研究課題/領域番号 |
22KK0227
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 智之 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (50749629)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2025
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 暗黒物質 / LHC加速器 / 陽子陽子衝突型加速器 / データ収集系 / 高速信号処理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では様々な検出器信号をリアルタイムで有機的に統合することで高純度のデータ取得を実現するデータ収集系を導入し、微弱な暗黒物質粒子生成信号の検出に挑戦する。暗黒物質は宇宙のエネルギーの26%を占める正体不明の存在であり、その性質の理解は宇宙初期解明の鍵である。CERN研究所の最高エネルギー陽子衝突型加速器LHCではその衝突エネルギー範囲内で暗黒物質候補粒子の生成が可能である。しかし莫大な背景事象と信号検出の困難さゆえ、データ収集の段階で暗黒物質生成信号を取りそこなう場合がある。独自のデータ収集系を開発することで従来難しかった信号取得を実現し、未探索質量領域での暗黒物質研究を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究では新しいリアルタイム処理のデータ収集系を導入することで、LHC加速器を用いて暗黒物質粒子信号の検出に挑戦する。LHC実験環境での莫大な背景事象の存在、さらに暗黒物質信号検出の困難さのため、LHC衝突エネルギー範囲内の質量領域で網羅的な探索はいまだできていない。つまりLHC加速器で暗黒物質粒子の生成自体は可能であるが、背景事象に埋もれて信号の検出ができていない可能性が多くある。微弱な暗黒物質生成過程の信号を取得するために、データ収集技術の高度化を行う。信号検出ロジックを拡張し、データ収集時のオンラインの段階で莫大な背景事象の中から信号を特定できる手法に取り組む。この手法により従来の実験で難しかった質量領域で暗黒物質探索に挑戦する。
本年度は、信号検出効率を維持しつつ背景事象の混入を抑制する検出ロジックの高度化に取り組んだ。LHC加速器は性能向上を目指しビーム強度の増強が試みられ、それに伴い実験衝突点でのパイルアップ数(ビームバンチ交差毎の陽子衝突数)が増加し、背景事象の混入がますます問題となった。その中で高度化した新しいトリガーロジックの一部を稼働させることに成功した。データ収集の段階で背景事象を抑制しつつ、効率的に信号検出を可能にした。 また記録したデータの解析のために、暗黒物質の信号抽出のために専用の識別アルゴリズムの開発に取り組んだ。暗黒物質生成過程から出てくる粒子の識別を目指し、機械学習を用いて複数種類の検出器信号を効果的に組み合わせる手法を新たに開発した。従来検出が困難であった低い運動量の粒子識別に特化したアルゴリズムの構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集時の信号検出効率を維持しつつ背景事象の混入を抑制する検出ロジックの高度化に取り組み、新しいロジックの一部を稼働させることに成功した。データ収集の段階で背景事象を抑制しながら信号を特定し効率の良いデータ収集を可能にした。 収集したデータの中で暗黒物質生成過程を抽出するために専用の識別アルゴリズムの開発に取り組んだ。従来検出が困難であった低運動量の粒子に関して識別感度を示すことができた。未探索であった暗黒物質の質量領域において探索を展開できる準備を整えた。 以上より、順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
高度化したトリガーロジックの全稼働できるように研究を推進する。信号検出効率と背景事象を抑制の観点から性能の向上をはかる。データ収集時の段階で莫大な背景事象の削減を行い、数少ない信号事象の検出を目指す。 収集した衝突データを用いて、開発した低運動量の粒子識別アルゴリズムを使い暗黒物質粒子探索を進める。従来探索が難しかった超対称性粒子の質量領域の研究に焦点をあて、暗黒物質粒子の網羅的な研究を展開する。
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