研究課題/領域番号 |
22KK0092
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分41:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高田 晋史 神戸大学, 農学研究科, 助教 (90739781)
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研究分担者 |
山口 創 公立鳥取環境大学, 環境学部, 講師 (10709281)
衛藤 彬史 兵庫県立人と自然の博物館, 兵庫県立人と自然の博物館, 研究員(移行) (50778454)
眞鍋 邦大 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (90845033)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2026年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 世界農業遺産 / GIASH / 伝統的農業システム / 動的保全 / 中国重要農業文化遺産 / 進化メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
世界農業遺産地域などに現存する伝統的農業システムは、新たな技術を取り入れながら未来に継承する動的保全の考え方に基づいた保全が求められている。しかし、伝統的農業システムにおける過去から現在にかけての変遷メカニズムは解明されておらず、この視点は動的保全においても重要である。 本研究では、日本と中国の世界農業遺産地域(国レベルの農業遺産も含む)を対象に、生物学の進化メカニズムを援用しながら、内外の環境が変化する中で、伝統的農業システムの何が残り、何が変わったかを、農法、知識継承、地域資源管理等の点から複眼的に明らかにする。そして、導き出した進化メカニズムをもとに望ましい動的保全のあり方を提示する。
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研究実績の概要 |
今年度は、①進化論に基づく理論的枠組みの構築、②国内における世界農業遺産地域での基礎調査を行なった。 ①については、進化生物学者を招いた研究会を開催し、進化論に関する理解を深めるとともに、進化生物学者からの助言を踏まえながら、進化論の枠組みの本研究への援用について検討した。 ②については、徳島県にし阿波地域と静岡県伊豆地域で基礎調査を実施した。まず、徳島県にし阿波地域では、主に3つの視点から調査を行った1つ目は、伝統的農業システムの根幹をなす農法の変化を把握するために、80歳以上の高齢農家に対し質的調査を実施した。この調査をもとに、過去から現在にかけての農法の変化とその背景について整理した。2つ目は、全域に普及している農泊世帯を対象に質的調査を実施し、農泊経営と農法及び伝統食の保全との関係について整理した。3つ目は、農法に関するナレッジがどのように継承されているのかという視点から、50から60歳代の農家に対してヒアリング調査を行い、経営形態とナレッジの継承との関係について整理した。この他、県農業支援センターには地域における農業経営の概要や農法の変化状況について、徳島剣山世界農業遺産推進協議会事務局には世界農業遺産認定までのプロセスや動的保全計画についてのヒアリングを行った。 静岡県伊豆地域では、行政担当者に対してはわさび栽培の歴史的経緯、農家に対しては農業経営や農法についてのヒアリングを行い、わさび栽培の成立と普及、産地化の経緯、流通構造の変遷についての整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、本研究における理論的枠組みのベースとなる進化論について、専門家(進化生物学者)を交えて議論をすることで理論構築に関する議論が大いに進展した。今後も引き続き専門家を交えながら議論を行うことで、より実態にそくした理論構築を目指す。 次に、徳島県にし阿波地域と静岡県伊豆地域で基礎調査では、今後の研究においてベースとなるデータや情報を収集することができた。特に、徳島県にし阿波地域では複数回の調査で、伝統的農業システムの保全に関わる多様なアクターへの調査を実施することができ、次年度以降の具体的な研究課題の設定につながった。また、静岡県伊豆地域での調査から、伊豆地域の事例が本研究において十分示唆に富むものであることが確認でき、次年度以降も継続して調査研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、進化論をベースにした理論的枠組みの構築については、昨年度と同様、専門家を交えての議論を継続し、実態にそくした理論構築を目指す。 次に、日本と中国における事例研究については以下の内容で進めていく予定である。 日本の事例研究については、昨年度実施した基礎調査の成果をふまえ、徳島県にし阿波地域と静岡県伊豆地域及び静岡地域で実態調査を行い、分析結果を論文にまとめて学術雑誌に発表する。具体的に、にし阿波地域では、伝統的農業システムの核である農法に着目し、過去から現在にかけて農法がどのよう変容したのかを社会経済環境の変化に着目しながら分析する。また、農泊経営と伝統的農業システムの保全との関係については、地域内の農泊世帯に対してアンケート調査を行い定量的な分析を行う。この他、農業経営形態とナレッジ継承の関係についての調査研究も継続して行う。静岡県では調査地を静岡地域にまで広げ、水わさびの市場及び流通構造の変化や災害などと伝統的農業システムの保全との関係に着目した調査研究を行う。 中国の事例研究については、中国への渡航規制が緩和されつつあるため、9月に内モンゴル自治区武川県、3月に雲南省元陽県での調査に向けた準備を行う。具体的には、中国の研究協力者とより密度の濃い情報交換を行うとともに、必要に応じて代表者が中国に渡航し研究協力者と対面で調査に向けた打ち合わせと意見交換を行う。
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