研究課題/領域番号 |
22KK0069
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
富永 洋一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30323786)
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研究分担者 |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30466776)
田中 正樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50830387)
中野 幸司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345099)
一川 尚広 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80598798)
大橋 秀伯 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00541179)
兼橋 真二 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80553015)
木村 謙斗 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60977809)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
2026年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 固体高分子電解質 / 電極/電解質界面 / 表面改質 / 塗布・乾燥・成膜プロセス / フレキシブルLi金属二次電池 |
研究開始時の研究の概要 |
これからの低炭素社会や高度情報化社会を支えるエネルギーの貯蔵に欠かせない蓄電デバイスの研究開発は、今後の世界経済の発展を左右する最重要課題のひとつである。これまでに、リチウムイオン二次電池をはじめとする様々な蓄電池が開発されてきたが、今後はさらに高容量かつ充放電サイクル性にも優れる蓄電池が一層求められる。これまでにない優れた蓄電池を開発するためには、電極・電解質・電池作製・特性評価などの各要素研究を系統的に組織する枠組みが必要である。
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研究実績の概要 |
本研究では、固体高分子電解質(SPE)の高分子材料としての特有の固体物性に着目し、SPEを固体電解質とするLi金属二次電池の国際共同開発を目指している。当該年度は、Li負極の最も大きな問題であるデンドライトの生成を抑制し、かつSPEとの良好な界面を形成するLi表面改質技術を開発するために、その基盤研究となる装置の導入や実験環境の整備を行った。具体的には、前年度予算で導入した真空蒸着装置を用いて、Li負極のモデルとなるAl基板表面にポリアクリル酸リチウムを真空蒸着させることに成功、さらにLi金属表面への薄膜形成にも成功した。今後は、大気非暴露ユニットを用いたLi金属表面への真空蒸着を試みる。以降、2) Liイオン伝導性に優れるSPEの開発、3) 表面・界面構造の解析、4) 試作電池の充放電特性評価、につながる。最終的には、高容量かつ充放電サイクル性に優れるSPE蓄電池の基本形を創出する。従来型の蓄電池やこれまでの次世代蓄電池の研究では、Liのアロイ化やコーティング手法の開発、正極表面改質法の開発、新しいSPEの開発など、それぞれの要素研究に特化した例は数多く報告されているが、SPEを中心に各要素研究を融合した系統的かつ学際的研究にまで及ぶ共同研究は国内外を通じてほとんど例が無い。本研究は、電気化学や材料科学のみならず、化学工学や表面化学など様々な研究分野を専門とする研究者により組織されているため、系統的かつ学際的研究の取り組みが必要不可欠な本研究に適した創造性の高い研究体制である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、本予算で購入した大気非暴露型の真空蒸着装置を用いて物理蒸着法によりPAALiの極薄膜をLi表面に形成することを昨年度に引き続き検討した。液系のLiイオン二次電池において充放電特性の向上が報告されているLi表面へのポリアクリル酸リチウム(PAALi)を用いた。Li上の保護薄膜の厚さを変化させて、電池特性を測定するため、蒸着装置における蒸着時間とPAALi薄膜の膜厚の関係性を測定した。蒸着時間10分で169 nm、20 分で167 nm、30 分で212 nmの膜厚が得られることが分かった。またAFMの表面粗さの値より、蒸着時間10分の薄膜は表面が粗く島状であり、20~30分の薄膜は平坦性の高い均一な薄膜が作製できていることが示唆された。またLi箔への蒸着の結果、表面が薄黄緑色になっていたため、Li箔上にもAl基板同様にポリマー薄膜が作製できたと考えられる。電解液を用いたセルでは、EIS 測定の全てで二つの半円が見られた。左側の半円をSEI抵抗、右側の半円を電荷移動抵抗とし、等価回路を作製し抵抗値を求めた。放電前後で10~30分蒸着サンプルは薄膜なしより抵抗が低いことが分かった。よって電解液由来のSEIよりポリマー保護膜の方がLiイオンの移動、反応において可逆的でありLi/電解液界面の安定化につながると考えられる。今後は、蒸着膜形成電極を用いた電池がクーロン効率やサイクルが安定している傾向にあるかどうか、再現性を確かめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、引き続きメンバーの海外共同研究を継続する。稲澤がフェラーラ大学に渡航して化学工学の観点から正極の成膜プロセス(塗布乾燥)と膜構造の関係を明らかにする予定である。富永は、既に予備実験で効果が見られている大気圧プラズマ法を本研究に活用し、本研究の正極表面改質を達成する最適な処理条件を決定する。Liイオン伝導性に優れるカーボネート型SPEを開発する。木村はウプサラ大学に渡航してCO2/エポキシド共重合体の分子設計および合成を行い、SPEとしての最適構造を共同開発する予定である。専門の高分子合成技術を活用し、SPEの内部抵抗低減ための薄膜化技術を開発する。各電極表面および充放電前後における電極/SPE界面の構造変化を解析する。一川がシェフィールド大学に渡航して斜入射非対称X線回折法-薄膜測定法やコンダクティブ原子間力顕微鏡を駆使し、表面・界面の構造変化と充放電特性との関係を明らかにする予定である。田中は、一川・海外機関と連携して構造解析結果とLi表面改質との関係性を明らかにする。以上の成果をもとに、試作LMBの総合的な電池特性評価を行う。富永が中心となり、木村と連携してフェラーラ大学およびCIC energiguneにそれぞれ渡航して各要素研究へのフィードバックを行う予定である。あわせて、若手の田中・木村は、国際学会へ参加して様々な国・研究機関の研究者との交流を積極的に行うことで、新たな国際共同研究のネットワーク構築の基盤を作る予定である。
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