研究課題/領域番号 |
22KJ3192
|
補助金の研究課題番号 |
21J00504 (2021-2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
古賀 俊貴 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門生物地球化学センター, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 核酸塩基 / 高速液体クロマトグラフ / 元素分析-同位体比質量分析 / 炭素質隕石 / 有機地球化学 / 分取クロマトグラフィ / 元素分析/同位体比質量分析 / 炭素質コンドライト / 堆積物 |
研究開始時の研究の概要 |
炭素質隕石中にはアミノ酸や核酸塩基のような生体関連化合物をはじめとする多種多様な有機化合物が存在することが明らかにされてきた。これらの地球外起源の有機物が生命の誕生以前の初期地球に地球外物質(隕石・彗星・微隕石など)の飛来によって初期地球に供給されたことで,「生命の起源」に関与したという可能性がこれまで議論されてきた。本研究では,炭素質隕石中の核酸塩基の炭素・窒素安定同位体比を世界で初めて測定することで,検出された核酸塩基が間違いなく地球外起源であることを示すとともに,同位体組成からその生成機構に新たな制約をもたらすことを目指す。
|
研究実績の概要 |
昨年度は高速液体クロマトグラフ(HPLC)と元素分析-同位体比質量分析(EA/IRMS)を活用することで、核酸塩基の窒素安定同位体比(δ15N)を測定する手法を新たに開発した。EA/IRMSでは、δ15Nとともに炭素安定同位体比(δ13C)も同時に測定することが可能であるが、分析試料の調製中に何らかの炭素源が混在しており,核酸塩基の正確なδ13Cを測定することができていなかった。この問題は,核酸塩基を溶解させるために必要な水酸化ナトリウム水溶液中に大気中の二酸化炭素が溶け込み,炭酸塩として炭素源が加わることが原因であると考えた。そこで,その炭酸塩を除去するために同位体分析直前に塩酸で試料を処理したところ,混在していた炭素源の除去が確認され,EA/IRMSによる核酸塩基のδ13Cとδ15Nの高精度な同時分析法を開発させることができた。昨年度にδ15Nを測定した7種の核酸塩基標準試料(ウラシル、シトシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、グアニン、アデニン)と堆積物中からの核酸塩基のδ13Cを測定し,HPLCによって単離された天然試料由来の核酸塩基に対しても本分析法が適用可能であることを実証した。上記の研究成果に加え,隕石中の核酸塩基のδ13C・δ15N分析に向けた抽出方法の最適化も実施した。従来用いられてきた熱水による隕石有機物の抽出後にさらに塩酸による抽出を行うことで,最初の熱水抽出で回収できていない核酸塩基の分布を調査した。その結果,ピリミジン塩基は熱水抽出液中に豊富に存在する一方で,プリン塩基の大部分は続く塩酸抽出によって隕石試料から回収されることを明らかにした。したがって,最適化した隕石試料の抽出法,HPLCによる単離,EA/IRMSによるδ13C・δ15N分析を組み合わせることで,炭素質隕石中の核酸塩基の同位体組成を測定する手法を確立することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に生じた課題を解決し,核酸塩基のδ13C・δ15N分析法を初めて確立することができた点は大きく評価される。昨年度の研究成果であるδ15Nのみの分析法を報告する論文原稿を加筆修正中であり,来年度の上半期中には投稿可能である。さらに,炭素質隕石中の核酸塩基分布をより詳細に明らかにし,続く隕石核酸塩基の同位体分析を行う上で非常に重要な知見を得ることができた。この成果についても論文原稿の準備が進んでおり,来年度の上半期中には投稿可能である。上記二報の投稿後には,本研究課題の主題である隕石核酸塩基の同位体分析に取り組む予定であるため,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に開発した核酸塩基のδ13C・δ15N測定法と隕石中の核酸塩基の分布について国際誌にそれぞれ報告を行う。現在,生物試料中の核酸塩基の同位体分析も実施しており,本研究課題で開発された分析手法が地球化学の幅広い分野の試料に適用可能であることを実証中である。そして,本研究課題で得られた成果の集大成として,隕石試料中からの核酸塩基の単離・同位体分析を実施し,隕石核酸塩基の多次元同位体比を世界で初めて高精度に測定することで,当該研究分野に革新的な知見をもたらすことを目指す。
|