研究課題/領域番号 |
22KK0070
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐川 尚 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20225832)
|
研究分担者 |
伊原 博隆 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 特任教授 (10151648)
黄 珍光 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (20900004)
松本 一彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30574016)
|
研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
2025年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 量子ドット / 量子ロッド / ポリフェニレンビニレン / キラリティ / 円偏光 / 発光 / 一次元構造体 |
研究開始時の研究の概要 |
キラルな微細空間の空隙サイズと量子ドットや量子ロッドのサイズとの関係によって、一次元的な集積から多層状態での集積までの制御を図り、発光性半導体ナノ結晶をキラル空間中に孤立系から積層系(二次元配例、三次元配列系)までの相状態で充填する新たな発光性一次元構造体の作製を目指す。キラルな微細空間を適用する点でこれまでのアプローチとは一線を画すものであり、さらに、集積構造あるいは周期的空間形成に起因する量子共鳴発生や遷移双極子干渉増強作用に基づく超発光効果による円偏光発光強度増幅、励起子拡散伸長による円偏光発光発現領域の拡大も目指し、円偏光発光の工学的展開のための基盤を築く。
|
研究実績の概要 |
微細空間に発光性のナノ結晶を固定化あるいは充填し、位相差フィルムと組み合わせた発光性円偏光システムについて、集積構造あるいは周期的空間への充填密度を制御することにより、ナノ結晶間距離の数ナノメートルレベルでの調節と、量子共鳴増幅効果の発現を検討し、また同効果に基づく高輝度・高円偏光度の実現を検討した。発光機構を活用してつくり出す円偏光には、光強度、波形、偏光情報に加えて、発光寿命に基づく時間情報が含まれている。これらのパラメータを自在に制御する光情報多重化技術は、光記録や偽造防止技術として注目を集めているものの、各パラメータを独立に制御することは困難である。本研究では、パルス励起光の照射で生成される円偏光スペクトルの時間変化を検出することにより、時間多重化された円偏光情報の読み出しを試みた。すなわち、蛍光寿命が長い発光体としてCdSe/CdS コアシェル型量子ロッドを、蛍光寿命が短い発光体としてポリフェニレンビニレン系発光性ポリマーをそれぞれ選択した。延伸用透明ポリマーとしてエチレン酢酸ビニル共重合体を用い、発光体を封入した発光体/透明ポリマー複合フィルムをキャスト法で作製した。得られた複合フィルムを一軸延伸することより直線偏光発光フィルムをそれぞれ作製した。これらの直線偏光発光フィルムを位相差フィルム上に積層し,多層型円偏光コンバータとした。令和5年度は、ボルドー大学との国際共同研究により、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いたフィルム内部における発光体のミクロな秩序構造評価を行うとともに、発光寿命が異なる2種類の直線偏光発光フィルムと位相差フィルムを積層した多層型発光式円偏光コンバータについて、パルス励起光の照射で生成される円偏光スペクトルの時間変化を検出することにより、時間変化する円偏光スペクトルの生成とその読み出しに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
?微細空間に発光性のナノ結晶を固定化あるいは充填し、位相差フィルムと組み合わせた発光性円偏光システムについて、集積構造あるいは周期的空間への充填密度を制御することにより、ナノ結晶間距離の数ナノメートルレベルでの調節と、量子共鳴増幅効果の発現を検討し、また同効果に基づく高輝度・高円偏光度の実現を検討した。すなわち、量子ドット・量子ロッド等の発光体を微細な空間に配列させる手法の確立と、量子共鳴増幅効果等の検出を通して、円偏光発光の工学的展開のための基盤の構築を目的とし、(1)微細空間設計方法の開発、(2)発光性ナノ結晶等発光体の合成と選択、(3)発光体の集積と基本光学特性の評価、(4)量子共鳴による超発光効果等の検出を段階的に検討した。とりわけ、微細空間の空隙サイズと量子ドットや量子ロッドのサイズとの関係によって、一次元的な集積から多層状態の集積までの制御を図り、発光体を微細空間中に孤立系から積層系(二次元配例、三次元配列系)までの相状態で充填する新たな発光性一次元構造体の作製を目指した。これまでに、種々のサイズ及びアスペクト比の量子ドット及び量子ロッドを合成し、ナノサイズからサブミクロンサイズに至る空間に発光体を固定化あるいは充填した複合材料の作製を行ない、複合材料の異方性、キラリティを評価した。さらに、発光寿命が異なる2種類の直線偏光発光フィルムと位相差フィルムを積層した多層型発光式円偏光コンバータについて、パルス励起光の照射で生成される円偏光スペクトルの時間変化を検出することにより、時間変化する円偏光スペクトルの生成とその読み出しに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
合成した量子ドット及び量子ロッドについて、励起子拡散挙動、状態密度(I型あるいは擬II型)、量子収率、寿命、その他のパラメータとサイズ及びアスペクト比との相関を調べつつ、これらの発光体を含有する直線偏光発光フィルムの共焦点蛍光顕微鏡観察、円偏光発光能の評価をボルドー大学で継続し、発光体のフィルム中での集積密度と配向及び発光特性との関係を調べる。これらの調査から得られた知見を基に、ナ発光体間距離の数ナノメートルレベルでの調節と、量子共鳴増幅効果の発現を検討し、同効果に基づく高輝度・高円偏光度の実現を検討する。さらに微細空間での発光体について、孤立系から積層系(二次元配列、三次元配列系)に至る階層構造の構築を目指し、それらの発光特性を評価する。
|