研究課題/領域番号 |
22KJ3174
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補助金の研究課題番号 |
22J01445 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
木下 峻一 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 大型底生有孔虫 / 海洋酸性化 / マイクロX線CT / 室内飼育実験 / 温暖化 |
研究開始時の研究の概要 |
現在の海洋は、近年の大気CO2濃度の上昇に伴い、温暖化及び酸性化が同時に引き起こされ、石灰化生物への影響が懸念されている。IPCCによると、今世紀末までに海洋のpHは0.06(RCP2.6)~0.32(RCP8.5)程度の低下が予測されている。大型有孔虫(LBF)においてはpHで0.2の低下により成長が阻害されることが分かっている。本研究では、LBFの飼育実験とMXCT測定により、生育環境の酸性度と殻生産における応答の関係を、定量的に解析し、海洋の酸性化が石灰化生物に与える影響を検討する。また、定量的な酸性化の指標を提案し、海洋の酸性度の石灰化生物への影響を定量的に復元・評価・予測する。
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研究実績の概要 |
本年度は、年間で3回の現地サンプリングを行い、順次、東北大学総合学術博物館にてMXCT撮影を行っている。現在の自然環境下での大型底生有孔虫の状況の理解のための研究についてはおおむね順調に進行中である。 一方で、飼育実験については4月末のサンプリングでAmphisorus kudakajimensisについて飼育に適したクローン個体群を得ることに成功した。5月上旬より、酸性化海水およびアルカリ化海水での飼育実験を行い、8月末に実験を完了した。本年度の飼育実験では、当初計画していた酸性化海水での実験に加え、アルカリ化海水での実験を加えているが、これは昨年度までの成果(特にサンゴを用いた実験)などから、石灰化生物の殻形成における重要なパラメータは複雑であり、酸性度に加え、アルカリ度や、炭酸塩飽和度についても調査する必要性があると判断したためである。また、海洋のアルカリ化は、酸性化への対策の一案(ネガティブエミッション技術のひとつ)として検討されていることからも、その影響を事前に推測しておくことは必要不可欠であると考えられる。実験で得られたサンプルは重量測定を行い、1月にかけてMXCTでの撮影も完了している。現在までの測定の結果、現在進行中の海洋酸性化が有孔虫やサンゴなどの海洋石灰化生物に対して石灰化阻害効果を持つこと、海水の炭酸飽和度が石灰化に重要なパランメータであることを明らかにした。これらの結果は、12月開催の地球環境史学会および、1月の日本古生物学会で発表を行った。また、現在解析中のデータを加えて、令和6年度のEGU総会で発表するほか、国際誌への投稿を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にも記載の通り、年間を通しての定点サンプリングは滞りなく実施できており、現在の自然環境下での大型底生有孔虫の状況の理解のための研究についてはおおむね順調に進行中であると考えている。 飼育実験を中心とした、有孔虫の環境応答解明については、昨年度、サンプルが十分に得られず断念した酸性化実験を、現在の知見に合わせた方針で実施することができた。その結果は、今後の酸性化対策や過去の環境における石灰化生物の様子を考察する際に非常に有用なデータとなっており、国内外の学会での議論も活発に行うことができた。 これらのことより、若干の方針の変更はあるが、この点も後退的なものではなく、本研究の全体の進捗としては、おおむね順調であると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度も引き続き、定点でのサンプリングは可能な限り実施する予定である。 飼育実験については、これまでの知見から、当初の計画から発展させ、酸性化・アルカリ化の各環境での有孔虫の応答をより詳細に、また多種の有孔虫を用いて行いたいと考えている。 また、令和6年度は本研究計画の最終年度であるため、これまでの成果をまとめ、国際誌への投稿も進めていく方針である。
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