研究課題/領域番号 |
22KJ3169
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補助金の研究課題番号 |
22J01591 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
塚本 雅也 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 生殖医療研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 小腸オルガノイド / ミニ腸 / 多能性幹細胞 / 粘膜免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞は自己複製能と三胚葉への多分化能を持つ。またオルガノイドは多能性幹細胞などから生体外で作製されるミニ臓器である。当研究室ではヒト多能性幹細胞から高機能化された小腸オルガノイド(ミニ腸)を作製することに成功している。 一方、生体内の消化管内腔には食物由来抗原や腸内細菌が存在している。そのため、消化管粘膜は免疫反応の最前線である。そこで本研究ではM細胞などの粘膜免疫応答に特化した細胞を標的とし、粘膜免疫応答の分子機構の研究に資するミニ腸バイオモデルを構築する。
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研究実績の概要 |
消化管には食物由来抗原や腸内細菌が存在し、粘膜上皮は免疫反応の最前線を担っている。上皮細胞はタイトジャンクションで結合され、ムチンや抗菌ペプチドの産生により、粘膜バリア機能を保っている。一方、回腸に存在するパイエル板などでは、部位特異的に存在する粘膜上皮細胞の一種であるM細胞が、消化管内腔の抗原を積極的に取り込み、直下に存在している免疫担当細胞に抗原提示を行う。M細胞はその特徴から、粘膜免疫において重要な役割を担っているとともに、特定病原体の侵入経路となることもある。そのため、ヒトM細胞研究の基盤構築が求められている。 一方、多能性幹細胞は無限の自己複製能と身体を構成するほぼすべての細胞へ分化する能力を有する。多能性幹細胞から誘導されるオルガノイドは、複数種類の細胞が三次元構造を構築し、生体内組織と類似した性質を有する。本研究室では、粘膜上皮細胞や間質細胞だけでなく、腸管神経系をも含有する高機能化された小腸オルガノイド(ミニ腸)をヒト多能性幹細胞から作製することに成功している。また、ミニ腸にマクロファージを付与することで、免疫応答をも模倣できるシステムを構築している。そこで本研究では、このミニ腸を応用し、M細胞などの粘膜免疫応答に特化した細胞を標的としたモデルを構築することで、粘膜免疫応答の分子機構の研究に応用する。 本年度は、single cell RNA解析を実施するための準備として、ミニ腸の消化プロトコルを検討し、消化酵素や消化時間、消化温度を調整することで、ミニ腸から高い生存率でシングルセル懸濁液を得る方法を確立した。またsingle cell RNA解析のためのライブラリ調製を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究室では高機能化された小腸オルガノイド(ミニ腸)の誘導に成功している。一方、single cell RNA解析は、一細胞レベルで遺伝子発現解析を実施できるため、ミニ腸の特性を詳細に解析することができる。single cell RNA解析の実施には、オルガノイドからシングルセル懸濁液を高い生存率で得る必要があるため、再現性の高い組織消化方法を確立する必要がある。本年度ではミニ腸についてsingle cell RNA解析を実施するべく、組織消化方法を検討し、その方法を確立した。 また、本研究室ではマクロファージを生着させることで、免疫機能をも兼ね備えたミニ腸を作製することに成功している。そのマクロファージを付与した小腸オルガノイドを応用し、M細胞などの免疫機能と密接な関りをもつ粘膜上皮細胞の機能を検証するためのバイオモデル構築にも着手しており、本研究課題の遂行について一定の進捗が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
実施中のsingle cell RNA解析を進め、ヒト多能性幹細胞由来小腸オルガノイド(ミニ腸)の詳細な解析を進める。また、組織マクロファージを内在化させたミニ腸のsingle cell RNA解析を実施し、マクロファージを内在化させる前とさせた後で、粘膜や間質でどのような変化があるか検証する。また、公開されている生体小腸のsingle cell RNA解析のデータと比較し、ミニ腸と生体小腸の相違点を調べる。 現在までの暫定的な解析によると、ミニ腸の粘膜上皮に含まれるM細胞は、生体消化管と同様に非常に少ない。そこで、M細胞誘導因子の強制発現や培地中への添加を行い、粘膜上皮に変化があるか検証する。また、パイエル板の発生過程において、粘膜上皮と間葉系細胞だけでなく血液系細胞との相互作用が重要であると報告されている。とくに粘膜免疫応答に特化したM細胞は、他の免疫担当細胞と強い相互作用があると考えられる。そのため、免疫担当細胞との相互作用にも着目しながら研究を進める。
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