研究課題/領域番号 |
22KK0175
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
国末 達也 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90380287)
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研究分担者 |
田上 瑠美 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (60767226)
鈴木 剛 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環領域, 主幹研究員 (70414373)
松神 秀徳 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環領域, 主任研究員 (10639040)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | ベトナム / 廃棄物 / 排水 / 新興化学物質 / 微細プラスチック / マイクロプラスチック / リスク評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ベトナムの首都ハノイおよびその近郊を対象に、廃棄物や排水の不適正処理で環境中への放出が予想されるマイクロプラスチック(MP)と有害化学物質の汚染実態と動態に関するデータを集積・解析し、環境改善や対策技術構築のための科学的基礎データを提示する。とくに電気・電子機器廃棄物(e-waste)、使用済み自動車(ELV)、MPに含まれる難燃剤・可塑剤・酸化防止剤、そして生活・産業排水に混入している医薬品・日用品関連化学物質および環境変化体に着目し、e-waste・ELV・MP処理従事者と水生生物の曝露実態を解明し、影響値との比較からリスクを評価する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、近年経済発展が著しいベトナムの首都ハノイおよびその近郊を対象に、現地研究者との共同研究を通じて電気・電子機器廃棄物(e-waste)やプラスチック廃棄物(PW)、そして使用済み自動車(End-of-Life Vehicles: ELV)に含まれる難燃剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの有害化学物質、そして生活・工業排水に混入している医薬品・日用品関連化学物質(PPCPs)を対象に、環境汚染の実態と生物蓄積、そしてリスクを究明することにある。さらに、PW処理施設では排水と近隣河川におけるマイクロプラスチック(MP)汚染の実態と、MPに含有もしくは吸着する内分泌かく乱性化学物質の探索・同定を試みる。初年度は、愛媛大学沿岸環境科学研究センターの生物環境試料バンク(es-BANK)に冷凍保存されていたベトナムの環境試料を用いて、難燃剤や可塑剤として使用されるリン酸エステル系難燃剤(PFRs)と新規残留性有機汚染物質(POPs)の短鎖塩素化パラフィン(SCCP)、コーティング剤等に使用されている有機フッ素化合物(PFAS)、プラスチック原料や酸化防止剤として使用されるビスフェノール類、ベンゾフェノンおよびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の分析法開発を進めた。現在、標準品を用いたガスクロマトグラフ(タンデム)質量分析計(GC-MS[/MS])、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)、液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOFMS)の測定条件の最適化は完了している。また、プラスチック添加剤の溶出試験から核内受容体のアゴニスト・アンタゴニスト活性を測定するためのin vitroバイオアッセイ法の構築に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、新たに短鎖塩素化パラフィン(SCCP: C10~C13の4~11Cl)、新規POPsであるPFOS, PFOA, PFHxSを含む有機フッ素化合物(PFAS) 34物質、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(UV-326, -327,-328)の標準品を用いて、ガスクロマトグラフ(タンデム)質量分析計(GC-MS[/MS])、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)、液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOFMS)の測定条件を検討し、最適化に成功した。現在、実試料への添加回収試験を含め綿密な精度チェックを実施している。また、既に環境試料への適用実績があるリン酸エステル系難燃剤(PFRs)、ビスフェノール類、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、そして医薬品・日用品関連化学物質(PPCPs)に関しては、魚類など水生生物の組織試料を対象とした高精度分析法を構築するため、前処理法の検討をおこない、全物質に対して良好な分析精度を得ることができた。さらに、過去プラスチック廃棄物処理場で得た破砕プラスチックフレークを用いて、添加剤の溶出試験およびin vitroバイオアッセイ系を用いた核内受容体のアゴニスト・アンタゴニスト活性の測定を試みており、全体として研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
環境試料に適用可能な新興化学物質の分析法開発を継続することに加え、現地調査およびサンプリングを実施する。既にリモートを含めたミーティングをおこない、ハノイ市内と近郊に存在する電気・電子機器廃棄物(e-waste)、プラスチック廃棄物(PW)、使用済み自動車(End-of-Life Vehicles: ELV)の処理施設を対象に、現地研究者と共に調査し作業場ダスト、周辺土壌、工場排水を採集する計画である。またPPCPsについては、ハノイ市内を流れ未処理排水の直接流入が目視で観察されているNhue Riverに加え、ハノイに存在する下水処理施設のPPCPs除去能を評価するため流入水と放流水も採水する。本研究では、淡水魚などの河川に生息する水生生物の分析もおこなうため、現地研究者が生息ポイントの事前調査と採取法を検討している。 各処理施設から得られた試料を現在構築している化学分析に供試し、新興化学物質による汚染実態とプロファイルを解析するとともに、作業者への曝露とリスクを評価する。PW処理施設では処理排水と近接する河川数地点から表層水を採取し、FT-IR測定からマイクロプラスチック(MP)の素材別汚染実態を明らかにすることに加え、稼働時間・日数およびPW処理量/日から年間のMP環境放出量を推算する。また、河川に生息する魚類の消化管を入手し、マトリックスを分解・除去した後、MPの有無を素材・サイズ別に確認することで粒子毒性のリスクを評価する。
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