研究課題/領域番号 |
22KK0007
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩城 克洋 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (70588227)
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研究分担者 |
青柳 正規 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 所長 (40011340)
松田 陽 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00771867)
川本 悠紀子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (70780881)
藤岡 洋 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特定研究員 (80723014)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
2025年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 南エトルリア地域通史 / GISによる旧街道復元 / 古代ローマ / デジタルアーカイブ / 考古学データの規格化 / 古典考古学 / エトルリア |
研究開始時の研究の概要 |
南エトルリア地域は、イタリア国内でも考古学研究が盛んな地域であるが、ローマ時代研究のみが他の時代に比べて立ち遅れている状況にある。そこで本研究では、ローマ期の都市部邸宅遺跡の発掘調査を行うことで、基礎資料の充実を図るとともに、海外共同研究者と分担して、①特定の要素に関する考古学研究、②理化学分析を通じた研究、③歴史学・パブリックアーケオロジーなどの手法を援用した分布論研究の三つのアプローチで、蓄積された資料に関する通時的な分析・研究を行う。研究によって獲得されるデータは可能な限り三次元化し、全ての細目研究を横断する形のデータ仕様を策定することによって、基幹デジタルアーカイブを構築する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、沿岸部と内陸部を連絡する旧街道の復元という基軸となる研究の目的に沿って、①考古学研究及び②理化学分析研究のアプローチから、カッツァネッロローマ時代別荘遺跡及び、サンティイスティトゥータ遺跡の既存出土資料の分析と三次元計測作業を開始した。特に、カッツァネッロローマ時代別荘遺跡の出土資料に関しては、収蔵庫の移転に伴って、収蔵データに少なからぬ混乱が生じていたので、それらの整理と復旧を行った。また新規調査の候補地について、当初予定していたグラヴィスカ近郊のサリーネ地区については、地権者の都合が変わったため同意が得られず、サン・ジョルジョ地区に関しては周辺環境の詳細な観察から、現時点での新規調査にはやや不向きであるという結論に達したため、沿岸部での候補地選定を一旦とりやめ、内陸部において改めて調査を行った結果、タルクィニア近郊、バルバラーノ・ロマーノ近郊、ボマルツォ近郊の3地点にローマ時代の遺構を伴う調査候補地を設定した。このうち、タルクィニア近郊とボマルツォ近郊の2地点については、地権者の同意が得られたので、小規模な試掘調査の準備を進めている。バルバラーノ・ロマーノ近郊の地点については、一部地権者とまだ連絡がとれておらず、引き続き調査同意に向けた交渉中である。③分布論的研究のアプローチからは、ヴァチカン図書館においてサケッティ侯爵家関連の資料コレクションを閲覧し、コルネート(タルクィニア)周辺の中世における街道網の状況確認を進めている。デジタルアーカイブの構築は、格納する個別のコンテンツデータの蓄積作業を進めながら、全体の中心になるマップを用いたインターフェースについて技術的な検討を行っている。さらに高精度GNSSを用いた現地での計測・測量作業について、インターネット経由でのリアルタイムのデータ反映について、システムを追加する作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①考古学研究及び②理化学分析研究のアプローチに関して、既存の出土資料に関する分析研究と三次元計測作業に関しては当初計画以上に進展している。特にカッツァネッロローマ時代別荘遺跡の出土資料に関しては、収蔵庫移転に伴う収蔵情報の混乱が想定していたよりも軽微なものだったため、復旧作業が2023年度前半で完了したことが大きい。新規の考古学調査に関しては、太陽光発電のパネル設置開発ブームの影響で、これまで考古学調査に対して協力的あるいは無関心であった休耕地等の地権者が非協力的なスタンスに変わる例が多く見られるなか、本研究計画の当初計画における新規調査候補地も内諾を取り消される事態となった。幸い本研究計画の海外研究協力者であるベアトリーチェ・カソカヴァッロ氏が担当したボマルツォ近郊でのパネル設置開発に伴う緊急調査において、良好なローマ期遺構の一部が検出され、この地点の調査を本研究計画とペルージャ大学の共同調査によって引き継ぐ計画が立案されたため、候補地の再選定に関わる進捗の遅れは大きく取り戻すことができた。③分布論的研究のアプローチに関して、サケッティ侯爵家に関連する中世歴史資料の収集は概ね完了している。さらにコルネート(タルクィニア)の南側、ミニョーネ川流域方面に教皇側近の別の侯爵家の領地が散在していることが分かったので、新たに関連資料の探索を開始している。本研究の成果の発信のための重要なプラットフォームであるデジタルアーカイブに関しては、アーカイブそのものの構築は当初計画より順調にすすんでおり、一般公開に向けたインターフェースの作成に取り掛かっているところである。
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今後の研究の推進方策 |
①考古学研究及び②理化学分析研究のアプローチに関して、カッツァネッロローマ時代別荘遺跡及び、サンティイスティトゥータ遺跡の既存出土資料に関しては、2024年度中に必要な三次元計測作業を完了させる。さらにペルージャ大が調査するグラヴィスカ遺跡の既存出土資料に関しても、ペルージャ大の協力のもと、必要な資料の三次元計測作業を開始する。新規の発掘調査に関しては、2024年度中に候補3地点中2地点での実際の試掘調査あるいは測量調査に着手する予定である。③分布論的研究のアプローチに関して、歴史資料に関しては、第二の侯爵家関連の資料収集に努めるとともに既収集資料の分析研究を進める。また、引き続き該当地域における分布調査と測量調査も進め、その過程における地権者を中心とする地元住民との関わりについて、パブリックアーケオロジーの観点からの記録と分析を進める。デジタルアーカイブに関しては、インターフェースの仕様策定と作成を急ぎ、2024年度前半中でのデジタルアーカイブの一部公開を予定している。
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