研究課題/領域番号 |
23350049
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
高分子化学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片岡 一則 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00130245)
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研究分担者 |
長田 健介 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10396947)
宮田 完二郎 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50436523)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
2013年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2012年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2011年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 生体関連高分子 / ナノバイオ材料 / 高分子構造・物性 / ドラッグデリバリー / 自己組織化 |
研究概要 |
H24年度は、単一のsiRNAを含む会合体(ユニットPICと名付ける)の安定性評価を中心とした一連の機能評価を行った。具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)とポリリシンP(Lys)からなるブロック共重合体PEG-P(Lys)を、1本鎖PEG:分子量10,000~50,000、もしくは2本鎖PEG(PEGasus):分子量20,000~50,000、およびP(Lys):重合度20、40と組み合わせを変えて、PEG含有量の異なる種々のユニットPICを調製し、これらに対し、ポリアニオンであるヘパリンを加え、対ポリアニオンとの置き換わりに対する安定性を評価した(ヘパリン添加後のユニットPICからのsiRNA放出量を定量した)。その結果、PEG含有量の増大とともに、ユニットPICの安定性が顕著に増大する(siRNAが放出されにくくなる)ことが明らかになった。次に、この置き換わりに対する安定性がユニットPICの血中滞留性と相関するのかどうかを調べたところ、PEG分子量(もしくは含有量)の増大に伴い、ユニットPICの血中滞留性も劇的に改善されることが明らかになった。また、同一分子量のPEGとPEGasusを比較すると、PEGasusから成るユニットPICの方が有意に高い血中滞留性を有することも明らかになった。この理由に関しては次年度の検討課題としてあげる。一方、最も優れた血中滞留性を示したユニットPICに対し、がん治療実験の初期検討をヒト腎臓がんの皮下移植モデルマウスを構築して行ったところ、有意な抗腫瘍効果を得ることに成功した。次年度は、腫瘍組織内でのmRNA量の定量など、より詳細な生物実験を計画し、siRNAキャリアとしての可能性を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
siRNAと親水性-正電荷性ブロック共重合体PEG-P(Lys)からなるポリイオンコンプレックス(PIC)構造形成において、単一siRNAからなり、その周囲を覆うPEG本数を正確に制御したユニットPIC構造形成をP(Lys)重合度によって制御する条件を確立するともに、PEG分子量ならびにその本数を的確に選択することによって、ユニットPICの構造安定性を強化出来ることを確認した。この結果として、ユニットPICの血中滞留性を飛躍的に向上させることに成功した。さらに、ヒト腎臓がんの皮下移植モデルマウスを構築し、血管内皮増殖因子(VEGF)に対するsiRNA(もしくは非治療用コントロールsiRNA)を搭載したユニットPICを用い、全身投与で有意な抗腫瘍効果を得るに至っている。このようにユニットPICからなるsiRNA会合体においては当初計画以上に進展している。一方、多数のsiRNAからなる超分子会合体の構造形成については、紐状の形態や、ベシクル状の形態を観察するものの、確固たる形成条件の確立には至っておらず、検討の余地を残している。このような状況を鑑み、全体としておおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の検討を通じて、単分子siRNA封入ユニットPICの血中滞留性は、構成成分であるPEG-P(Lys)の重合度に大きく依存することが明らかになった。そこでH25年度は、優れた血中滞留性を実現したユニットPICに着目して、その生物学的機能についての研究を推進する。具体的には、血中滞留性及び臓器分布(腫瘍集積性)の詳細な評価、種々の治療用siRNAを用いたがん治療実験、さらには免疫原性や肝・腎障害の指標を定量することで安全性試験も行う。血中滞留性に関しては、既に蛍光を介した長期血中滞留性が確認されていることから、さらに、ユニットPIC中でsiRNAがインタクトな状態で完全に保持されているのかどうかを確認する。また、血中滞留性の長期化に伴い、ユニットPICが腫瘍組織へ効率良く集積しているかどうかを確認するために、蛍光標識ユニットPICと皮下腫瘍モデルを用いて腫瘍集積性を定量すると共に、肝臓や腎臓などの正常組織への移行量も比較定量する。皮下腫瘍モデルに対する治療実験では、既に臨床試験で検討されている血管内皮増殖因子(VEGF)やPolo-like kinase1に対する配列を治療用siRNAの候補として使用することを計画している。優れた治療効果が得られた場合、同条件下における腫瘍組織での標的mRNA発現量をPCR等で定量し、得られた治療効果がRNA干渉に基づくものであるかどうかを検証する。以上の評価を通じて、優れたsiRNA送達を実現するユニットPIC型キャリアの開発に向けた基盤技術を確立したいと考えている。
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