研究課題/領域番号 |
22KK0186
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
谷川 朋範 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (20509989)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 海氷放射伝達モデル / メルトポンド / 放射スキーム / 海氷アルベド / 北極海 / 薄氷化 / 海氷放射スキーム / 放射伝達 / 衛星観測 / 気候モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本課題では,放射伝達理論研究・衛星リモートセンシングの専門家である,米国スティーブンス工科大学のStamnes教授の元に滞在し,基課題「大気ー積雪ー海氷系放射伝達モデルの開発と気候モデル用海氷アルベドスキームの高度化」(科研C: 20K12142)で開発した海氷放射伝達モデルを,メルトポンド(海氷上の水たまり)の効果を考慮した汎用性の高い海氷放射伝達モデルに拡張し, 諸外国のモデルと一線を画した気候モデル用海氷放射スキームの高度化を進める.そして,衛星データと比較しながら気候モデルの検証・改良を行い,薄氷域を含む海氷減少の詳細な実態把握とメカニズムの解明に挑む.
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研究実績の概要 |
北極海では海氷減少とともに海氷の薄氷化が顕在化しており,アルベドの低い大小無数のメルトポンド(海氷上の水たまり)が観測されている.しかし,気候モデル(海洋モデル)の特に海氷アルベドスキームにはメルトポンドの効果が考慮されておらず,海氷予測の不確実性を引き起こしている可能性が高い.確度の高い将来予測を行うためには,基課題「大気―積雪―海氷系放射伝達モデルの開発と気候モデル用海氷アルベドスキームの高度化」(20K12142)で開発した気候モデル用海氷アルベドスキーム改良し,メルトポンドの効果を考慮した海氷アルベドスキームの開発が急務である. 本年度はメルトポンドの光学特性を考慮した海氷放射伝達モデルの開発と,海氷放射スキームの高度化に着手した.受け入れ先である米国スティーブンス工科大学Stamnes教授と協力して,まずメルトポンドの光学特性について議論を進め,データセットの整備を行なった.次に,海氷放射伝達モデルへの組み込みを行い,放射伝達モデルの検証を行なった.検証にはStamnes教授らが開発した放射伝達モデルAccuRTを用いて実施した.計算スキームの違いに起因する差異が見られたが,概して良好な結果が得られた.しかし,やや計算時間がかかりすぎるなど,計算効率の観点において課題が明らかになった. 海氷アルベドスキームについては,開発した放射伝達モデルの計算結果をもとに,メルトポンドの深さを変数した海氷アルベドスキームに改良し,可視,近赤外,広帯域アルベドのデータセットを作成した.今年度は,裸氷,積雪で覆われた海氷,そしてメルトポンド氷を対象に計算を進めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メルトポンドを考慮した海氷放射伝達モデルの開発と放射伝達モデルAccuRTによる検証ができた.さらに一部ではあるがメルトポンドを考慮した海氷アルベドスキームの開発に着手することができた.また,次年度予定している衛星データの整備について議論することができ,今後打ち上げ予定の衛星プロダクト開発に関する研究に貢献することができた(Pachniak et al., 2023).その他,海氷放射伝達モデルの開発を通じて,英国との共同研究が始まった.今後,海氷放射伝達モデルのさらなる利用に期待される.
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今後の研究の推進方策 |
次年度も米国スティーブンス工科大学に滞在し,残りの海氷放射伝達モデル計算を実施する予定である.また,衛星データを用いた海洋モデルの検証を実施するため,海氷物理量のデータセットを準備する.年度後半は,気候(海洋)モデルに海氷アルベドスキームを導入し,薄氷域へのインパクト調査に着手する予定である.
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