研究課題/領域番号 |
22KK0055
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 侑介 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (00800484)
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研究分担者 |
上杉 謙次郎 三重大学, みえの未来図共創機構, 助教 (40867305)
宮本 恭幸 東京工業大学, 工学院, 教授 (40209953)
佐々木 拓生 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 主幹研究員 (90586190)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ワイドギャップ半導体 / 窒化ガリウム / 窒化アルミニウム / GaN / CMOS / 極性制御 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では「ヘテロ極性制御によるGaN CMOS」に取り組み、高性能・低コストなGaN CMOS開発に挑戦する。さらに、海外共同研究者と協力してGaN CMOSに集積可能な「高導電性pチャネル」を開発しCMOS性能のボトルネックを解消する。最終的にGaN CMOSとパワーデバイスを同一基板上に「モノリシック集積」することで、実用化に向けた小型化・低消費電力化・高温動作を目指す。
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研究実績の概要 |
2次元電子ガスをnチャネルに利用した「窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)」は高周波パワーデバイスとして高速無線通信のインフラ増強を牽引してきた。対照的に、2次元正孔ガスは正孔移動度が小さいためpチャネルデバイスは実用化に至っていない。本研究では、高性能・低コストな相補型金属酸化膜半導体構造(CMOS)をGaNによって開発するため、「ヘテロ極性制御によるCMOS集積方法の開発」、「歪エンジニアリングによるpチャネル導電性の向上」に取り組む。 この課題達成のため、2022年度は、【①pチャネルの移動度解析】、【②表面クリーニングで生じるアルミニウム(Al)液滴の微細構造解析】、【③ナノパターン基板上窒化アルミニウム(AlN)テンプレートの微細構造解析】の3点に取り組んだ。①では、実験的に得られたpチャネルの正孔移動度が理論値よりも低くなることが明らかになり、その原因として、表面クリーニングの未実施によって生じるキャリア散乱の可能性を考察した。②では、表面クリーニングで意図せず生じるアルミニウム(Al)液滴と、これによって誘起されるAlNのエッチング抑制機構を透過電子顕微鏡(TEM)観察によって観察し、その生成機構を考察した。③では、高導電性p型チャネルを形成するため、歪制御に向けたナノパターン基板上AlN厚膜の微細構造解析に取り組んだ。これらの結果から、正孔移動度を向上させつつも、Al液滴を発生させないようなクリーニング条件の最適化の必要性が示された。加えて、歪制御に向けて導入したナノパターン構造が結晶成長中に空孔構造・転位分布を誘起するメカニズムが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では下記の4つのマイルストーン(MS)を設定してプロジェクト進行している。【MS1:CMOS動作、MS2:トランジスタ動作、MS3:ヘテロ極性制御によるp, nチャネル作製、MS4:極性制御メカニズムの解明】 2022年度は特にMS3に注力し、「歪エンジニアリングによるpチャネル導電性の向上」で重要となる【③ナノパターン基板上AlNテンプレートの微細構造解析】において大きな進展が得られた。本研究では高導電性pチャネルを達成するため、AlNテンプレートにおける歪制御が重要となる。そこで、2種類のナノパターン加工サファイア基板(NPSS)上AlN薄膜試料を準備し(試料MOHおよびHVC)、ナノパターン構造や結晶成長方法の違いによる空孔形状や転位分布をTEM観察により評価することで、効果的な歪緩和に向けた検討を行った。試料MOHでは酸窒化アルミニウム(γ-AlON)とAlNの界面でミスフィット転位が多数発生し、貫通転位密度は8.3E8 cm-2だったのに対し、サンプルHVCでは空孔周辺での転位の大幅な増大は確認されず、結果として貫通転位密度は4.7E8 cm-2となっていた。以上の結果から、AlNのテンプレートとしては試料HVCが優れていることが示唆された。 本研究成果はJ. Electron. Mater誌に掲載され、AlN/NPSS界面のナノ構造が貫通転位密度に大きな影響を及ぼすことを報告した。[Y. Nakanishi*, Y. Hayashi*, T. Hamachi, T. Tohei, Y. Nakajima, S. Xiao, K. Shojiki, H. Miyake, and A. Sakai*, J. Electron. Mater., Vol. 52, pp. 10348-1-10 (2023).]
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は各MSについて下記の項目にフォーカスしてプロジェクトを進展させる。 MS1:マスクレスフォトリソグラフィーおよび電子線リソグラフィーを使用して微細パターンを形成し、GaN CMOS回路作製のためのプロセス技術を確立する。 MS2: MOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)を作製するための絶縁膜堆積条件の探索を行う。まず、加工の容易な+c極性pチャネルに注力してMOSFET作製を進め、続いて-c極性nチャネルに着手する。 MS3:有機金属気相成長法(MOVPE)によるチャネル構造作製を行う。格子不整合の大きいGaN/AlN構造の成長において格子緩和を回避するための表面クリーニング・結晶成長条件を探索する。 MS4:表面クリーニングの有無でAlNの極性を制御する動的原理を解明するため、放射光施設SPring-8を利用した結晶成長中のその場構造解析に取り組む。放射光X線回折および反射高速電子線回折(RHEED)を利用して、単原子層分解能での表面観察に挑戦する。
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