研究課題
基盤研究(C)
近年、国際的租税戦略による課税ベースの浸食の問題が新聞等でも大きく報じられている。本研究では、我が国の課税ベースの浸食に繋がる租税戦略への対抗策のあり方を模索するという観点から、最近、動きの激しい主な諸外国(米国、英国及びその他の主な欧州諸国、インド、中国等)の対抗策(特に、移転価格税制、包括的否認規定、準包括的否認規定及び出国税等)の実態、最近の再構築の方向性及びその有用性・限界などを分析した。上記の分析の結果、上記の諸国では、国際的租税戦略が、益々、活発化する中、近年、対抗策を強化する動きが顕著に認められること、採用されている対抗策には共通点も少なくないことを確認することができた。特に、包括的否認規定や出国税は、我が国では採用されていない対抗策であり、その有用性と限界については、本研究によって、かなり明確化することができたのではないかと考える。確かに、対抗策の制度設計は、各国において、多少なりとも異なっており、また、各国と我が国の税務行政を取り巻く諸環境の差異も小さいものではないことから、いずれの国のどの対抗策の制度設計が、我が国にとって、最も大きな示唆を包含するものであるのかなどを巡っては、少なからず議論の余地がある。上記のような困難性・限界はあるものの、本研究は、主な諸外国の対抗策について、他に類をみないほど包括的かつ深度ある分析を行ったものである。各国の主な対抗策の制度設計や有用性・限界等を踏まえて我が国の対抗策の再構築の選択肢の考察・比較考量を行った本研究は、活発化する租税戦略に対し、我が国の対抗策については、どのように再構築すべきであるかという問題を検討するに当たり、有用な視点を提供するものであると考える。
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租税研究
巻: 第760号 ページ: 187-204
国際税務
巻: 第33巻5号 ページ: 100-105
40019640305