研究課題/領域番号 |
22KK0188
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
許 時嘉 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (10709158)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2025
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | 台湾民報 / 台湾新民報 / 翻訳記事 / 翻譯 / 世論作り |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1920年代『台湾民報』の編集・翻訳の仕組みを可視化して台湾人知識体系の形成と世論作りのメカニズムを解明することを目的とする。 具体的には、①台湾民報関係者の書簡史料を体系的に解明し、翻刻のデータベース化を進めると同時に、謎の多い民報早期・中期の社内運営状況を明らかにする。②多地域、多言語の情報源を精査して翻訳のズレや不一致とその意図を考察し、戦前東アジアの多様な共同体認識において台湾人の占める位置を解明する。③『台湾民報』の近代総合雑誌としての特徴に焦点を合わせ、内容表現、出版経営、情報流通など20~30年代台湾人言論活動の諸問題について総合的な研究成果をあげることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、アジア共同体構想における日本人知識人と台湾人知識人との思想的接点を考察する基課題を発展させるため、1923-1930年に刊行された『台湾民報』の編集・翻訳の仕組みを可視化して台湾人知識体系の形成と世論作りのメカニズムを解明することを目的とする。現地で台湾人研究者と共同研究体制を構築して以下の課題に取り組む。①現地機関所蔵の台湾民報関係者の書簡史料を体系的に解明し、翻刻のデータベース化を進めると同時に、謎の多い民報早期・中期の社内運営状況を明らかにする。②多地域、多言語の情報源を精査して翻訳のズレや不一致とその意図を考察し、戦前東アジアの多様な共同体認識において台湾人の占める位置を解明する。 今年度の主な研究成果は、『台湾民報』の編集者である王敏川が主導した日本語新聞の転載と翻訳の実態を明らかにしたことである。王敏川は1923年から1927年にかけて台湾民報の言論を牽引する重要な人物であったが、関連資料が少なかったため、これまであまり注目されていなかった。本研究では、『台湾民報』における王敏川の政治批評および翻訳の記事を精査し、彼の翻訳記事の特徴とその論調の変遷を明らかにした。また、『台湾民報』系列誌における日本側の寄稿状況に注目し、『台湾新民報』に長期寄稿していた小生夢坊の論調についても考察した。 今年度は口頭発表3件(分科会企画1件及び招待発表1件を含む)が行われ、査読付き論文2本が日本、台湾の代表的な学術誌に採択掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度内の大学業務を済ませて2024年2月に台湾に渡航したので、現地での資料収集と成果発表が予想より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は中国、日本から転載し翻訳した文章の初出を精査して、地域間の情報流通の仕組みを把握する。『台湾青年』『台湾』『台湾民報』に掲載された日本語記事・中国語記事の情報源は多岐にわたり、『改造』『太陽』『日本及日本人』『朝日新聞』『毎日新聞』(日本)、『民報日報』『申報』(中国)、『東亜日報』(朝鮮)など、地域別・言語別の新聞紙・総合誌の情報を転載し翻訳するという特徴を持っている。先行研究には記事内容の傾向に関する分析はあるが、①原文と訳文とのズレ、②同時代の政治情勢との関連、③転載・翻訳の特徴など、多くの不明点が存在するので、より総合的かつ綿密な調査が必要である。
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