研究課題/領域番号 |
22KK0280
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
青木 弘太郎 東邦大学, 医学部, 助教 (50821914)
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研究期間 (年度) |
2023 – 2025
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 薬剤耐性菌 / アウトブレイク解析 / 全ゲノム解析 / ナノポア型シークエンサー / Flongle / MinION / STEC / 院内感染対策 |
研究開始時の研究の概要 |
薬剤耐性菌の院内伝播を食い止めるには伝播経路の遮断が不可欠である。しかしながら、現行の院内検査体制ではその伝播経路を可視化することはできず、根拠の乏しい院内感染対策にとどまっている。本研究では、薬剤耐性菌が検出される度に逐次的に全ゲノム解析を行うことで菌株間の遺伝的関連性を迅速に明らかにすることができる解析プラットフォームを構築する。逐次全ゲノム解析には初期費用が低く、運転規模が小さく、かつリアルタイムにデータを出力するナノポア型シークエンサーを活用する。タイムリーな院内伝播のフィードバックを可能にする本プラットフォームは、根拠のある適切な院内感染対策への活用が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、菌株を逐次的かつ高速に全ゲノムシークエンシング (WGS) し、そうして得られたデータについて独自に開発する情報解析パイプラインによって、薬剤耐性メカニズムおよび病原遺伝子網羅的検索だけでなく、コアゲノムにおけるsingle-nucleotide polymorphism (SNP) に基づく菌株間の遺伝的距離を解析するプラットフォームを開発することである。 本プラットフォームの開発にはモデルとしてmethicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA)およびShiga toxin-producing Escherichia coliを用いた。高速WGSにはハイスループットシークエンサー (HTS) のMinION R10.4.1フローセル (オックスフォード ナノポア・テクノロジーズ: ONT) とRapid barcoding kit SQK-RBK114 (ONT) を用いた。性能の検証にはMiSeqなどのイルミナ社のHTSイスループットシークエンサー (MTS) から得られたデータを用いた。独自の解析パイプラインは東邦大学医学部微生物・感染症学講座に設置した大容量塩基配列サーバ内に、オープンソースソフトウェアを任意に組合せる事によって構築した。 2023年度までに実施したMRSA 29株を供試した検証結果では、イルミナMTSに対して、本プラットフォームによる解析結果は全株でStapylococcal cassette chromosome mec typing、multilocus sequence typing、コアゲノムSNPに基づく遺伝的距離解析結果において、極めて良好に結果が一致した。2024年度には、国際共同研究先においてSTEC用いた本プラットフォームの開発と検証を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、ONTのHTS によるMRSAの高速WGS解析の実施とプロトコールの確立、大容量塩基配列解析サーバの設置、および情報解析パイプライン作成を行った。モデル菌株には、MRSAは東邦大学医療センター大森病院で分離され、感染管理目的で保管およびイルミナHTSによって既にWGSがされた菌株を用いた。MRSAのDNA抽出にはビーズによる物理的破砕とmagLEAD SV PS (プレシジョン・システム・サイエンス) プロトコールの組合せを用い、ONTのHTSで良好なスループットを得た。 大容量塩基配列解析サーバとして、ハードウェアにCPU: AMD Ryzen Thread ripper PRO 5975WX 32-Cores、メモリ:256GB、GPU: NVIDIA GeForce RTX4090、ストレージ:SSD 4TBx2を、OSにWindows 11 Proの上でWindows Subsystem for Linux (Ubuntu 20.04) を搭載したマシンを設置した。本サーバ上で稼働するオープンソースの解析ツールを組合せることで目的の解析を行う解析パイプラインを開発した。なお、解析パイプラインは継続的にアップデートしている。 イルミナHTSのデータの解析結果に対して、本プラットフォームで得たデータ解析結果は良好に一致し、さらに1株ずつにONTのWGSデータをインプットして高速に菌株間の遺伝的距離解析を行うというコンセプトが実現可能であることが確認された。 研究代表者は2024年1月22日より英国へ渡航し、UK Health Security Agencyに保存されたSTECを用いて、本プラットフォームの開発および検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までに実施したMRSAを用いた本プラットフォームの開発とコンセプトの確認の成果について、英文での論文化を行う。本プラットフォームを幅広い菌株へ適用するため、重要な腸管病原菌かつ薬剤耐性が問題となる細菌の代表としてSTECを用いた開発と検証を進める。そのために、2024年度はUK Health Security Agencyに保存されているSTEC約250株のONT HTSによるWGSデータを取得する。さらに、情報解析でSTECへ対応できるように解析パイプラインの開発を進める。開発したパイプラインとその検証結果について、英文での論文化を行う。 本解析パイプラインは、現状ではコマンドライン上の操作が必要であるが、今後はグラフィカルユーザーインターフェースを付与し、webブラウザを介して外部端末からも解析を実施可能にする。
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