研究課題/領域番号 |
22KK0015
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分5:法学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中村 信男 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60267424)
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研究分担者 |
石川 真衣 東北大学, 法学研究科, 准教授 (00734740)
内藤 裕貴 東北学院大学, 法学部, 准教授 (10808322)
川島 いづみ 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50177672)
坂東 洋行 名古屋学院大学, 法学部, 教授 (60772382)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 会社の実質的支配者 / 実質的支配者開示制度 / 支配株主の義務・責任 / Beneficial Owner / 実質株主開示 / 証券市場の透明性 / 会社と株主間のエンゲージメント向上 / 実質株主の権利行使 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、株式会社その他の法人企業における実質的支配の透明化の確保と実質的支配者に対する体系的規律の構築が国際的な共通課題であるとの認識のもと、この面における法制化や実効性確保等の点で先行する英独仏の実質的支配者開示制度および同制度と機能的に連動する英独仏の支配株主責任法制・法理との比較法研究を、日本のみならず英独仏における会社法研究への理論的貢献を目指す観点から、展開するものである。本研究は、会社等における実質的支配者の開示制度を支える理論的根拠を明らかにするとともに、同制度の会社法制としての位置づけおよび支配株主責任法制等との接合の可能性・必要性を解明しようとする国際共同研究である。
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研究実績の概要 |
本研究は、株式会社その他の法人企業における実質的支配関係の透明化の確保と株式会社等における実質的支配者に対する会社法および資本市場法による体系的規律の構築が、国際的な共通課題であるとの認識のもと、この面で先行する英独仏の研究者や規制機関等と国際共同研究を遂行することで、わが国の会社法制・資本市場法制の立法論的検討はもとより、上記の共通課題に対する解決方策の検討・提言を行うことを最終目標とする。 令和5年度は、第1に、2023年6月にスタートした金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」が、証券市場の透明性確保の観点から、本研究が研究課題の一つに掲げた実質株主開示制度の導入を検討課題に含めた上で、欧州法制をモデルとする方向性を示唆したことから、研究代表者および各研究分担者が、金融法務事情2217号(2023年9月)の特集「欧州における実質株主開示規制の現状と課題」に5本の論文を寄稿したほか、研究分担者の川島教授および坂東教授は、それぞれ専門雑誌等に関連論文を発表した。また、マネーロンダリング防止等を目的とする実質的支配者の開示についても、研究代表者の中村および研究分担者の内藤准教授がそれぞれ論文を発表した。 第2に、早稲田大学がベルギー・ブリュッセルに確保する施設を利用し、2024年3月11日に、研究代表者および研究分担者、共同研究者のLorraine Talbot教授(英国バーミンガム大学ロースクール)を始めとする英独仏の研究者、フランス株式会社協会代表らの実務家、ブリュッセル自由大学の研究者等による国際ワークショップ"Appropriate Disclosure Regulation of Beneficial Owner in Listed Companies"を実施し、理論・実務に関する問題意識の共有と今後の検討課題の洗出しを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の現在までの進捗状況として、第1に、令和5年度においては、令和4年度の準備作業に加え、金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」で、本研究の検討課題の一つである実質株主開示の制度化が論点に掲げられ欧州法制を制度整備の際のモデルとする方向性が示されたことも踏まえ、研究代表者および研究分担者による複数の単著論文の発表に至った。 第2に、同ワーキング・グループでの議論の進展に伴い、本研究に対する関係者の関心が高まったため、研究代表者および研究分担者が金融庁・法務省等の関連法令の立案担当者、実務関係者との協議を行い、実質株主開示の制度化に係る実務上の論点や法制化に向けた課題を洗い出したほか、名義株主の背後にある実質株主自身による直接的な株主権行使の可能性とその具体的方策も本研究の検討項目に追加し、本研究の展開の方向性の一層の明確化と質的拡大を図ることができた。 第3に、2024年3月11日に、日本および欧州の研究者等の参加による国際ワークショップを実施し、日本側の問題意識・知見を欧州研究者が共有すると共に、欧州研究者側の理論的知見・問題意識および日本法制の動向に対する見解を日本側研究者が共有することができた。このワークショップは、本研究に参加する日本側研究者と、英独仏3か国のみならずベルギーの研究者、フランスの実務家との共同研究体制が一層強固なものとなり、2024年度・2025年度における国際共同研究の一層の進展につながり得るものとなった。 このほか、共同研究者のL.Talbot教授の助言を受け、研究成果等発信のためのウェブサイトを開設し、日本語・英語での情報発信を行っている。 現在までの本研究の進捗状況について、「当初の計画以上に進展している。」との自己評価を選択したのは、以上の理由による。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の補助事業期間は、令和4年度から令和7年度までであるところ、第1に、令和6年度以降は、過去2年度の研究実績を踏まえるとともに、実質株主開示制度の導入が当初の計画より前倒しになる可能性があることから、令和5年度に公表した論文および国際ワークショップの成果をもとに、わが国の法制が目指すべき具体的な実質株主開示制度の枠組みを立法論として提言することを目指す。その際、本研究が比較法の対象とするイギリス法・フランス法・ドイツ法が、実質株主情報の公開の有無、エンフォースメントのための具体的方策等の点で異なるため、理論および実務の両面から先行立法を比較し、日本法が採るべき方向性を探ることとする。その上で、令和6年度以降も継続的に研究成果を論文等として発表していく。 第2に、本研究の検討課題が、日本においても金融審議会で取り上げられ、今後の立法課題の一つに加えられることとなったこともあり、本研究の成果には、引き続き高い関心が関係者から寄せられている。また、前述のように、令和5年度末に国際ワークショップを実施し、所期の成果をあげることができたため、本研究の成果・知見を積極的にわが国の関連法制の改正議論のために提供する観点から、令和6年度中には、海外の研究協力者を日本に招聘して国内ミニ・シンポジウムの開催を計画している。 第3に、研究分担者の坂東教授は、令和6年度に、2024年10月12日・13日開催の日本私法学会において本研究の成果を踏まえた個別報告を行うことを予定している。 その上で、最終年度の令和7年度に早稲田大学で国際シンポジウムを開催して研究を総括すると共に、早稲田大学ブリュッセルオフィスでのワークショップに参加した日本および欧州の研究者等を共同執筆者とする英語による論文集の出版を企画する。
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