研究課題/領域番号 |
23510148
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
マイクロ・ナノデバイス
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 雅史 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20273261)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2013
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研究課題ステータス |
中途終了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2013年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2012年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2011年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ナノワイヤ / GaAs / VLS / MBE / 液滴 / 無触媒 / 双晶 / InGaAs |
研究概要 |
我々はこれまで, MBE装置を用いたVLS法により,無触媒でSi基板上へのGaAsナノワイヤの作製に成功し,三元混晶であるInGaAsナノワイヤの成長機構を明らかにすることができた。 しかし,GaAsの時よりも,三元混晶にすることで結晶内に双晶が発生し易くなり,光学的・電気的特性に影響を及ぼす可能性があると懸念されるため,今年度は双晶の発生に関して検討を行った。また,不純物ドーピングについても検討を行った。 Si基板上への無触媒GaAsナノワイヤの成長は,As圧力を変化させて行った。As圧力が低いときには,TEM観察等によりウルツ鉱構造が支配的であったが,As圧力が高くなるにつれて,閃亜鉛鉱構造が支配的になることがわかった。 このことを理論的に検討するために,ウルツ鉱構造の1層が双晶であると仮定し,Ga液滴におけるAs吸着原子の過飽和度と,As吸着原子が気相・触媒・結晶界面まで拡散し核を形成した場合の系の自由エネルギー変化を計算し,これらを基に,双晶の発生確率を見積もった。計算した双晶発生確率から,As量が増加するに従って,双晶の発生確率が減少していることがわかった。この結果は,実験結果と同様の傾向を示した。 不純物ドーピングの検討では,Siをドープして長さ約35μmのGaAsナノワイヤを成長させた。このナノワイヤを基板から分離させ,Si基板上に分散させ,電子線露光技術を用いて電極を取り付けた。また,熱電性能によるドーピング評価のためにナノワイヤ周辺に熱源も設けた。 熱電性能を示す1つのパラメータであるゼーベック係数から,熱電性力率と無次元性能指数を測定し,それらからドープ量を見積もったところ,5.9×10^18 cm^-3 となった。しかし,同様にドープしたバルクGaAsよりもドープ量が1桁程低くなっており,ナノワイヤ中に不純物が取り込まれ難くなっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の実施計画書では,三元混晶を様々な成長条件で成長し,その成長機構を解明することと,それに併せて双晶などの欠陥の発生機構解明およびその抑制技術解明,そしてデバイス応用のための不純物ドーピングによる影響の検討を目的としていた。 本年度は,双晶発生機構解明あるいはドーピングの検討としては少し複雑である三元混晶ではなく,無触媒で成長したGaAsナノワイヤに対して,実施計画通り双晶などの欠陥の発生機構解明およびその抑制技術解明,ならびに不純物ドーピングについて検討を行った。 その結果,研究実績の概要でも述べているように,ナノワイヤ成長時のAsの圧力を制御することで,双晶の発生が制御出来ることが分かった。また,この実験結果は理論的に計算からも同様の傾向が示唆され,無触媒ナノワイヤ成長における双晶発生機構の解明ならびに双晶抑制技術解明をある程度達成できたものと考える。 不純物ドーピングにおいても,ある程度ドーピングが可能であり,デバイス応用に向けての知見が得られたものと考えている。 しかしながら,AlGaAsやInGaAsナノワイヤといった三元混晶に関しては,十分な知見が得られておらず,今後の課題となる。 以上のように,若干課題が残ったものの,当初の計画通りに本年度の研究は遂行された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度にGaAsナノワイヤの双晶発生機構や双晶抑制技術がえられたので,これらの情報を基に,LEDなどの発光素子や単一光子源デバイス,あるいは単一電子トランジスタのようなデバイス応用を見据えたGaAsナノワイヤあるいは三元混晶ナノワイヤへの不純物ドーピングならびにダブルへテロ構造の作製を行う。 そこで,これまでの成長条件や双晶抑制技術を参考にしてナノワイヤ中にダブルへテロ構造を作製し,その発光特性評価や電気的特性評価を行う。測定には,PL,CL,EDX,SNOM,SEM,STEM等を用いて行う。 また,電気的特性評価には,電子線露光装置およびプローバ等を用いて低温にて測定を行い,以上の結果をまとめて,光デバイスや電子デバイスとしての高いポテンシャルを有することを示し,成果発表を行う。 これと平行して,以下の検討も行う。デバイス応用には長尺かつ極細のナノワイヤが必要であるが,長尺にしようとすると横方向の成長も促進され,極細のナノワイヤを得ることができない。そこで,原料交互供給法による長尺かつ極細ナノワイヤ実現の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においても,平成24年度と同様にナノワイヤ成長において必要となる半導体材料,基板,液体窒素,ガス,薬品等に物品費を当てる予定である。残りは,昨年度の成果をもとに国際会議と国内会議への成果発表,ならびに印刷物等があればその印刷費に研究費を使用する予定である。
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