研究課題/領域番号 |
23520287
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
英米・英語圏文学
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
三浦 玲一 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (70262920)
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研究分担者 |
越智 博美 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (90251727)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2013
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研究課題ステータス |
中途終了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2013年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2012年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2011年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | リベラリズム / 新自由主義 / 南部文学 / アメリカ合衆国 / グローバル化 / アメリカ文学 / ネオリベラリズム / アメリカ南部文学 / アイデンティティ |
研究概要 |
平成24年度は、三浦と越智の共同の成果公開の機会が多くあった。本プロジェクトの目標通り、リベラリズムのイデオロギーと現代のアメリカ文学研究の深い関係を分析しようとする試みは、三浦、越智が執筆し、三浦が編者をつとめた『文学研究のマニフェスト』(研究社)として刊行された。越智は、第二次世界大戦期の南部文学と新批評がリベラリズムをどのように制度化したのか、三浦は、J・D・サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』とコーマク・マッカッシーの『ザ・ロード』がどのようにリベラリズムの文学として成立しているかを論じた。 また、平成23年急逝されたお茶の水女子大学の竹村和子教授を偲ぶ、アメリカ文学会東京支部におけるシンポジウム(6月於慶応大学三田キャンパス)に、三浦、越智の双方が招かれ、発表を行った。この成果は、アメリカ文学会東京支部の紀要『アメリカ文学』の6月発行の次号において、公開される予定である。越智は、竹村さんの仕事を貫くリベラリズムへの複雑な想いを、三浦は、竹村さんの後期の仕事における生政治批判がどのようなリベラリズム批判であるかを論じた。 さらに、一橋大学において隔年で慣行されている人文学とジェンダーの関係についての論集が2013年3月に慣行されたが、その編者を三浦がつとめ、そこに越智も執筆した。『ジェンダーと「自由」』(彩流社)と題されたこの論集も、本プロジェクトの延長上で、リベラリズムと人文学的な想像力との関係を、批判的に考察しようとするものである。越智は、冷戦期の男性性が当時のどのようなリベラリズムの言説によって正当化されたかを、三浦は、新自由主義期の男らしさ、女らしさがどのような新しい定義を与えられているかを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
『文学研究のマニフェスト』、『ジェンダーと「自由」』と、二つの書籍が刊行された。一橋大学言語社会研究科紀要『言語社会』に、三浦の執筆した特集が掲載される。また、松柏社から刊行された『アメリカ文学のアリーナ』において、三浦が新自由主義の文化について論じた論文が掲載された。 以上の業績により、この研究の当初目標の一つであった、冷戦リジームとしてのリベラリズムの文化・文学と、ポスト冷戦レジームとしての新自由主義の文学・文化の比較対照の基本的な枠組みは、整理されたと考える。それは、冷戦期に作られた「アメリカン・ロマンス」の特徴が、①リアリズムの排斥としてのモダニズムによる自律的な芸術概念、②イノセンスに備給する心理学的な個人主義とその男性中心主義、③政治なき美学としての芸術であるとするならば、「ポストモダン・ロマンス」とでも呼ぶべき、ネオリベラリズム期のその対応物は、①イノセントな主体への傷としてのトラウマと記憶を通じた歴史の排斥、②身体化された規範としてのアイデンティティから思考される政治性(生政治的な政治性)と多様性へのコミットメント、そして、③自己責任でリスク管理をし、自身(の身体)に投資する自己投資家による消費者モデルの個人主義をその特徴とするという対照である。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定を踏まえつつ、三浦は、合衆国ポストモダン小説最大の作家Thomas Pynchonについて、これまでの研究を当てはめたかたちの考察をまとめる予定である。越智は、同様に、南部文学とリベラリズム言説の結節点としての「貧困」が、どのような文化的表象の文脈におかれてきたのかを分析する予定である。 これら研究成果の一部を、ある種のキーワード集として刊行することを、現在検討している。また、当該分野の若手研究者を、できれば合衆国より招待し、国際シンポジウムを開催したいと考えている。また、これらプロジェクトと関連したかたちで、ジュディス・バトラー、コーネル・ウェスト、フレドリック・ジェイムソンらの著作を翻訳・出版したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費を効率的に使用した結果、端数が生じたが、平成25年度の予算と合わせて執行する予定である。 研究計画書に従い、日本アメリカ文学会への出席、モダン・ランゲージ・アソシエーション年次大会への出席を、国内と国外の旅費として計上する。また、合衆国から当該分野の若手研究者を招聘し、国際シンポジウムを開催することを計画している。 以上の計画との関係のなかで、ポストモダニズム関係資料、新南部研究関係資料、ネオリベラリズム研究関係資料を、おのおの購入する。
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