研究課題/領域番号 |
22KK0002
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
野原 佳代子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (90327312)
|
研究分担者 |
原 正彦 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (50181003)
Salani Giorgio 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任助教 (90902205)
朱 心茹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (90909285)
|
研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
|
キーワード | 科学とアート/デザイン / 超学際 / 異分野コミュニケーション / STEAM / 記号間翻訳 / アート思考 / センサ開発 / 形式知、暗黙知、融合知 / エスノグラフィ |
研究開始時の研究の概要 |
アート思考をとり入れて新しい視点を科学技術研究に反映させる「翻訳」行為とその可能性を探求し、体系的なアート的活動導入がもたらす、若手研究者の科学的活動への影響を明らかにする。センサ開発のための「分子の認識と検出」を題材とし、アート思考を持ち込んだグループの解釈過程と、従来通りの手順で科学者が解釈する過程とでどう違いが出るかを実験調査する。分析には記号間翻訳論の評価基準を使用し科学的解釈がアートの介入でどのように異質化されるかを解明する。翻訳過程上見られるコミュニケーション行動や心理をデータとして意味のすり替え、停滞や齟齬、創造的な気づきなどを明らかにし、有効な「翻訳プロセスモデル」を提案する。
|
研究実績の概要 |
異分野融合またSTEAMのトピックを中心に文献収集・先行研究調査を行うとともに、次年度以降のフィールドワークに向けた準備を開始した。まず各担当グループが、学術研究論文と応用分野の文書ならびに実践事例を収集している。上述のトピックを扱っているものをコミュニケーション論、翻訳学、デザイン論、デザイン哲学などにおいて探索しており多岐にわたる。昨今日本でも注目されているアート思考とそのビジネスや研究・教育への応用についても調査中である。 並行して、科学とアート間翻訳実験フィールドワークの設計と準備を開始した。具体的には、パートナー校であるアーヘン工科大学(特に材料工学分野の研究者等)と連携し、センサ開発と分子構造認識をテーマとするSensUsプロジェクトに東工大生と美大生のグループを開発プロセスに参加させ、そこで発生する異分野越境コミュニケーションを観察する研究計画であり(2023.8~9)、それに向け準備として ①2022年12月に原正彦教授がアーヘンに赴き、担当者Sven Ingebrandt教授・Vivek Pachauriグループリーダー等と打ち合わせ設備の確認などを行った。 ②2023年3月にGergio Salani特任助教が、協力者である鹿又亘平研究員とともに、もう一つのパートナー校であるロンドン芸術大学セントラル・セントマーティンズ校に赴き担当者Betti Marenco准教授(東工大特任教授でもある)と打ち合わせを行った。さらにこれから実施するコミュニケーション観察実験に先駆けプレ実験として2日間のミニワークショップを実施した。これは科学技術思考とアート思考を用いて議論を行い相互への影響を追いかける本実験のシミュレーションと位置付けられる。 2023年度からの本実験とデータ収録に向け、日本、ドイツ、英国在住の担当者が対面で協働し十分な企画と準備を行うことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は当初、文献収集(先行研究・実践事例調査)と、研究者がそれぞれ在住地域(東京、アーヘン、ロンドン)にいながらオンラインで連絡をとりつつ次年度のフィールドワークに向け準備をすることを予定していた。しかし、各地域の研究グループが密接に連携し調整をはかったことで、まず12月にはドイツのアーヘン工科大学に研究分担者が赴いて、対面で議論をし実験の設計や参加者リクルートの準備、設備の確認などを開始することができた。また3月には別の研究分担者がロンドン芸術大学に赴き、同様に詳細な打ち合わせをするのみならず、科学的思考とアート的思考を活用して異分野融合コンテンツを生み出す記号間翻訳実験のリハーサルとなるプレ実験も実施することができた。これは当初の計画には組み込まれていなかったが、科学とアートの融合を誘発するワークショップとして、モジホコリ(粘菌類)が迷路を探索する選択と動き、ルートを解析するとともに、単純でありながら無駄のないメカニズムをどのように解釈するかを議論するワークショップが企画、実施することができた。このプロセスと結果の観察によって、すでに融合による創造性を誘発するための環境設定について仮説が得られており、次年度のフィールドワーク(センサ開発と分子構造認識プロジェクトをプラットフォームとする国際コンペティション)において実践、検証する道筋が見えてきている。 本研究においてはこの国際コンペティションSensUsに、大学院生・ポスドクなどを参加させ、観察と分析、解釈には若手研究者を多く登用して彼らの国際的な研究マインドとスキルを醸成することを見据えている。今回、プレ実験を行うためにSalani特任助教と鹿又研究員をロンドン芸術大学セントラル・セントマーティンズ校に派遣し活動に従事させたことで、若手研究者に国際的かつ異分野越境の研究の機会を提供している。
|
今後の研究の推進方策 |
東工大研究グループ(東京藝大学生など美大生も含む)とロンドン芸術大学セントラル・セントマーティンズ校の研究グループがアーヘン工科大学でSensUs参画研究グループと合流し、外傷性脳損傷の診断治療に役立つセンサ構想と開発のためのフィールドワークを開始する。同時に観察・データ担当チームはそのコミュニケーション、インタラクション、議論を広く観察・記録し、データとして取得する。期間は2023.5-9に設定する。データ取得は大まかに2つのフェーズに分けられる(一部は同時並行で実施): ①アート思考・実践研修フェーズ:東工大の若手工学研究者が、本実験の準備として、ロンドン芸術大学のアーティストやアート専攻学生の協力を得て研修に参加し基礎的なアート思考と実践を体得する。これにより、アート思考やツールを用いて科学的コンテンツを解釈し主観的・文化的フィードバックを出力するストラテジーやスキルを取得する。(この学習プロセスにおいて起こるコミュニケーションや行動変容などもデータとして記録する)。 ②分子情報解釈コミュニケーションフェーズ:次世代センサ開発と必要な分子情報の検出をテーマに、アーヘン工科大学研究グループ(FabricationチームとMarketingチーム)の協力を得て、東工大・アーヘン工科大・ロンドン芸術大学の異分野を背景とする参加者が互いに情報提供を受け、議論をしながら基礎的な事項を学び自身の創造的解釈の誘発につなげる。 本研究においては、この2フェーズに必要な必須条件を割り出した上で繰り返し実施しデータを蓄積していくが、今年度はとくに条件の見極めに注力して試行的に調査実験を開始する。
|