研究課題/領域番号 |
22KK0165
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
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研究分担者 |
中田 典秀 神奈川大学, 化学生命学部, 准教授 (00391615)
田中 厚資 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環領域, 研究員 (10896327)
水川 薫子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (50636868)
熊田 英峰 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (60318194)
楊 美玉 東京農工大学, 農学部, 産学官連携研究員 (60931467)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 熱帯アジア / 廃棄物埋立処分場 / 合成甘味料 / 多環芳香族炭化水素 / ホパン / フィリピン / マレーシア / インドネシア / 環境汚染 / 屎尿汚染 / 浸出水 / 堆積物 / パンデミック / 化石燃料 / マーカー成分 / モニタリング / 経年変化 |
研究開始時の研究の概要 |
パンデミックに伴う経済の停滞から、再生可能エネルギーに依拠し持続可能な開発目標(SDGs)に沿ったシステム再構築を目指す動き(グリーンリカバリー)が世界的に広がっている。熱帯アジア5ヵ国(マレーシア、フィリピン、タイ、インド、インドネシア)におけるグリーンリカバリーを環境面から評価するために、経済回復が本格的に始まる前のベンチマークになる汚染状況データを取得することが必要である。本研究では、熱帯アジア諸国において現地の研究者と共同で調査を行い、化石燃料の使用や様々な人間活動の指標となるマーカー物質を分析する。分析結果はクラウドで5ヵ国の研究者と共有し、オンラインワークショップを行い、解析する。
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研究実績の概要 |
現地調査は2023年7月にジャカルタ(インドネシア)および2023年9月にマニラ(フィリピン)で行った。ジャカルタの調査は、ランプーン大学のRinawati氏により、コーディネートされ、市内運河10地点で水試料と堆積物試料、廃棄物埋立処分場浸出水4試料、ジャカルタ湾海岸漂着レジンペレットを採取した。水試料は現地の研究室において、ろ過および固相抽出を施した。マニラの調査は、フィリピン大学のCharita Kwan氏により、コーディネートされ、市内運河6地点、市内を縦断するパシック川8地点で河川水と堆積物、廃棄物埋立処分場(Payatas処分場)で浸出水3試料、マニラ湾海岸漂着レジンペレットを採取した。水試料は現地の研究室において、ろ過および固相抽出を施した。 冷凍して日本に持ち帰った水試料(ろ液)のうち、ジャカルタの試料について、合成甘味料の分析を行い、結果を2010年の観測結果と比較した。分析はオンライン濃縮装置付きLC-MS/MSで行った。未処理下水の指標となるサッカリンが検出され、サッカリン/アセスルファム比は中央値で0.5程度で2010年と同程度であり、下水道の普及が進んでいないことが確認された。 マレーシアとインドネシアの堆積物試料について、多環芳香族炭化水素類(PAHs)、ホパンの分析を行った。堆積物を凍結乾燥させたのち、ASEにより加圧流体抽出し、サロゲートを添加し、2段階のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画・精製し、GC-MSを用いて同定・定量した。PAHs濃度は両国とも経年的に大きく変化していない一方で、石油汚染指標のホパン濃度及びMP/P比は経年的に低下傾向を示していた。このことから、2000年代に主要な負荷源であった廃エンジンオイルの投棄等の直接の石油起源の寄与は減少し、自動車排ガス等の燃焼起源の寄与が増加していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで予定した3ヵ国(マレーシア、インドネシア、フィリピン)での調査・試料採取・分析は順調に進み、環境汚染の経時的な変化、環境汚染対策の進捗や遅滞の状況が把握できた。2023年度についても、2022年度に引き続き、現地カウンターパートとの事前の密なやりとりにより調査・試料採取を予定通りに行うことができた。特に、ごみ処分場の試料は入手が難しいが、カウンターパートの尽力により試料をえることができた点は、当初の計画を超える成果である。2023年度も現地調査にはカウンターパートの他に若手の研究者や先方の大学院生も参加し、日本から同行した若手研究者、大学院生とのオンサイトでの交流をはかることができた。さらに、本研究でマーカーとして取り上げている合成甘味料についての論文を学術雑誌に投稿し、掲載され、本研究の結果を比較するためのベンチマークデータを作ることができた。この論文の対象国にはマレーシア、インドネシア、フィリピンも含まれており、論文作成の過程で本研究のカウンターパートとの議論も進んだ。未分析の項目もいくつかあるが、計画以上の試料採取もあったことから、全体としてはおおむね順調に進展してると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、当初の計画通り、インドでの調査を行う予定である。また、2023年度の分析から、マレーシア、インドネシアで廃エンジンオイルの投棄による汚染が減り、自動車の走行に伴う汚染が増加する傾向が見えてきた。これをさらに検証するために、次年度より新たにタイヤ摩耗粒子を堆積物試料について分析する。未分析の国(フィリピン)、未分析の項目(抗生物質)について分析を進める。分析結果が出そろったところで、マレーシア、インドネシア、フィリピンの研究者とオンラインデータ解析会を開催する。
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