研究課題/領域番号 |
22KK0172
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西川 潮 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (00391136)
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研究分担者 |
小泉 逸郎 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50572799)
富田 幹次 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 助教 (80965343)
田中 勝也 滋賀大学, 経済学系, 教授 (20397938)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
20,280千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 4,680千円)
2026年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 環境配慮型農業 / 象徴種 / 生物多様性 / 江 / 環境評価 / コツメカワウソ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、西スマトラ州のバタン・アナイ川中下流域の水田地帯をモデル地域に、絶滅危惧種コツメカワウソを象徴種として水田の生物多様性保全と農業活動を両立させる生物共生農法を確立し、その普及に向けたインセンティブ制度を設計する。最初に非侵略的手法を用いて、水田地帯におけるコツメカワウソの行動圏と、個体群密度、棲み場の環境特性を明らかにする。次に、コツメカワウソの行動圏内の水田に承水路を造成し、コツメカワウソの餌利用と水田の生物多様性に及ぼす影響を調べることで、承水路設置の生物共生農法としての効果を明らかにする。あわせて農業者を対象とした社会経済評価を行い、その取り組みのインセンティブを解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、西スマトラ州のバタン・アナイ川中下流域の水田地帯をモデル地域に、絶滅危惧種コツメカワウソを象徴種として水田の生物多様性保全と農業活動を両立させる生物共生農法を確立し、その普及に向けたインセンティブ制度を設計することにある。 2023年1月から1週間おきに、バタン・アナイ川中流域の既知の25のため糞場所においてコツメカワウソ訪問のモニタリング調査を開始した。その後、上流部のシンクロノス地域であるカユタナムと中下流部のアシンクロノス地域であるルブ・アルンで新たなため糞場所を発見し、各地域で20地点ずつ(計40地点)自動撮影カメラを設置した。カメラトラップ調査では、コツメカワウソだけでなく、ニッチの重複する中型食肉目(ヤマネコ・シベットなど)も多く撮影されていた。カワウソの農地の利用状況や人間との関係のみならず、理解の進んでいない、農地景観における哺乳類の種間関係や時間ニッチ分割の研究への展開が期待できる。糞DNAの抽出では、2023年9月の調査で新鮮な糞からDNAを採集し、予備実験としてミトコンドリアDNAの抽出と増幅を試みた。その結果、さらなる抽出技術の改良が必要であることが分かった。 承水路造成実験の準備調査として、スクミリンゴガイの管理のために造成されているbanda keongが造成された水田において、底生無脊椎動物の群集構造の変化を調べた。 調査地域で30名の農家を対象とした予備社会調査を行い、banda keongの取り組み状況の把握と、営農状況についての基礎的知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外調査やABS関連の諸手続きに想定以上の時間を費やしたが、すべてのサブテーマで予備実験や準備調査を進めているため、大きな遅れはない。2023年度は、代表者・分担者と海外研究協力者の所属部局間で部局間協定(MOA)を取り交わし、日本から現地へのカメラトラップ・調査機器の輸送体制を整えた。現在、ABS関連の手続きとして、北海道大学とアンダラス大学間で物質移動合意書(MTA)の手続きを進めており、MTAが締結され次第、日本への糞DNAサンプルの輸送と遺伝解析を進める。カメラトラップ調査に関しては、MOAの締結後に機器を現地に輸送し、現地でのモニタリングを開始した。承水路造成実験に関しては、banda keongが造成された水田での予備調査を終え、現地農業者と実験デザインと実施時期について具体的な交渉を進める段階にある。社会調査に関しては、アンケートの原案を作成してヒアリングの対象範囲を特定し、予備調査を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)非侵略的手法に基づくコツメカワウソの行動圏の解析-今後、北海道大学とアンダラス大学間でMTAを締結して日本への糞DNAサンプルの輸送体制を整える。カワウソ類の糞からのDNA抽出は効率が悪いことが知られている。そのため輸送体制が整うまでは国内の動物園で飼育されているコツメカワウソの糞を用いてDNA抽出技術の改良を検討する。併せてバタン・アナイ川の水田地帯でコツメカワウソのため糞調査を行う。ため糞が確認された場合には糞の表面から糞サンプルを採集する。糞サンプルからDNAを抽出したのち、MIG-seq法を用いてゲノムから網羅的にSNPs(一塩基多型変異)を検出し、コツメカワウソの個体識別を行う。最外郭法またはカーネル法を用いてコツメカワウソの行動圏を推定する。 2)非侵略的手法に基づくコツメカワウソの個体群密度と棲み場環境の解析-2024年度は、カメラトラップのデータを解析し、人や犬猫がコツメカワウソの出現頻度や日周性に及ぼす影響を明らかにする。カメラ地点周辺の稲作ステージとコツメカワウソの出現頻度の関係を調べる。また、シベットやヤマネコとコツメカワウソの時空間利用パタンを調べ、ニッチ分割の程度を調べる。 3)コツメカワウソの餌場創出のための承水路造成効果の検証-現地農業者の協力を得て、承水路の造成実験を行う。承水路の造成田と対照田(banda keong造成のみ)で底生無脊椎動物の多様性とコツメカワウソの採餌頻度の比較を行う。 4)生物共生農法を普及させるための農業者のインセンティブ設計-対象地域において、農家や現地協力者の協力を得て、各農家の営農状況や環境条件等を把握するとともに、野生動物の認識、banda keongに対する実践状況等の聞き取り調査を行い、アンケートの内容を洗練化させる。その上で、本調査と経済評価を行う。
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