研究課題/領域番号 |
22KK0085
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
志和地 弘信 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (40385505)
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研究分担者 |
寺田 順紀 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (30803845)
OUYABE MICHEL 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (30967005)
菊野 日出彦 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (50638608)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
2025年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 作物学 / 育種学 / 植物生育促進細菌 / ヤムイモ / イネ / メタゲノム解析 / 微生物工学 / 窒素固定細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はヤムイモ(Dioscorea spp.)から発見された植物生育促進細菌(Plant Growth Promoting Bacteria: PGPB)の能力や作物への接種効果を明らかにして、作物生産における細菌の利用を確立するとともに、化学肥料を低減した持続的な農業を目指すものである。ヤムイモには多くの種類のPGPBが共生することが明らかになった。PGPBは豊かな土壌環境で多様性があり、有機物主体の肥料の使用で、持続的な作物生産が可能になると考えられる。本研究では微生物の共生を利用した作物の肥培管理技術の開発を行う。
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研究実績の概要 |
本研究はヤムイモ(Dioscorea spp.)に共生する植物生育促進細菌(Plant Growth Promoting Bacteria: PGPB)を用いた作物栽培技術の開発を目指すものである。ヤムイモとはヤマノイモ科の植物の食用種を指す。西アフリカではヤムイモは地域の食料として重要な作物であるが、その重要性が熱帯地域以外では適切に認識されておらず、研究や品種改良の対象とされてこなかった。申請者らは科学研究費の助成を受けて国際熱帯農業研究所(International Institute of Tropical Agriculture:IITA ナイジェリア)とヤムイモに関する共同研究を行ってきた。そして、ヤムイモには窒素固定をし、低肥沃土壌で生育できる系統があることを発見した。それらには窒素固定細菌や植物生育促進細菌が共生することが明らかになった。PGPBは窒素固定、リンの可溶化、植物ホルモンの産生などにより植物の生育促進や植物病原菌への拮抗作用を持つ細菌である。私たちはこれまでに多数のPGPBをヤムイモから分離・同定した。そのPGPBをダイジョ(ヤムイモの一種)及びイネに接種したところ、いくつかの細菌で生育に促進効果が認められた(Liswadiratanakul et al. 2021; Ouyabe et al. 2020)。また、蛍光タンパク質を組み込んだヤムイモ由来のGFP Agrobacterium sp.をダイジョ、ナガイモ、イネに接種したところ、根から侵入する様子が確認できた(森ら2021)。これらの結果からヤムイモ由来のPGPBはヤマノイモ科作物やイネの栽培において利用できる可能性が考えられた。植物共生エンドファイトを利用した作物の栽培技術の開発は化学肥料などの低減を目指す次世代の技術として期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤムイモから分離・培養される窒素固定細菌はProteobacteriaが多い。ヤムイモの細菌のメタ16S解析を行った結果、細菌は5属のProteobacteriaが主であり、これらがダイジョの生育促進に関与していると考えられた(Kihara et al. 2022)。ナイジェリアのIITAで栽培されたホワイトヤムの8系統(ヤムイモの一種)にも多くの種類の窒素固定細菌が共生していることが確認され、ホワイトヤムの細菌叢もProteobacteriaが主であった(未発表)。そこで、PGPB活性の高い5種類のProteobacteriaをダイジョA-19系統に接種した結果、人為的な細菌の置換が可能であることが確認されたが生育の促進が認められなかった(Liswadiratanakul et al. 2023)。ジネンジョでは4種類のPGPBの接種によってリン供給、根の生育促進が確かめられた(未発表)。次に4系統のダイジョにPGPBに接種した結果、生育に及ぼす効果は系統によって異なった。イネへのPGPBの接種は陸稲の品種を用いて行なった。接種細菌はRhizobium sp.とEnterobacter sp.から選んだ。イネの生育は施肥量の影響が確認されたが、細菌の接種の効果が見られなかった。現在、イネの細菌のメタゲノム解析を進めており、その結果を反映した細菌の選抜を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
PGPBが特定され、細菌叢が明らかになったことから細菌を用いた作物栽培への実用的な技術開発に研究の主体を移していく。ヤムイモから単離した窒素固定細菌をイネに接種して、窒素の固定能力を調べ、細菌の農業資材としての汎用性を検討する。ヤムイモの細菌フローラが明らかになったことから、これまでに単離・同定した細菌を組み合わせて、生物肥料資材としてのパッケージを作成し、接種試験を行っている。また、アフリカのホワイトヤムについても細菌叢が明らかになったことから、窒素固定細菌叢のパッケージを作成し、ナイジェリアで接種試験を開始する。さらに、ヤムイモから分離した窒素固定細菌はイネ科に広く感染する可能性があり、生物資材として汎用性の高い細菌グループを明らかにしたい。 窒素固定細菌は東京農業大学の菌株保存室に登録し、遺伝資源としてデータベース化を行っている。
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