研究課題/領域番号 |
22KK0046
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三好 由純 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (10377781)
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研究分担者 |
小川 泰信 国立極地研究所, 共同研究推進系, 教授 (00362210)
松田 昇也 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (20772213)
淺村 和史 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50321568)
齊藤 慎司 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波伝搬研究センター, 主任研究員 (60528165)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
2026年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 脈動オーロラ / 数値シミュレーション / ロケット実験 / 光学観測 / 高エネルギー粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、脈動オーロラと呼ばれる、数キロ電子ボルト程度のエネルギーの電子が引き起こす数秒ごとに明滅するオーロラ発生時に、宇宙空間から数百キロ電子ボルトから数メガ電子ボルトに至る相対論的高エネルギー電子が同時に降りこむという理論の検証を目的とする。この目的を達成するために、スウェーデン宇宙物理研究所との連携によって、地上からの光学観測、レーダー観測、また観測ロケット実験を実施する。さらに、シミュレーションとの比較を通して、その物理的起源を明らかにする。EPPは中層大気オゾンの破壊を起こす可能性が指摘されており、本研究は宇宙の電子がどのように地球大気に影響を及ぼすかを明らかにするという意義を持つ。
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研究実績の概要 |
本研究は、脈動オーロラ (PsA)と呼ばれる、数キロ電子ボルト程度のエネルギーの電子が引き起こす数秒ごとに明滅するオーロラ発生時に、宇宙空間から数百キロ電子ボルトから数メガ電子ボルトに至る相対論的高エネルギー電子(EPP)が同時に降りこむという理論の検証を目的とする。本年度は、実際に連携先であるスウェーデン・王立宇宙科学研究所を訪問し、本研究の共同研究者であるUrban博士と地上からのオーロラ観測および観測ロケット実験時に関する共同観測の進め方についての議論を行った。その後、観測ロケット射場の現地視察を実施した。また、シミュレーション研究を推進し、人工衛星が観測した磁気圏のプラズマ波動と電子のデータから、超高層に降り込む電子のエネルギースペクトルを導出する手法を新たに開発した。この手法においては、電子の散乱を起こすコーラスと呼ばれるプラズマ波動の伝搬緯度がフリーパラメータであるが、それ以外の量はすべて人工衛星のその場の観測で決定できるという特徴を持つ。開発した手法によって求めたエネルギースペクトルと、地上からのレーダー観測によって導出したエネルギースペクトルについて、コーラスの伝搬緯度を変えながら比較を行ったところ、コーラスの伝搬緯度が25度程度のところでよい一致を示した。これは、コーラスが高緯度に伝搬することによって数キロ電子ボルトから数百キロ電子ボルトの電子の散乱を起こすという研究代表者らが提案したモデルと整合的である。この結果については、学会や研究会において報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工衛星が観測した磁気圏のプラズマ波動と電子のデータから、超高層に降り込む電子のエネルギースペクトルを導出する手法を新たに開発することに成功している。また、波動粒子相互作用に関するテスト粒子計算のシミュレーションの開発を進めており、波動粒子相互作用の結果から、オーロラ発光の波長依存性や高度分布の計算を行うことが可能となった。これらのシミュレーションの結果と、オーロラ光学観測や大気レーダー観測との比較を進めてきている。さらに磁気圏の波動粒子相互作用における非線形過程が、オーロラ発光に及ぼす影響に注目しながら研究を進め、オーロラの減光と非線形波動粒子相互作用で起こるphase trappingとの関係についても新たな成果を得ている。さらに、共同研究を実施しているスウェーデン・王立宇宙科学研究所の研究者とは、現地訪問も含めて連携を進めてきており、今後の研究の進め方や、観測ロケット実験時のコンフィグレーション、特に地上観測の配置などについての詳細な打ち合わせを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2026年度に予定されているオーロラに向けた観測ロケット実験を着実に実行するために、数値シミュレーションの開発を継続して実施する。特に相対論的エネルギーを持った電子の降り込み時における超高層・中層大気の電離の計算を進めるともに、降り込み電子の制動放射から発生するX線のシミュレーションの開発も行っていく。これらの電離計算は、新たに北欧で観測が始まるEISCAT_3Dレーダーとの比較が期待される。また、X線に関するシミュレーションは、観測ロケットに搭載予定のX線計測との比較として用いる予定である。また、地上観測の継続と、新たな観測についての検討も進めていく。特に新たに観測が始まるEISCAT_3Dとの連携計測を念頭に、最適な設置位置などについての調査を進めていく。さらに、「あらせ」衛星の磁気圏観測データを入力した降り込み電子スペクトルの計算を行い、計算結果とEISCATレーダー観測にもとづくエネルギースペクトルとの比較を中心に、開発したコードの検証を進めていく。
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