研究課題/領域番号 |
22KJ3230
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補助金の研究課題番号 |
21J00431 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 東京外国語大学 (2023) 東京女子大学 (2022) 国際基督教大学 (2021) |
研究代表者 |
入江 哲朗 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | アメリカ思想史 / アメリカ哲学 / アメリカ文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究が属するアメリカ思想史という領域においてはしばしば、1890年代が分水嶺と見なされている。なぜなら種々の思想的変動が1890年代米国で本格化したからであり、なかでも重要なのは、ヴィクトリア朝ふうのハイカルチャーに対する主に大衆文化の側からの反動が、たくましくて好戦的な男性の理想化といったかたちのアクティヴィズム的諸傾向として噴出したことである。本研究の目的は、こうしたアクティヴィズム的諸傾向が1890年代米国でなぜ、いかにして噴出したのかの解明に存する。この目的のために本研究は、アメリカ自然主義文学の主要な担い手であるフランク・ノリスに焦点を据えつつ1890年代米国を多角的に論じる。
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研究実績の概要 |
2022年度に筆者は、『英会話タイムトライアル』(NHK出版)誌上の全12回の連載「現代に息づくアメリカ思想の伝統」を担当した。この連載において筆者は、アメリカ思想史の重要人物を各回ひとり取り上げ、その者の思想的レガシーが現在へどう受け継がれているかを──その者自身の言葉を引きながら──広汎な読者に対して最大限わかりやすく解説した。この連載は、アメリカ思想史という領域のアウトリーチに寄与したばかりでなく、筆者自身のアメリカ思想史観の解像度を高めるうえでも大いに有意義であった。 研究計画で掲げた探究対象のうち、「アメリカ自然主義文学は、世紀転換期のアメリカ哲学(なかでも当時「自然主義」と呼ばれた哲学的立場)とどう接続しているのか」という問いについては、雑誌『ワスプ』(19世紀末から20世紀前半にかけてサンフランシスコで発行)に載った諷刺画を調査することによって研究上の進展を得た。この進展に関する口頭発表を筆者は、「世紀転換期アメリカ思想史におけるタコの形象──フランク・ノリスとウィリアム・ジェイムズの共通項を探る」というタイトルで、2022年6月4-5日に催されたアメリカ学会第56回年次大会のなかでおこなった。 タコに関する表象分析に従事している筆者の現在の研究は、アニマル・スタディーズという新興の学問分野とも接点を持つ。アニマル・スタディーズの興隆は、近年のポストヒューマニズム的思潮(人間中心主義からの脱却をいっそう推し進めようとする思想的傾向)とも関連していると考えられる。このポストヒューマニズム的思潮について筆者は、『群像』第77巻第7号(2022年7月)掲載の論文「爽やかな人間中心主義──批評とポストヒューマニズム的思潮」のなかで考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は2022年度中に米国での史料調査をおこなう予定であったが、これは叶わなかった。理由としては、想定以上の円安および物価高により史料調査の旅費が嵩みそうだったため2022年度の研究費支出計画のなかで旅費を確保するのが難しくなったことや、後述の連載執筆により筆者のスケジュールがやや過密になり一定期間の渡米の時間を確保しづらくなったことなどを挙げられる。かわりに2023年度中に、カリフォルニア大学バークリー校バンクロフト図書館などでの史料調査をおこなう予定である。 2022年度に『英会話タイムトライアル』(NHK出版)誌上の全12回の連載「現代に息づくアメリカ思想の伝統」を担当したことは、研究計画作成時点では予期しなかった仕事であるけれども、この業績により、筆者自身のアメリカ思想史観の解像度を高めるという意味でも、アメリカ思想史という領域のアウトリーチ活動という意味でも、当初の想定以上の進捗を生み出すことができた。また、『群像』第77巻第7号(2022年7月)に発表した論文「爽やかな人間中心主義──批評とポストヒューマニズム的思潮」は、その執筆をとおして自然と人間との関係についての考察を深められたという意味において、自然主義という哲学的立場を扱う本研究にとって有意義な業績である。 研究計画で掲げた探究対象のうち、「アメリカ自然主義文学は、世紀転換期のアメリカ哲学(なかでも当時「自然主義」と呼ばれた哲学的立場)とどう接続しているのか」という問いについての口頭発表を、2022年6月4-5日に催されたアメリカ学会第56回年次大会のなかでおこなうこともできた。したがって全体的には、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、前年度までの研究成果を引き継ぎながら、研究計画で掲げた課題のうち(2)世紀転換期米国の文学および哲学に現れた自然主義の統合的理解と、(3)1890年代米国的な自然観および肉体観の表象分析とに注力する。これらふたつの課題の両方と関わる、「19世紀末から20世紀初めにかけてのアメリカ自然主義文学は、同時期のアメリカ哲学(なかでも当時「自然主義」と呼ばれた哲学的立場)とどう接続しているのか」という問いを筆者は現在探究中である。より具体的に言うと、アメリカ自然主義文学の代表的作家のひとりであるフランク・ノリスと、同時代の著名なアメリカ人哲学者ウィリアム・ジェイムズとのあいだにある──これまでほとんど注目されてこなかった──タコの形象の利用という共通点に筆者はいま光を当てており、その思想史的意義を考察している。 このトピックの口頭発表を筆者はすでに、2022年6月のアメリカ学会第56回年次大会にておこない、現在はその内容の論文化を進めている。しかし、発表時に受けたアドヴァイスなどから、論文の価値を高めるためにも米国で史料調査をおこなう必要があることをつくづく感じた。したがって2023年度中に、ノリスの手稿の多くが保管されているカリフォルニア大学バークリー校バンクロフト図書館と、ジェイムズ関連史料の多くが保管されているハーヴァード大学ホートン図書館とへ史料調査に赴く計画を筆者は立てている。 筆者は2022年度に、『英会話タイムトライアル』(NHK出版)誌上の全12回の連載「現代に息づくアメリカ思想の伝統」を担当した。この連載は書籍化が決定しており、書籍化のための加筆を筆者は2023年度中に終える予定である。筆者によるアメリカ思想史の入門書の出版によりこの領域の日本における認知度が高まれば、本研究の成果を公表する際のインパクトもより広い範囲に届くようになるだろう。
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