研究課題/領域番号 |
22KK0231
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梅畑 豪紀 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (60783678)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
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キーワード | 宇宙網 / 銀河形成 |
研究開始時の研究の概要 |
暗黒物質やバリオンが蜘蛛の巣状のネットワーク構造、「宇宙網」とそこでの銀河形成・進化の観測的検証は銀河形成シナリオを理解する上で根源的な重要性を持つ。本研究では米国カリフォルニア工科大学に一年間の滞在を行い、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡やケック望遠鏡といった米国が主導する最先端の望遠鏡を駆使して赤方偏移3付近の宇宙に存在する宇宙網と銀河の観測的研究を推進する。
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研究実績の概要 |
冷たい暗黒物質モデルに立脚する現在の銀河形成理論によると、重力進化の結果として暗黒物質やバリオンが蜘蛛の巣状のネットワーク構造、「宇宙網」(Cosmic Webとも呼ばれる)を成していることが予言されてきた。銀河を形作る源となるガスもこの宇宙網に沿って分布、集積すると考えられる。したがって、このガスネットワーク構造の観測的検証、そしてその中で進む銀河形成の理解は銀河形成史の解明に向けて根源的な重要性を持つ。本研究の目的は赤方偏移3の宇宙に存在する原始銀河団を中心に、初期宇宙において宇宙網の検出と物理的性質の解明を進めるとともに宇宙網で多様な銀河がどのように形成・進化するのかを明らかにすることである。
本研究は米国カリフォルニア工科大学に渡航し当大学を拠点として推進する。事業期間は2023年7月から2024年7月の合計で約1年間を予定し、受け入れ元のChales Chuck Stidel教授との連携によって研究を進める。具体的には以下の2点、1. ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測の推進、および2. ケック望遠鏡による観測研究の推進を二本柱として進める。2023年7月から2024年3月の渡航前半の期間において、1.について(a) 筆頭提案者として取得したデータ(赤方偏移3.1の原始銀河団に所属する銀河が対象)に基づく論文執筆を進めているほか、(b) サイクル3の観測提案公募において筆頭提案者として1件の観測提案採択を達成した。2.について、所持するデータの解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国主導で観測が開始されたジェームズウェッブ宇宙望遠鏡(以下JWSTと表記)は口径6.5mを誇る赤外線望遠鏡である。宇宙空間に置くことによって、地球大気の影響を受けず、その大口径と相まって、最先端の観測装置となっている。これまでにその革新的な性能を存分に発揮し、銀河形成研究に新時代をもたらしている。申請者はサイクル2の公募で筆頭提案者として1件の採択を得ており、その観測が2023年10月に実行された。赤方偏移3.1の爆発的星形成銀河について非常に興味深い結果が得られており、現在論文執筆を進めているところである。さらに、同年10月下旬締め切りであったサイクル3の公募において、受入のSteidel教授との密接な議論のもと、申請者が筆頭提案者として提案したものが1件採択を受けたことが2024年3月に明らかになった。日本人が筆頭提案者として採択された件数は各サイクルにおいて5件程度となっており、この連続での採択は特筆に値する成果である。
カリフォルニア工科大学を主要メンバーとするカリフォルニア大学連合はハワイ・マウナケア山頂にある世界最大(口径10m)の光学望遠鏡であるケック望遠鏡の運営母体である。Steidel教授はケック望遠鏡の各種装置の制作から関わり、その特性にも熟知している。渡航後、可視面分光装置KCWIによって取得された観測データの解析、新規の観測提案の議論を進めてきている。
以上を踏まえ、おおむね順調に推移しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更は予定しておらず、引き続きジェームズウェッブ宇宙望遠鏡およびケック望遠鏡を用いた観測、解析の推進と論文出版を進める。
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