研究課題/領域番号 |
22KK0139
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
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研究分担者 |
辻村 恭憲 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00548935)
那小屋 公太 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10806491)
吉原 翠 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70882330)
真柄 仁 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90452060)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
2024年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2023年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 歯科 / 嚥下 / 摂食嚥下障害 / 神経ネットワーク / 廃用 / 疾患モデル |
研究開始時の研究の概要 |
呼吸と嚥下の末梢制御メカニズム研究の第一人者であるJohns HopkinsのProf. Canning,疾患動物モデルの嚥下機能評価を確立してきたUniversity of MissouriのDr. Leverらとともに,咳嗽研究の技術を活用して嚥下反射誘発に関わる神経回路網を解明すること,モデル動物を用いて,疾患がもたらす運動病態を神経生理学的に明らかにすること,さらに口腔機能との関連を明らかにすることを研究目標とする.摂食嚥下障害の病態解明から,効率的な機能回復への足掛かりにつながる基礎データを提供することで摂食嚥下障害の臨床における問題解決へつながる成果獲得を目指す.
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研究実績の概要 |
咳嗽研究を発端とした嚥下反射誘発の末梢機構解明のために,Johns Hopkinsにて行った末梢のATP放出と嚥下誘発機構との関連研究により,食道内へのエア・蒸留水(DW)刺激誘発性ATP放出にはTRPチャネルまたはPiezo1チャネルが関わることが示された.さらに,刺激様式として,エアによる機械刺激よりもDW刺激効果が高かったことは,何らかの水応答性受容体の関与を示唆していた.さらに,食道内へのDW刺激はコントロールに比較して,嚥下誘発効果も高かった.これまでの実験により,我々は低浸透圧刺激によるATP放出に関与する受容体としてTRPV4受容体の関与を考え,TRPV4受容体の選択的アゴニストおよびアンタゴニストを用いた食道内放出ATP計測を行ったところ,有意な放出の抑制が認められている.加えて,嚥下実験を行う予定としている.さらに,末梢の受容機構のひとつにカリウムチャネルが関与するという過去の報告をもとにカリウム刺激と嚥下誘発との関連を電気生理学的,組織学的に調べたところ,カリウムイオン依存性の嚥下応答の増加,上喉頭神経の応答増加,内向き整流カリウムチャネルのうち,中枢に発現するATP依存性カリウムKirチャネル(Kir6.2)や神経に発現するKir3.1が咽頭喉頭にも発現しており,これらが関わっていることを示した.一方,軟食がもたらす咀嚼筋の廃用,分泌されるHemopexinが筋,血管内,脳内(海馬)にて観察されるか否かを確認する目的での実験のうち,Pellet,Powder pelletを用いた実験により,咀嚼時のみならず,一日の咀嚼筋活動量もまた後者で有意に減少しているが,長期的には体長の変化が認められないことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Johns Hopkinsにて行っている実験から,末梢のATP放出と嚥下誘発機構との関連,ATP放出と嚥下誘発との関連を明らかにしている.一方,ATP放出に関わるトリガーについては,浸透圧受容体が候補として挙げられている.一方,カリウムイオンに焦点を絞った末梢の受容機構解明実験では,カリウムイオンが嚥下誘発に関わること,候補受容体として内向き整流カリウムチャネルのうち,中枢に発現するATP依存性カリウムKirチャネル(Kir6.2)や神経に発現するKir3.1が咽頭喉頭にも発現しており,これらが関わっていることを示した.障害モデルを用いた摂食嚥下運動の評価を行う実験では,その第一弾として一方,軟食がもたらす咀嚼筋の廃用,分泌されるHemopexinが筋,血管内,脳内(海馬)にて観察されるか否かを確認する目的での実験のうち,Pellet,Powder pelletを用いた実験により,咀嚼時のみならず,一日の咀嚼筋活動量もまた後者で有意に減少しているが,長期的には体長の変化が認められないことを明らかにしている.
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今後の研究の推進方策 |
1.食道の上皮および筋層のPCRを行い,Piezo1,TRPV4,VRAC(Volume-Regulated Anion Channel:低浸透圧に応答する陰イオン透過チャネル) ,P2X受容体等の発現について検証する方針としている. 2.カリウム依存性嚥下誘発応答に関して,Kir6.2,Kir3.1以外の受容体の関与を明らかにする.さらにこれらの応答が細胞外のイオンバランスによって抑制から促進につながることをIn vitro実験で明らかにする. 3.老齢モデルを用いて,軟食がもたらす咀嚼筋の廃用,分泌されるHemopexinが筋,血管内,脳内(海馬)にて観察されるか否かを確認し,さらに行動学的実験にて海馬における神経新生への影響を確認する.
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