研究課題/領域番号 |
22KK0078
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
伊福 伸介 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (70402980)
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研究分担者 |
佐々木 紀彦 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (30962328)
上中 弘典 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40397849)
野上 敏材 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60402963)
遠藤 常嘉 鳥取大学, 農学部, 教授 (70423259)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
2024年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | キチン / ナノファイバー / オリゴ糖 / バングラデシュ / 土壌 / 微生物 / エビ殻 / 農産物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、エビ殻からキチンナノファイバーを製造し、その農産物に対する機能を評価し、農業分野での利用開発を進める。国内ではカニの漁獲量が減少傾向にある。一方、エビは陸上で養殖できるため、安定に生産できる。その様な地の利を活かして、肥料や農薬として活用できれば、大規模な利用が見込める。そこで、相手国機関と連携して、次の3点について学術研究を実施する。 1. エビ殻からのキチンナノファイバーの製造と評価 2. キチンナノファイバーの現地農産物に対する効果の検証 3. モデル化合物を用いた機能性評価と発生メカニズムの解明
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研究実績の概要 |
(1)エビ殻由来キチンナノファイバーの製造:キチンナノファイバーの製造:バングラデシュで養殖の盛んなブラックタイガーからキチンナノファイバーを製造できた。得られたナノファイバーについて、形状や化学構造、諸物性について基礎データを集積した。抽出方法の改良:精製操作の簡略化と製造コストの抑制を目的にタンパクや灰分等を敢えて残留させたまま粉砕して、得られる粉砕物の形状や組成、諸物性データを集積した。 (2)植物と微生物に対する機能の検証:キチンナノファイバーを土壌施用して栽培したイネにおける病害抵抗性の評価をこれまでに実施し、エビ殻はナノファイバー化しないと病害抵抗性が誘導されないこと、ならびにカニ殻よりもエビ殻由来のキチンナノファイバーの方が抵抗性の誘導能が高いことを明らかにしている。本年度はこれらの結果の反復試験を行い、論文化に必要なデータを蓄積した。また、相手国の研究者と共同で、現地で製造されたエビ殻由来キチンナノファイバーを施用した栽培土壌を用いてイネとトマトをポット栽培し、生育に対する効果を現地の環境にて調査した。その結果、どちらの作物においてもキチンナノファイバーの施用による生育促進効果が認められた。また、窒素肥料の代替効果も認められた。これを踏まえて本年度の相手国訪問時にこれら結果を実際に確認すると共に、施用方法の改善点等を指摘した上で、農地の土壌・水の分析も含めた来年度以降の研究実施計画を決定した。また現地の農業関連機関に訪問し、相手国における栽培方法の情報収集が行える環境を整備した。 (3)モデル化合物の合成:キチンオリゴ糖からの直接的なオリゴ糖糖鎖ビルデングブロックの調製を検討した。セロビオースをモデル反応にして、二糖ビルデングブロックの調製条件を検討した上で、キトオリゴ糖に適用した。水の添加など、条件を検討することで、キトビオース二糖の保護体の生成を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次に示す、(1)ナノファイバーの製造、(2)植物と微生物に対する機能の検証、(3)モデル化合物の合成について取り組み、当初に計画していたマイルストーンよりも早く研究が進んでいる。 (1)キチンナノファイバーの製造:バングラデシュで養殖の盛んなブラックタイガーからキチンナノファイバーを製造できた。得られたナノファイバーについて、形状や化学構造、諸物性について基礎データを集積した。抽出方法の改良:精製操作の簡略化と製造コストの抑制を目的にタンパクや灰分等を敢えて残留させたまま粉砕して、得られる粉砕物の形状や組成、諸物性データを集積した。 (2)エビ殻はナノファイバー化しないと病害抵抗性が誘導されないこと、ならびにカニ殻よりもエビ殻由来のキチンナノファイバーの方が抵抗性の誘導能が高いことを明らかにしている。本年度は論文化に必要なデータを蓄積した。また、相手国の研究者と共同で、現地で製造されたエビ殻由来キチンナノファイバーを施用した栽培土壌を用いてイネとトマトをポット栽培し、生育に対する効果を現地の環境にて調査した。その結果、どちらの作物においてもキチンナノファイバーの施用による生育促進効果が認められた。また、窒素肥料の代替効果も認められた。これを踏まえて本年度の相手国訪問時にこれら結果を実際に確認すると共に、施用方法の改善点等を指摘した上で、農地の土壌・水の分析も含めた来年度以降の研究実施計画を決定した。また現地の農業関連機関に訪問し、相手国における栽培方法の情報収集が行える環境を整備した。 (3)キチンオリゴ糖からの直接的なオリゴ糖糖鎖ビルデングブロックの調製を検討した。セロビオースをモデル反応にして、二糖ビルデングブロックの調製条件を検討した上で、キトオリゴ糖に適用した。水の添加など、条件を検討することで、キトビオース二糖の保護体の生成を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
計画書に従い、今後も(1)ナノファイバーの製造、(2)植物と微生物に対する機能の検証、(3)モデル化合物の合成について取り組む。 (1)エビ殻からキチンを抽出し、粉砕によってナノファイバーに変換する。得られるナノファイバーについて、形状や化学構造、諸物性について基礎データを集積してカニ殻由来ナノファイバーと比較する。また、植物に対する効果を検証するために共同研究者に提供する。一方、タンパクや灰分等を敢えて残留させたまま粉砕して、得られる粉砕物の形状や組成、諸物性データを集積する。そして、検証するために共同研究者に提供する。また、キチンナノファイバーの製造や評価に係る技術を相手国協力機関に移転する。 (2)バングラデシュの土壌・水、栽培方法、気候に関する情報を収集し、栽培試験方法を検証する。エビ殻とカニ殻由来のキチンナノファイバーの植物や微生物に対する機能の違いの有無を検証する。具体的には、栽培方法の情報収集、農地の土壌・水の分析、現地土壌を用いた栽培試験、現地疑似土壌を用いた栽培試験、土壌微生物との共生促進効果の検証、土壌改良効果の調査、現地土壌の生物分析について取り組む。 (3)キチンやキトサンの構造を規範としたオリゴ糖を分子設計し、電気化学的手法によるグリコシル化反応を駆使して、化学構造と重合度が厳密に規制されたモデル化合物を合成する。合成したキチンキトサンのモデルオリゴ糖を使用して、植物に対する機能を評価する。機能性データを集積して、ナノファイバーが機能をもたらす発生メカニズムを解明する。
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