研究課題/領域番号 |
22KK0086
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮本 敏澄 北海道大学, 農学研究院, 講師 (00343012)
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研究分担者 |
原口 昭 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (50271630)
礒田 玲華 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 研究員 (50829009)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
2026年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 菌糸マットの発達-消失過程 / 土壌漂白層の発達度 / 菌糸マット内の微生物群集 / 植生変化 / リターバッグ / 菌糸マット / イボタケ類 / 微生物群集 / 土壌酸性化作用 / ポドゾル / 土壌の酸性化作用 / 北方針葉樹林 |
研究開始時の研究の概要 |
温暖化等の影響により北欧の森林で菌根菌とポドゾルが減少しつつある。そのため酸性で貧栄養土壌であるポドゾルに成立する北方林特有の植生が変化・衰退してしまう可能性が懸念される。菌根菌を含む微生物は有機酸を分泌あるいは落葉などの有機物分解により産生し、土壌を酸性化することでポドゾルの生成に関わると考えられている。本研究ではフィンランドの森林において菌根菌のイボタケ類の菌糸マットを構成し土壌酸性化に寄与する微生物群を特定する。さらに菌糸マットの発達と消失におけるポドゾル生成プロセスの時間スケールを解明する。
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研究実績の概要 |
イボタケ類の菌糸マットの発達-消失過程とポドゾル化作用の活性の盛衰の関係を明らかにするために、イボタケ類の菌糸マットの移動方向に沿った、土壌酸性化に関わる遺伝子群mRNAの土壌中での発現量、土壌漂白層の発達度、菌糸マット内の微生物群集、植生変化の調査を行うために固定調査地の設定を行った。そのために、フィンランド東部でヨーロッパアカマツとヨーロッパトウヒを主体とする天然林で、林齢が約170年のやや老成林土壌で植生が大きく撹乱されていない天然林内で固定調査地の設定を選定した。今年度は、比較的高密度にイボタケ類の菌糸マットが分布しているサイトに固定調査地を設置することができた。イボタケ類の菌糸マットの発達-消失過程は子実体の発生と地下の菌糸マットの存在と形状、その直下の土壌漂白層の発達度、および植生の変化パタンから推定した。表層の土壌有機物層を一部剥がすことで菌糸マットの存在を確認し、合計5か所の菌糸マット縁部の位置を記録した。同時に菌糸マット縁部にマーキングの杭打ちを行った。今後、定期的に杭から菌糸マット縁部の距離を測定することで、菌糸マットの移動方向や移動速度の推定を行うことができる。各菌糸マットについては、発達-消失過程に沿った直線状に4地点を選定し、土壌断面のプロファイリングと、植生記載と標本の採集を行った。さらに表層の土壌有機物層を剥がし、発達-消失過程に沿った4地点にリターバッグを菌糸マット表面に接するように設置した。リターバッグには、あらかじめ秤量した林床の土壌有機物を封入した。それぞれに土壌中の温度測定を行うためにデータロガーを設置した。さらに、リターバッグを設置した近くからDNA抽出用に層位別の土壌サンプルを採集した。土壌サンプルは東フィンランド大学の実験室に持ち帰り、土壌微生物群集の解析を目的として、DNA抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定通りフィンランドの共同研究者2名と日本から研究者3名が調査地に訪れ、研究計画について協議を進め、菌糸マットの確認と調査サイトの設定を行うことができた。本研究テーマを遂行するにあたり最も重要な課題の一つである調査地の選定については、比較的よく保存されたフィンランドの老齢針葉樹林においてイボタケ類の菌糸マットの発達-消失過程とポドゾル化作用の活性の盛衰の関係を明らかにするために、イボタケ類の菌糸マットの移動方向に沿った、土壌酸性化に関わる遺伝子群mRNAの土壌中での発現量、土壌漂白層の発達度、菌糸マット内の微生物群集、植生変化など様々な項目について定期的に測定することが可能なサイトを発見することができた。また今回、このサイトで植生調査、土壌断面調査の他に菌糸マットの位置情報や温度測定ロガー、リターバッグの設置を行うことができた。共同研究を進める東フィンランド大学の実験施設において、微生物群集の解析を行うために採集した土壌からはDNAの抽出をスムースに行うことができた。したがって、フィンランドでの野外調査のスタートとなった今年度の進捗は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に土壌から抽出したDNAから土壌微生物群集の解析、採集した植物サンプルから安定同位体比の分析を進め、イボタケ類の菌糸マットの発達-消失過程における推移状況を明らかにする。環境条件が異なった場合でも結果が同様となるのかを確かめるために、新たなサイトについても引き続きイボタケ類の菌糸マットを探索し調査サイトの設定を行う。さらに、すでに設定した固定調査地も含めて、イボタケ類の菌糸マットの発達-消失過程に沿って、土壌酸性化に関わる遺伝子群mRNAの土壌中での発現量、土壌中の有機酸含有量、シュウ酸カルシウム結晶の沈積、などがどのように推移するのかを明らかにするために、土壌のサンプリングと分析作業を進めてゆく。
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