研究課題/領域番号 |
22KK0228
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松浦 弘泰 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40596607)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2025
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
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キーワード | 熱電効果 / 熱ホール効果 / ドラッグ効果 / フォノンの角運動量 / ホイスラー合金 / マグノンドラッグ / 異常ネルンスト効果 |
研究開始時の研究の概要 |
熱電現象の解明には現象論的なボルツマン理論を用いるのが一般的であるが、近年、ボルツマン理論では捉えられない領域(Beyond Boltzmann)に新しい熱電特性が期待されている。特に、近年発見された鉄ホイスラー合金薄膜での巨大な熱電効果の起源が、「強磁性マグノンドラッグ効果と不純物バンドの協奏によるBeyond Boltzmann」による可能性があることが分かってきた。そこで本研究では、この系でさらに期待される異常ネルンスト効果を研究し、そこでのBeyond Boltzmannを、オーストリア・ウイーン工科大のバウアー教授と共同研究を行い解明する。
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研究実績の概要 |
温度勾配を電圧に変換する現象として熱電効果が知られている。本研究では、その熱電効果の中でも温度勾配を印加した方向とは垂直方向に電圧が生じる横応答の熱電効果(異常ネルンスト効果など)の研究をオーストリア・ウイーン工科大学のバウアー教授と行っている。とくに薄膜材料での横応答熱電効果やドラッグ効果に着目しており、横応答の理論構築・実験提案を目的としている。 23年度は以下の3点を行った。 1)薄膜・基盤系での熱電効果:薄膜の熱電効果における基盤の寄与を明らかにする理論を電気回路と熱回路を組み合わせた一般的な並列回路模型に基づき構築した。その結果、薄膜と基盤の協奏的効果により横応答の熱電効果が増強される機構があることを明らかにした。さらに、本機構が可能な材料の提案を行った。 2)横熱応答の微視的理論構築:最近、SrTiO3-δでフォノンドラッグ効果に由来した大きな熱ホール効果(磁場下で温度勾配を印加すると磁場と温度勾配との垂直方向に熱勾配が生じる現象)が報告された。横熱応答という観点で本研究と相補的であることから、横熱応答におけるフォノンドラッグ効果の微視的理論(beyond Boltzmannの理論)を久保-Luttingerの方法を用いて構築し、実験結果と理論結果がよく一致することを示した。 3)キラル物質である水晶のフォノンの角運動量と横応答熱電効果:キラル物質である水晶において温度勾配を印加すると、水晶に張り付けた金属(タングステンやプラチナ)薄膜で横応答熱電効果が現れることを明らかにした。水晶に温度勾配を印加するとキラル構造に由来しフォノンの角運動量が現れ、そのフォノンの角運動量が貼り付けた金属薄膜中の電子スピンに転写され、さらに逆スピンホール効果により横方向に電圧が現れる可能性があることを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の項目1)で記述したように、薄膜での熱電効果における基盤の効果についての基礎的理解を得ることができた。さらに、項目2)より、ドラッグ効果由来の横熱応答に関しての微視的理論(beyond Boltzmannの理論)を構築することができた。また、研究実績の概要の項目3)のように非従来型の横型熱電効果に関しても明らかにすることができた。 項目2)の当初の計画は、マグノンドラッグを用いた横応答の熱電効果の微視的理論構築であったが、項目2)で得られた結果をマグノンドラッグ効果に容易に応用可能であり、さらに、項目2)で構築した方法が実験とよく一致することから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは23年度中に得られた研究成果の論文執筆を進める。次に、23年度行った薄膜での熱電効果における基盤効果の理論をさらに推進する予定である。特に23年度の研究(研究実績の概要の項目1)と項目3))により、基盤から薄膜へのフォノンのしみこみ効果の重要性が理解されてきた。そこで、その効果を取り入れた理論を構築する予定である。 また、23年度にフォノンドラッグ効果の解説記事を執筆したが、それをきっかけにドラッグ効果由来で多様な物理現象が現れることが分かってきた。そこで当初の計画通り横応答での熱電効果の解明を基盤にしながら、電気伝導等でのドラッグ効果をボルツマン方程式の変分原理の方法、久保-Lutitngerの微視的理論を用いて明かにする。
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