研究課題/領域番号 |
22KK0206
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
太田 貴大 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (30706619)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 環境支払 / 直接支払 / 多面的機能支払 / 公益的機能 / 非木材林産物 / アナツバメ / 生産関数 / カリマンタン / PES / 熱帯泥炭地 / インドネシア / ツバメの巣 / 供給サービス |
研究開始時の研究の概要 |
良好な自然環境を維持しながら、受益者の生態系サービスに対するニーズを満たすことが生態系サービスへの支払(PES)政策の目的である。過去の研究では、ニーズ調査手法の開発が行われてきたが、支払者ニーズを満たすというPES政策の本来の目的達成との間には大きなギャップがある。本研究は、PES政策の目的達成を現実的なものとするため、支払者のESニーズを供給者である生態系管理者と共有する手法を開発し、この手法の適用により供給者のPES政策参加意図が向上するかどうかを検証する。対象政策は、世界的にも希少かつ先進的な応益的PES政策である、インドネシアにおけるアナツバメの巣の販売利益に対する課税制度とする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、生態系サービスを受益しそれに対する支払を行う者(支払者)の生態系サービスに対するニーズを、生態系サービスの供給者である森林管理者と共有する手法を開発し、この手法の適用により、供給者のPES参加意図が向上するか否かを検証することである。 上記目的達成のための研究実施計画として、3つの課題を設定しており、本年度は、課題1の途中段階までを遂行した。課題1は三段階で進めることとしている。第1段階:森林状態を考慮したアナツバメの巣の生産量推定のための回帰モデル構築、第2段階:構築した回帰モデルを用いた現状の森林状態におけるアナツバメの巣生産量の推定と支払者のニーズ把握、第3段階:ニーズを満たすために必要な森林の場所と管理方法の特定(ターゲティング)。 本年度は、アナツバメの巣の生産量推定モデルを構築するため、データ収集および分析を行った。基礎モデル構築のための対象地は、インドネシア・中部カリマンタン州・パランカラヤ市の3つの区(Kecamatan)を囲む約250㎞2とした。本地域は同州内でも最も都市化が進んでいる地域である。収集したデータは、各ツバメビルの巣の生産量(パランカラヤ市からデータを得た)、その周囲にあるツバメビルの数や特徴、土地利用に関するデータである。研究協力者の助言に基づきながら、これらのデータを分析に供するための形に整備した。また第3段階のターゲティングを見据え対象とするツバメビルの位置と所有者を選定した。 これに加え、アナツバメの巣のサプライチェーン全体の特徴を把握するため巣の消費者の購買行動モデルの推定や、応益的なPESの一形態である森林炭素クレジットの支払意思額推定を合わせて実施した。 アナツバメの巣の生産量を周囲のツバメビルや土地利用から推定するモデルは、巣の生産量が減少する状況の中、そのマクロな視点からの原因推定を可能にするため意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では滞在半期まで(2023年度内)に課題1の終了を目指していたが、実際は、巣の生産量推定モデルの構築まで至っておらず、やや遅れている。 この理由としては、当初は、各ツバメビルの巣の生産量のデータをビル所有者の申告値から推定する計画であったが、信頼性が低いと判断し、地方行政政府が有する納税データを用いて推定する方法に変更したことが挙げられる。また、この納税データを、地方行政政府から提供を受けるのに時間を要したことも、遅延の理由に挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画どおり、課題1~3を遂行する。アナツバメの巣の生産量を推定するモデルの構築は、パランカラヤ市およびプランピサウ県という自然環境の異なる二地域で行う。これらのモデル構築と並行しながら、生態系サービスに対する支払を行う者(支払者)と、その生態系サービスの供給元である森林の所有者・管理者(供給者と称する)との情報交換の場の設定を見据えて、対象となる支払者および供給者を選定する。供給元の森林としては、各村(Desa)が管理している森林(Hutan desa)を対象にする予定である。
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