研究課題/領域番号 |
22KK0194
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
中丸 禎子 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (50609287)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2025
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
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キーワード | 北欧文学 / ドイツ文学 / 日独交流 / ファシズム / ラーゲルレーヴ / スウェーデン文学 / 北欧 / ドイツ / 日本 / 近代 |
研究開始時の研究の概要 |
基課題は、スウェーデンのノーベル文学賞作家ラーゲルレーヴ(1858-1940)を中心に、ファシズム期の日独交流を通じた北欧受容を考察する。明治・大正・昭和前期に導入されたドイツの思想・文化には、ナチズムの根拠となった「郷土芸術」「血と土」思想が含まれる。ゲルマン民族主義において理想化された北欧に着目し、北欧文学・ドイツ文学と日本近代の思想・文化の交流を批判的に考察する。 国際共同研究では、日本で得た成果を海外に発信する。明治・大正・昭和前期の日本人が海外から受けた影響のみならず、同時期の日本人の海外における受容に研究範囲を広げ、北欧およびドイツの研究者と協働してラーゲルレーヴ研究の充実を図る。
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研究実績の概要 |
当研究課題の長期的な目標は、1)北欧文学の専門研究機関がなく、研究者も少ない日本において、北欧文学研究の継続的・発展的方法を確立すること、2)学術的なアプローチから「幸せな北欧」イメージとその背後にある歴史・文化・思想を批判的に捉え直すことである。目標に向け、A)北欧を専門としない日本の研究者と共同での北欧に関連する研究、B)海外の北欧研究者との共同研究における日本特有の視点の提示を実施する。2023年度は基課題と併せ、特に以下の4点を実施した。 1点目は、2024年度の渡航に向けた準備である。日本語資料の収集、既発表の日本語論文の、英語訳・海外研究者との共有に向けた、整理・精査・修正をした。 2点目は、基課題における日本語共著『北欧とファシズム』(仮)の準備である。同著の一章となる論文「高橋健二版『デンマルク国の話』」を公開したほか、共同執筆予定者の口頭発表を実施した。書籍の構成及び出版社を確定した。 3点目は、訳著書『巨人フィンの物語 北欧・日本 巨人伝承の時空』(三弥井書店、2024年5月刊行予定)の準備である。同書は、スウェーデン・スコーネ地方の伝承に基づく絵本とその解説から成る。解説は、スウェーデン語、デンマーク語、ドイツ語、英語の文章の読解・翻訳を伴い、北欧神話とキリスト教、英語・ドイツ語訳を通じた北欧伝承の日本への伝播とその発展を扱う。解説執筆を通じて、わたし自身がこれまでの研究で培った北欧、ドイツ、日本の文学・文化に関する知見を一般に向け提示するとともに、他分野の多くの研究者に協力を仰ぐことにより、言語・分野横断型の北欧研究のモデルケースを作ることができた。 4点目は、高橋美野梨編著『グリーンランド』への分担執筆と関連企画への参加である。この共同研究は、直接には日独交流・北欧受容をテーマとしたものではないが、長期的な目標に大きく資するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長期的な目標に向け「概要」に書いた4点を実施できた点で順調に進展したと言える。 また、申請時には具体的な着想のなかった『巨人フィンの物語』を研究計画に沿った有効な形で展開し、学術研究としては短時間に成果発表の形ができたことは期待以上の進展である。 一方、『北欧とファシズム』(仮)については、書籍全体をまとまった形で構成することに多くの困難があり、構成の確定と出版社の選定に当初の予定よりも長い時間を要した。既発表論文の英語訳については、他の課題を優先したため当初の予定より遅れた。 順調な進展・期待以上の進展・遅延の三者が混在することから、総体的には「おおむね順調な進展」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はスウェーデンの夏季休暇期間(6月初旬~8月下旬)を有効活用し、『北欧とファシズム』掲載の日本語論文の執筆・編集を集中してすすめるほか、現地滞在を活かして資料収集、現地研究者との情報交換、語学能力の向上に努める。オットー・フィッシャー教授ほか海外研究者に対し、日本語論文の英語訳を早期に提供する。24年度後期にウプサラ大学文学部のゼミで口頭発表をするため、フィッシャー教授との連携を強化する。 ウプサラ大学に所属する他の研究者との連携開始、スウェーデン各地の研究者の訪問を通じ、帰国後も活かせる研究者ネットワークを構築する。
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