研究課題/領域番号 |
22KK0221
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
林 良平 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 講師 (80633544)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | オンライン経済実験システム / 遠隔地相互作用実験 / 社会的ジレンマ実験 / 協力ゲーム / 不平等回避 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者が開発したオンライン経済実験システムを活用すると、相互作用がある実験を世界中で同時に実験することができる。そこで、時差が小さく、所得差が大きい日本とオーストラリアを中継して、社会的ジレンマ実験を実施し、日本とオーストラリアで個別に行う実験結果と協力行動や処罰行動に差異が表れるかを検証する。本研究はマッコーリー大学実験経済学グループと共同で展開し、2023年6月~2024年5月の期間に経済実験実験を繰り返し実施する。
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研究実績の概要 |
基課題で開発した1,000人同時参加が可能なオンライン経済実験システムは、被験者が世界中の好きな場所から経済実験に参加でき、参加に伴う移動や時間などの負担を大幅に減少させること、様々な属性の被験者を集めること、緊張・興奮や被観察感の影響を排除すること、文化や文脈依存的な状況下で実験することを可能にした。その結果、文化が混在する社会の動学的研究という新しい分野を開拓する基盤が整った。 一方で、世界中の研究者にこのシステムを利用してもらうためには、特長を活かしたベスト・プラクティスが必要である。そこで本課題ではマッコーリー大学の実験経済学グループと共同で社会的ジレンマの日豪同時実験を実施し、社会行動における文化差の動学的実証を試みる。 当該年度はマッコーリー大学実験経済学グループの一員として、現地でのラボ実験実施を見学したり、被験者募集方法、謝金支払い方法、倫理審査受審方法等について調査した。またシドニー大学、クイーンズランド工科大学、タスマニア大学、チャールズスタート大学等の実験経済学ラボを訪問し、実験の具体的実施方法を調査した。 これらの調査の結果、現在の実験システムに不足している機能を洗い出した。実験参加同意画面、実験詳細説明画面、リアルタイムモニタリング画面、謝金計算画面、領収書発行画面など、現在のシステムには実装されていない機能が追加で求められることが分かった。さらに、新型コロナウィルス感染症流行以降には、ラボ実験の実施が見送られることが多く、クラウドソーシングサービスを利用したオンライン実験が盛んになってきている。1,000人以上の同時参加者がいる場合や、途中参加・退出を想定した実験システムに改良する必要が生じている。 当該年度は、これらの問題を解決する実験システムの要件定義を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基課題で開発したオンライン実験システムは、自動負荷テストによって1分間に2,000人程度の同時実験では安定して動作することが確認されている。しかし、クラウドソーシングを利用したオンライン実験を実施すると、実験開始時の数秒間に被験者全員が同時アクセスする場合が想定される。当該システムが利用しているWebSocket通信は、各被験者とサーバーを双方向に持続的通信ができる利点があるものの、参加人数の増加に対応できる拡張性を確保することが技術的に難しい特徴がある。そこで、通信方法をWebTransport通信に変更し、送受信メッセージの回数や量を減少させるなどの対策が必要である。 加えて、100人以上で同時実験を行うと、被験者側のブラウザの処理が追い付かなくなり、画面が更新されなかったり、更新が遅延する事象が発生している。そこで、現在のReactによる処理ではなく、WebAssemblyにより処理することにより、被験者側のデバイスの性能を最大限に利用できるシステムに変更する必要がある。 当該年度はこれらの変更を適用するために要件定義や改修を行った。いずれも研究課題遂行に不可欠な項目であり、研究に進展はあるものの、経済実験の実施には至らなかった点を考慮して「やや遅れている」と判断した。 上記以外にも、多言語化(中国語)の導入や、研究倫理審査受審、ラボ実験実施協力相手先の確保など、経済実験実施に必要な条件を整えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度に実験システムの改修を進めて、2025年度の経済実験実施を目指す。 2024年度は、現在Elixirで書かれているシステムをRustで書き換え、同時に最新の通信技術やプログラミング技術を適用させる。2023年度にまとめた要件定義に従い、ラボ実験やオンライン実験で実際に動作可能な機能を整備していく。また、自動負荷テストを実施して実験実施に備える。 2025年度にはオーストラリアと日本での個別実験、相互作用実験を実施し、研究成果を取りまとめる。
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