研究課題/領域番号 |
22KJ3209
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補助金の研究課題番号 |
22J01665 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
大江 耕介 一般財団法人ファインセラミックスセンター, ナノ構造研究所, 特別研究員(CPD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 走査透過電子顕微鏡法 / 低ドーズ観察 / 電子線敏感材料 / 走査透過電子顕微鏡 / OBF STEM |
研究開始時の研究の概要 |
最適明視野走査透過電子顕微鏡(OBF STEM)法は従来手法の100倍程度の感度を有しており、高感度に物質中の局所原子構造を観察可能な電子顕微鏡法である。しかし、重元素を多く含む試料においては照射電子が試料中で複数回散乱される動力学的散乱効果が顕著になるため、OBF法を用いた重元素原子サイトの定量的な解析は困難だった。そこで本研究では、OBF法においてアーティファクトとして生じる動力学的散乱効果の補正法の開発を行うとともに、画像処理アルゴリズムとして実装する。さらに、重元素を多く含む電子線照射に弱い試料へ応用することで、重元素サイトを含めた局所原子構造の高感度定量解析を試みる。
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研究実績の概要 |
走査透過電子顕微鏡(STEM)法は、試料中の原子配列を直接観察できる極めて高い空間分解能を有する顕微鏡法である。しかし、近年の大きな課題として、電子線照射への耐性が低いエネルギー材料やポーラス材料といった電子線敏感材料の解析があげられる。これらの試料では、観察時に照射する電子線量を大幅に抑制した低ドーズ条件での観察が必要になる一方で、同条件では得られるSTEM像の信号ノイズ比が大きく低下する。このような条件においても高感度に原子配列を可視化する手法として、これまで最適明視野(OBF)STEM法の開発と応用を行ってきた。OBF法は従来手法と比較して2桁程度高い感度を有しており、電子線敏感材料の原子構造解析に強力な手法となる。これまでの研究から、構成元素の多くが原子番号の小さい軽元素となる多孔質材料では、OBF法は極めて有効であることが明らかになってきている。しかし、エネルギー材料といった原子番号の大きな重元素を多く含むものや結晶構造における原子の密度が高いものについては、入射電子が試料中で複数回散乱される多重散乱現象によって、OBF法の適用には限界があった。この場合、OBF像コントラストの大小に対し、観察された原子配列における原子番号の大小・サイトの占有率といった情報を定量的に結び付けた議論が困難となる。そこで本研究では、多重散乱効果を取り入れたモデルを適用することによってOBF STEM法の理論的な拡張を試みた。これによって、試料中の原子番号や原子密度の大小によらず超高感度かつ定量的な原子配列の解釈が可能なSTEM像の取得を目標とする。本年度は、多重散乱現象を考慮したモデルを従来のOBF法に適用する理論的なアプローチの検討、またシミュレーションによる有効性の検証を行った。その結果、重元素を多く含む無機結晶試料においても定量的なコントラストを得られる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来のOBF STEM法で課題となっていた多重散乱現象による像コントラスト定量性の低下について、多重散乱効果を取り入れた動力学的散乱理論に基づくOBF STEM法のコントラスト補正法を理論的に検討した。また、この処理を勾配法をもとにした最適化によって実行することで、効果的にOBF像コントラストの定量性を回復できることがシミュレーションによって明らかとなった。上記の得られた結果から、研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より多様な結晶構造・観察条件における本手法の適用可能性の理解、また実験的に取得されたデータへの応用を行う。特に、入射電子線の空間コヒーレンスの不完全性による像コントラストへの影響が大きいことが予測されており、特にこの効果の克服に向けてシミュレーション上の検討および実験データへの応用を進めていく。
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