研究課題/領域番号 |
22KK0099
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅田 秀基 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20399041)
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研究分担者 |
椎村 祐樹 久留米大学, 付置研究所, 助教 (40551297)
堤 尚孝 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (70963495)
林 到ヒョン 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50721883)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | Gタンパク質共役受容体 / グレリン受容体 / バイアスシグナリング / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 / バイスシグナリング |
研究開始時の研究の概要 |
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、細胞膜に存在し、細胞外の情報を細胞内へ伝達する重要な役割を担う。そのため重要な創薬標的である。本研究では、食欲や成長ホルモンの分泌に重要な役割を担うGPCRであるグレリン受容体に焦点をあて、その特徴的なシグナル伝達機構を構造から明らかにし、創薬に向けた重要な情報を提供する。
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研究実績の概要 |
当該年度において、国際共同研究先であるスタンフォード大学医学部のコビルカ博士の元でβ-アレスチンおよびGPCRのリン酸化酵素であるGRK-2、GRK-5の精製方法、Expi細胞を用いたGHSRの生産およびFLAG抗体を用いたGPCRの生産方法、これらのサンプルを用いたGPCRのリン酸化からβ-アレスチンとの共役方法など、構造研究に至るまでの非常に多岐にわたる技術、手法を学ぶことができた。また、帰国後、これらの技術はすべて京都大学でも再現し、安定的にGHSRの構造研究に資するサンプルが得られるようになるなど今年の研究非常に進展した。これらの技術、手法を用いて、アゴニストが結合したGHSRのリン酸化の確認、およびβ-アレスチンがリン酸化GHSRに結合することが確認された。しかしながら、これらの検討によりGHSRとβ-アレスチンの親和性が低いことが明らかとなった。現在、この問題点の解決法を検討中である。 また、研究代表者の浅田、イムは、本研究の技術を応用し、名古屋大学の清中研と共同でBiochem Biophys Res Commun誌に“Crystal structure reveals the binding mode and selectivity of a photoswitchable ligand for the adenosine A2A receptor” (DOI: 10.1016/j.bbrc.2023.149393) という論文を発表した。さらに共同研究者の堤は、本研究の構造研究の核となる技術を用いた結果をThe 4th European Chemokine and Cell Migration Conference (ECMC2023)の招待公演において、”Structural evolution of human cytomegalovirus GPCRs US27 and US28” というタイトルで発表するなど、本研究に関連する研究活動を精力的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、我々は、標的であるグレリン受容体(GHSR)は昆虫細胞を用いた生産、および精製を行っていたが、安定に生産することが困難であった。しかし、コビルカ研究室でこの発現宿主をExpi細胞に変更し、FLAG抗体を用いた精製に切り替えたところ、アゴニスト存在下で安定に精製することが可能となった。また、GPCRのリン酸化酵素であるGRK-2、GRK-5やβ-アレスチンの発現、精製手法も確立していなかったが、これらの技術・手法もコビルカ研究室で学び、我々のものにすることができた。これらは本研究の進捗において非常に重要であると考えられる。 精製可能となったGHSRを用いて、GRKによりリン酸化するかを確認した結果、GRK-5はGHSRをリン酸化させないが、GRK-2は効率よくGHSRをリン酸化することが確認された。これらの結果に基づいて、精製したGHSRをGRK-2によりリン酸化させた後、とβ-アレスチンの共役を試みた結果、GHSRはβ-アレスチンと共役することが確認できた。しかしながら、その共役は非常に弱い可能性が示唆される結果であり、この改善が今後の課外となると考えられるが、全体の進捗としては概ね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、リン酸化GHSRはβ-アレスチンと共役するが、その効率は低いことわかった。これは今後の構造研究の大きな障害となることが考えられ、これらの効率をいかに上げるかが重要となる。その方針の一つとして、GHSRのC末端をバソプレッシン受容体V2(V2R)のそれと置換する方法が考えられる。V2Rは、β-アレスチンとの親和性が高い受容体として注目されており、V2Rおよび、V2RのC末端に置換されたGPCRとβ-アレスチンの複合体構造が決定されていることから、GHSRのC末端をV2Rと置換することでβ-アレスチンとの親和性を向上させることが可能であると考えられる。現在、GHSRのC末端をV2Rに置換した変異体の作製およびその発現、精製手法の確立をするための準備を行っている。また、野生型GHSR-β-アレスチン複合体の安定化の確立手法として、これらの複合体を認識する抗体の取得も考えている。こちらは、抗原の準備など難易度が高いと考えられるが、その準備を始めようとしているところである。今後、これらの手法によりβ-アレスチンとの複合体の構造を決定したいと考えている。
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