いて小脳顆粒細胞から腫瘍を誘導し、蛍光タンパク質GFPを発現する弱毒化狂犬病ウイルスを用いた経シナプス性細胞標識技術を組み合わせて、腫瘍の形成過程で腫瘍に投射する細胞を網羅的に可視化する新規の実験系を開発する。相互作用する脳細胞の個性を分子レベルで解析するために、GFP陽性細胞を含む腫瘍組織の単一細胞RNAシーケンスを行い、ハイジャックされた神経細胞と腫瘍細胞の相互作用を担う分子を探る。特に、候補分子はゲノム編集技術や高分子ミセルを用いた手法により腫瘍細胞でノックアウトすることにより、腫瘍進展への影響を生体内で解析する。
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研究実績の概要 |
昨年度までに、腫瘍細胞表面に発現したCD276タンパクに対する抗体をナノキャリア表面に結合する手法を提案し、概念実証を行った。しかし、この時用いていた ナノキャリアはモデル高分子ミセルであり、薬剤を担持していなかった。今年度は、ミセルを構成する高分子を再設計・合成し、実際に核酸医薬を担持できるミ セルを作成した。具体的には、ポリエチレングリコールと正電荷を有するpoly(lysine-triphenylphosphonium)から構成されるブロックコポリマー、PEG- Poly(Lysine-TPP)を合成し、これを核酸の不電荷と静電相互作用させることでミセルを形成させた。このミセルの安定性を、生体内の温度、塩濃度、ポリアニオ ン、タンパク濃度を模倣した系で評価した結果、従来使われていたポリマーに比べて有意に高い安定性を示した。これは、ポリマー側鎖のTPPが核酸と強く静電相 互作用した他、TPP-TPP間にも疎水性相互作用による引力が生じたからであると考えられる。現在このミセルに、昨年度作成したCD276 Fabを表面修飾し、細胞導 入効率を検証している。 ミセルに内包する核酸についての検討も行った。核酸の種類としては、ガン遺伝子をサイレンスするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を検討中であり、こ れを用いることで腫瘍細胞でのみ薬効が発揮されることが期待される。具体的には、SHHシグナル経路の主軸にある転写因子のGLI2 mRNA の配列と相補的な配列を 有する長さ20塩基のASOを用意した。これを実際に小児脳腫瘍細胞のDAOYにトランスフェクションし、GLI2のノックダウン効率をウェスタンブロットにて確認し た。結果、GLI2のノックダウンは確認されたが、効率はさほど高くなく、およそGLI2発現量がおよそ20%しか減少しないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定よりも早い段階で高分子ミセルの設計・合成が完了し、in vitroレベルでの安定性評価や機能性評価も終了している。 一方で、ミセルに搭載する予定のASOが未だ決定できていない。その背景には当初適切と思われていたASOの配列のGli2遺伝子ノックダウン効率が低かったことが ある。現在本研究で見つかった他のSHHシグナリングの主軸となるターゲットをノックダウンできるASO配列を調査中の段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後最優先でSHH型髄芽腫の進展に大きく貢献していると思われるタンパクのノックダウンを進め、これによる腫瘍進展への影響を綿密に調査する。 そのためには、これまでにGli2遺伝子に対するASOのノックダウン効率が思わしくなかったことの原因調査や、これまでにASOを用いたノックダウン実績のあるタ ンパクの調査を行なっていく。 ASOの配列が決まり次第、これを既に合成済みの高分子を用いてミセル内に封入し、in vitroレベルでノックダウンによる腫瘍進展への影響調査と、in vivoでの 高分子ミセルの血液脳関門透過性能、安定性、そして腫瘍細胞ターゲティング能の評価を行なっていく。
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