研究課題/領域番号 |
22KK0225
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
羽田 真毅 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70636365)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2025
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 光物性 / 電子線回折 / 低次元物質 / 低次元材料 / フェムト秒レーザー / 計測手法 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者は、ピコ秒で生じる原子・分子の動きを直接観測可能な装置開発技術を活用して、多彩な物質の非平衡状態の構造変化と機能との関係を世界に先駆けて展開し、非平衡超高速構造変化と物質の機能との関係解明を行ってきた。本研究では、日本とフランス(レンヌ第一大学/Prof. Roman Bertoni)の若手PI同士の国際共同研究を通して、超高速時間分解電子線回折実験と広帯域光学ポンプ・プローブ実験の相補的利用による低次元ファンデルワールスヘテロ構造間に生じるエネルギー輸送現象の解明を行う。
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研究実績の概要 |
本研究提案では、日本とフランス(レンヌ大学/Prof. Roman Bertoni)の国際共同研究を通して、超高速時間分解電子線回折実験と広帯域光学ポンプ・プローブ実験の相補的利用によるカーボンナノチューブと窒化ホウ素ナノチューブからなる1次元ファンデルワールスヘテロ構造間に生じるエネルギー輸送現象の解明を行うことを目的としている。 2023年度の6~7月と10~11月の2度に分けて、計2か月間をフランスのレンヌに滞在し、1次元ファンデルワールスヘテロ構造間に生じる電子の移動現象の解明に取り組んだ。具体的には、レンヌ大学の広帯域の光学ポンプ・プローブ計測装置を用いて、400nmの近紫外光(ポンプ光)で試料を励起し、230nmの深紫外光(プローブ光)で試料中の電子の移動を観測した。また、プローブ光には近赤外領域(1200nm)から可視光領域(360nm)のパルス光も用いて、広帯域の過渡透過スペクトルを取得した。1次元ファンデルワールスヘテロ構造体のには、ポンプ光照射後に深紫外光の過渡透過率の1psあたりに大きな強度変化が表れたが、カーボンナノチューブのみの試料には、同様の変化は見られなかった。これは、カーボンナノチューブから窒化ホウ素ナノチューブに電子が移動していることを示唆している。現在この電子移動と日本で実験した超高速時間分解電子線回折法による構造変化を合わせて、現在論文を投稿しているところである。カーボンナノチューブから窒化ホウ素ナノチューブからなる1次元ファンデルワールスヘテロ構造体だけでなく、遷移金属ダイカルコゲナイドなどの低次元物質の電子線回折実験も行っており、今後これらの試料のダイナミクスに関しても測定してく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の2か月の滞在で、当初目的としていた1次元ファンデルワールスヘテロ構造間に生じる電子の移動現象に関して、論文執筆に必要としていたデータをそろえることができた。日本で実施した超高速時間分解電子線回折法による構造変化を合わせて、論文を投稿するところまでこぎつけることができており、おおむね順調に進展していると言える。今後、論文の修正等を行いながら、論文掲載を目指すこととなる。また、カーボンナノチューブあるいはファンデルワールスヘテロ構造体の間で生じる電子移動だけでなく、カーボンナノチューブ内で生じる電子の緩和現象に関しても興味深い変化を見ることができており、今後の研究の進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、カーボンナノチューブと窒化ホウ素ナノチューブの間で生じる電子移動現象の観測に成功しており、現在他のファンデルワールスヘテロ構造体を作製しているため、それらの構造ダイナミクス計測を進めていくことになる。特に昨年度は、MoTe2などの遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる低次元物質の構造ダイナミクス計測に成功しており、これらを重ね合わせたファンデルワールスヘテロ構造体の構造ダイナミクスを超高速時間分解電子線回折法と広帯域の光学ポンプ・プローブを駆使して計測していく予定である。
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